DeNA編集部

2018.02.09

"深さ"の価値を追え。SHOWROOMとラジオの意外な共通点

"夢を叶えたい人"と"夢を応援したい人"をつなぐライブ動画ストリーミングプラットフォーム「SHOWROOM(ショールーム)」。AKB48などアイドルが始めたことで一気にブレイクし、今では約20万人の演者が日々配信を行いながら視聴者とのコミュニケーションを楽しんでいます。

その勢いとともに2017年4月に始まったのが、SHOWROOM代表の前田裕二(まえだゆうじ)をパーソナリティとしたラジオ「SHOWROOM主義」(TOKYO FM 毎週土曜日 25:30-26:00放送)。著名なビジネスパーソン、アーティスト、タレントをゲストとして迎え、夢を追いかける人を前田とリスナーの皆さんと一緒に見守り応援する「夢追い人応援番組」 です。今回、前田とともに「SHOWROOM主義」を企画したTOKYO FM 制作部のプロデューサー 松任谷玉子(まつとうやたまこ)氏に話しを聞くと、SHOWROOMとラジオの意外な共通点と相乗効果が見えてきました。

インターネットサービスとラジオ共通の「利用者の視点」

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▲左:SHOWROOM代表 前田裕二、右:TOKYO FM プロデューサー 松任谷玉子氏

――配信開始から10ヶ月が経ちますが、そもそも「SHOWROOM主義」の立ち上げのきっかけは?

松任谷:秋元康さんに前田さんを紹介いただいたのがきっかけで、私からオファーを出しました。今年で開局48年目を迎えるTOKYO FMでは、これまで「タイムテーブルの、この番組を売る」というのが王道だったのですが、前田さんとお会いして放送外収入や未来の放送局のあり方を感じて、是非コラボレーションしてみたいと提案しました。あとは幅広い知識もあり、企業家などをお迎えしても全て受け止められる前田さんのパーソナリティですよね。

前田:先日、TOKYO FMの別のラジオ番組に呼んでいただいたんですが、自分がパーソナリティとして振る舞う時と、ゲストとして呼ばれて喋る時とは全然違うなって気付きました。自分がパーソナリティをする時は「どういう要素をこの人から引き出したらいいか、リスナーのためになるか」の仮説がいくつかあって、そのシナリオに沿って話すんです。

松任谷:前田さんはリスナーの立場になって考えているなって感じます。今リスナーがどう感じているのかなというのを同時に考えながら、相手に対していろいろと話を引き出せるのは供え持った感覚だと思います。ある程度経験がないと、大物ゲストを呼んだ時に1対1のことで精一杯になってしまうこともあるのですが、前田さんは常にリスナーが考えていることを言葉にして伝えたり、言葉の端々に表れてきます。

前田:ありがとうございます......!でも本当に、そればっかり考えていますね。それって非常にインターネット的というか、インターネットの思考のクセなんですよね。例えば、こういう機能を乗せたら利用者は喜んでくれるだろうと考えるわけですが、それが正しかったか答え合わせをするために、細かくデータや利用者の行動をみて、さらに機能を改善したりします。決して一方通行ではなくて、必ず利用者動向を見ながら改善を繰り返し、よいものにしていく。つまり、インターネットサービスの開発は特質として双方向性が前提になっており、利用者と共に作っていくものなのですが、ラジオも一緒だなと思っています。

松任谷:インターネットで鍛えてきたものが、ラジオの世界でも反映されていますよね。

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前田:"ながら聴き"している人もいると思いますが、リスナーが「SHOWROOM主義」に30分間使うことに対して、しっかりと付加価値を出せるかどうか。おそらく聴いてくれているリスナー層はこうだから、こんな話が聴きたいだろうと考えています。

例えば、ゴールデンボンバーのボーカル鬼龍院翔(きりゅういんしょう)君を迎えた時も、彼のファンの満足度はもちろんですが、それ以上に、ファン「以外」の視聴者に対していかに価値が出せるかを考えました。具体的には、「女々しくて」はなぜヒットしたのか、その要素を抽出する。そこで得た学びを、ビジネスマンなら明日のプレゼンに活かしてみようと思うかもしれない。起業家なら事業アイデア創出や、マーケティングのヒントとして活用するかもしれない。なので、毎回呼ぶゲストは何らかの分野で成果を出している人や、実際に夢を叶えている人にしています。ヒットの法則を抽象化して、わかりやすい言語に変換して伝える事、これが視聴者への価値提供という意味で凄く意識している観点です。

そういえば、「SHOWROOM主義」のコンセプトについて、たしか秋元さんがヒントを出してくれたんですよね。「若手のビジネスマンが毎週土曜日に必ず聴いて、ビジネスのヒントにできるような番組にしよう」と。

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▲ゴールデンボンバー ボーカル 鬼龍院翔氏

松任谷:まさに「リスナーにとって役に立つラジオ」になっています。前田さんはすごく甘いボイスなんですが、次の日に役に立つことを言っている。

――ちなみにゲストはどのように選んでいるんですか?

前田:これまでの放送では、自分の友達、知人など、既に関係性のある方をお招きするケースが多かったですね。その方が僕自身もやりやすいし、話を引き出す観点からも深い話にもっていきやすいです。初めてお会いするケースももちろんあるのですが、あまり深く話せなかったなという反省があり......。理想で言うと、初めて会う方なら事前にばーっと会話しておかないと表層的な形式的なラジオになってしまいがちだなと。

松任谷:でも、(初めてお会いされた)占い師のゲッターズ飯田さんの時面白かったですよ!占いの話からビジネスの話に展開していくところは、番組オリジナルの展開の仕方で、他の番組ではできない。

――「SHOWROOM主義」をきっかけに、ビジネスの幅も広がりそうですね。

前田:そう、意外と経営者の方も聴いてくれていて、放送の初回からずっと聴いてくれているという方にもお会いしました。人とのつながりにもいい影響があります。先週、あるエンタメ系の大企業の役員の方々とお会いした際も、「SHOWROOM主義聞いています!」と言われて、業界視聴率の高さをよく感じます。

ラジオが夢実現の舞台に。声の想像力が一歩進むきっかけを生む

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松任谷:SHOWROOMとラジオの掛け合わせが生むシナジーについてですが、ラジオはタイムテーブルが決まっていて24時間×7日しかないけれど、SHOWROOMは配信枠をいくらでも増やせる。そんな中でコラボする意味もあるかもしれないけれど、常に才能ある方々がSHOWROOMで活躍していて、ラジオにも時々登場してくれるようになれば良いかなって思います。

前田:僕の意見としては、ラジオは、出演できる枠が限定されている事もあり、まだ一定の偶像性を保てていると思っています。ラジオに出ることを夢見ている子もSHOWROOMにはたくさんいて、TOKYO FMとコラボしたかったのは、他でもなくTOKYO FMに出演したいと思っている演者が多かったからなんです。

松任谷:タイムテーブル的には、桑田佳祐さんや山下達郎さんもいらっしゃるので、ラジオ出演のあこがれを持つ方も多いと思います。

前田:はい。僕はラジオとSHOWROOMの親和性は極めて高いと思っています。ラジオコンテンツは、リスナーの参加が前提となっている上に、1対1を感じさせる親しみやすさがある。この特徴は、SHOWROOMも同様です。ゆえに、SHOWROOMでユーザーとのインタラクションを鍛えた演者は、ラジオでも活躍できると思います。こうした同質性を持ちつつも、ラジオに対する憧れは未だ消えていないので、ラジオ出演にかける演者のモチベーションも高い。SHOWROOMにおいてラジオ出演オーディションを行っているのですが、やはり盛り上がります。

――「SHOWROOM主義」のリスナーならでは特徴などはありますか?

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前田:本当に熱狂的な方が多くて、ラジオを聴いて会社を辞めて起業した人までいるんですよ。タクシーの運転手の方に、「SHOWROOM主義聞いています、声でわかりました」と言って頂いて、話し込んだ事もあります。街なかで声を掛けられて、「ラジオ聴いてます!ずっと聞いていたら本当に刺激を受けて、会社をやめて起業する事を決めました」という趣旨の事を言われた事もありました。なんだか、ドラマみたいな話だなって。メディアが人のキャリアに影響を与えるって、感動しませんか。ラジオには不思議な魔力があるんだなと、最近凄く思います。

松任谷:"声の力"はあると思いますね。目から入る情報が全てになりがちな中で、声だけだと人の想像力や妄想力がよく働きます。例えば「ちょっと宇宙行ってくる」と言ったら行けちゃうのがラジオなんです。自分の人生まで影響されるというのは、前田さんの声の力も相まって出てくるんじゃないかと思うんです。

前田:あえて制約を課す、というのは大事です。ラジオにおいては、映像が紐付いていない。音声だけ、という制約があることによって、人間の持っている本来の脳のポテンシャルを引き出しているという感覚はありますね。

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▲「【ピアノ弾き】まなまる♪くろまる〇むらさきまる〇」のルーム

松任谷:だからSHOWROOMのラジオMC権獲得イベントで出てきたアシスタントの「まなまる」ちゃんが、もちろん画面で見るとかわいいんだけど、声だけになったときの魅力ってすごくて。より想像力が掻き立てられて、「これはどんな子なんだろう」って画像調べたりして、またSHOWROOMに戻って......という循環もできるんじゃないかな。

あとはパーソナリティとともにリスナーが成長していく、またはリスナーがパーソナリティーを育てているというか......、リスナー自身も番組に参加しているような感覚になるのはありますね。番組が始まったときはパーソナリティもつたなかったのがだんだん良くなっていくとか、「上手くなったね」なんてリスナーから言われたりとか。

前田:極めてSHOWROOM的ですね。

松任谷:ラジオは1対1の感覚で聴くメディアですし、特徴的なのは女性パーソナリティが化粧をしないことなんです。化粧をしないで普通に出社してラジオで喋って帰る人もいるくらいで、フリーな気持ちで素を出せます。女性は化粧をすると外向きの顔になりますが、ラジオはメディアへの向き合い方が違いますね。その人の性格が声や間のとり方に出てきます。

――SHOWROOMと関わることで、ラジオというメディアにも変化がありましたか?

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松任谷:まだ実験段階ではありますが、アシスタントをSHOWROOMのイベントで募集し勝ち上がった演者が番組に出るというシステムは、将来的にビジネスになっていくかもしれない。「SHOWROOM主義」だけでなく、他の番組など幅広く連動していけそうな点もSHOWROOMならではですよね。

リスナーの"深さ"が、新しいビジネスに繋がる

――「SHOWROOM主義」の今後の展開は?

前田:「SHOWROOM主義」はある種、ラジオ × インターネットの実験場だと思っています。TOKYO FMの主力番組でいきなり新しい挑戦をする事は難しいかもしれないけれど、「SHOWROOM主義」であれば、こちらのコントロールできる範囲内でどんどんチャレンジできる。そこで毎回PDCAを回していくことで、新しいマネタイズの方法を見つけられることもあるので、それを他の番組にも広げていけたら面白いですよね。

新しいビジネスモデルの話をし出したら止まらないんだけど......。例えばテレビとラジオでは視聴者・リスナーの"深さ"が違うと思っているんです。例えばテレビでは100万人、ラジオでは10万人に届いたとき、人数は10分の1だけどラジオの10万人の方が1人に刺さっている"深さ"が違う。その"深さ"をちゃんとマネタイズできているかという課題があると思っていて。深く刺さった人がやることって、ラジオ局に手紙やメールを送るとかTwitterに熱いメッセージを投稿するとかだと思うんですけど、それがラジオ局にビジネスとして100%帰ってきているかと言うと必ずしもそうではない。

例えばですが、深いリスナー向けに「SHOWROOM主義」で「サロン」を開きます。月額1万円で番組をもっと盛り上げるためにどうするか一緒に考えて、リスナーと一緒に番組をつくる。規模が大きくなって1万人のリスナーが入ってくれれば月1億の規模になるし、年間だと10億。10億のスポンサーをつけても既存ビジネスの延長でしかないけど、1つの番組で年商10億の直接収益を新規創出できれば、それは放送外収益として新しい成長の芽になるかもしれない。

それは、ラジオとSHOWROOMに共通する、利用者の深いエンゲージメント(愛着、サービスと利用者の関係性)という特徴を上手く活かしたビジネスモデルだと思うので、この観点でどんどんビジネスを広げていくべきだと思う。

松任谷:お金を払ってでも聞きたい話がここにあるということなので、それが浸透してくると前田さんが言ったようなコミュニティができてくると思います。

前田:濃いコミュニティがせっかくできているんだから、それをビジネスに転換していく。ビジネスに転換していくことって全然悪いことじゃなくて、なぜなら1万円を払うということはそれだけの対価や幸せを感じているということなので、幸せをラジオ局が提示できているということだと思う。それをもっと増やしていきたいんですよね。

「SHOWROOM主義」にも出ていただいたキングコングの西野亮廣さんとよく話している事があって、演者とオーディエンスという関係を再定義したいんです。つまり、"ステージをなくしていきたい"と。これを「垂直関係から水平関係へ」とよく呼んでいるのですが、小高いステージに演者がいて、その下にオーディエンスがいて......という垂直関係は、上下関係や主従関係を生む。そうじゃなくて、あくまで演者とオーディエンスがフラットな場所に立って、もうどちらが演者かわからなくなるくらいにオーディエンスにコンテンツ作りに参加してもらって、境界線を曖昧にする。そうして、全員がクリエイターで、全員が聴衆という時代がくる。そうすると、従来ただオーディエンスだった人が、もはや単なる聴衆ではなくなって、半分運営にまわることになる。運営に回ったお客さんは、そうそう離れません。ここまで前のめりになった聴衆のエンゲージメントをうまくビジネスに繋げていくことができたら、勝ちです。何人に届いたか、という「幅」ではなくて、どれくらい心に刺さったかという「深さ」が価値になる。エンゲージメントや絆、共感、そういったある種、昭和的な要素が、商業的にも揺るぎない競争性になる時代は、そこまできています。

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SHOWROOM:https://www.showroom-live.com/
SHOWROOM主義:http://www.tfm.co.jp/show/

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