DeNA編集部

2016.04.18

だから私は、「耳の痛い話」に積極的に耳を傾ける:南場連載

南場智子のDNA 私の仕事哲学
第4回 だから私は、「耳の痛い話」に積極的に耳を傾ける

初出:『日経ビジネスアソシエ』 2015年11月号

 何か新しいことを始めると必ず風当たりが強くなります。そんなことには慣れているDeNAも、遺伝子検査サービスMYCODE(マイコード)に関しては驚くほどの突風にさらされました。

 私たちは医療行為ではなく、消費者向けサービスとしてMYCODEを提供しています。これについて、一部に、遺伝子検査は病院や医師を通して行うべきという考え方があります。しかしMYCODEの意義は、健康なうちにリスクを考えて生活習慣を改めるキッカケにしてほしいというもので、病気をケアする医療とは一線を画したものです。

 この考えを支持し、応援してくださる方も多く、各界に賛成派、反対派が混在。時に議論はヒートアップします。霞が関でのミーティングで熱い激励を受けた帰り際に別の課の方から「潰してやる!」と怒鳴られた社員もいました。


 消費者向け遺伝子検査サービスをすべて否定する考えにはくみし得ませんが、厳しい指摘や懸念には、じっくり耳を傾け、サービスの指針や改善に取り入れて行くべきと考えます。あの人は味方、あの人は敵、と整理する社員に、そんなことはやめてユーザーとサービス改善に集中せよと指示しました。「ひと」ではなく「こと」に向かうべきなのです。

 実際、批判や指摘はサービス改善の糧として大いに有益です。

 まず、情報セキュリティーや検査の質に関して、民間だから心配という声がありますが、民間だからこその厚い資本でしっかり費用をかけ、極めて厳密な仕組みで取り組むこと。これは最優先です。

 また、消費者向け遺伝子検査サービスの中には科学的根拠が曖昧なものもあるという指摘もとても重要です。MYCODEは項目ごとに遺伝子のどの部分を読んでいるのかを明示し、根拠となる論文もすべて公開しています。他社にも公開を呼びかけていますが、「企業秘密」と言われてなかなか賛同してもらえません。それも理解できるのですが、業界が黎明期にある今は、根拠を公開して医学界や研究者の批判を受けられるようにし、そのうえで議論と改良をオープンに続けることが信頼を獲得するために必須ではないでしょうか。

 もう1つ、アフターフォローが大切という指摘を重視し、生活改善のメニューを用意するほか、全国に160人しかいない認定遺伝カウンセラーを2人採用しました。医療機関ではない我々に参加してくれる人を探すのは、本当に大変でした。

 こうしてカウンセリング体制も整えサービスを開始。問い合わせの大半は検査内容に関する事前の質問で、結果に関する深刻な悩みはほとんどないことに安堵していたところ、突然大病院から大目玉を頂戴しました。MYCODEで「もやもや病」のリスクが高いという結果が出たユーザーが当社窓口で十分な説明を得られず、その病院に駆け込んだのです。先生の主張は「サービスを提供するなら、ちゃんとフォローしろ」です。

 その通り!と早急に問い合わせのフローを見直し、病気に関する問い合わせは本サービス向けに採用した医師が、対面含め対応する体制を作りました。またさらに幅広く対応できるよう、病院とのネットワークを構築中です。幸い私たちの考え方やMYCODEの品質を評価し、複数の医療機関が前向きに相談に乗ってくれています。

 その他、倫理審査委員会での侃々諤々の議論、ユーザーからの問い合わせ、医学界、霞が関からの指摘に呼応し、サービス内容を今も日々改善しています。


 新しいテクノロジーは新しいサービスを生み、そして時に新しい課題を生みます。技術進歩のメリットをユーザーが享受し続けられるよう、事業者はしっかり社会と向き合い、一つひとつ丁寧に課題を克服しなければなりません。新サービスを次々と展開するDeNAが最も肝に銘じていることです。

 さて、時に罵倒されながらも粛々と努力を続ける私たちにうれしい声が届きました。MYCODEで食道ガンの遺伝的リスクが高いと知って検査をしたら、初期のガンが見つかった。治療をして経過良好。家族全員にMYCODEを薦めている。子供には成人を待って受けさせるつもりだ、とのこと。涙もろい社員は泣いて喜んでいました。利用者調査でも、MYCODEの検査により生活習慣や意識が変わったユーザーが5割近くいるという結果が出ました。頑固に吸い続けたタバコをやめた人も多いようです。説教より遺伝子の声、ですね。

 どんなサービスもどんな事業も、頑張るエネルギーの源は、やっぱりいつもユーザーです。

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