DeNA編集部

2016.08.02

スマホは1日何時間?子どもたちが自ら抱いた問題意識

急速に普及するスマートフォン(スマホ)が生活習慣に影響を与えつつあります。さらに昨今『Pokémon GO』の登場により社会では様々な問題も発生しています。

DeNAでは2007年より、お客さまサポートを業務とするメンバーが中心となり、全国各地の子どもたちや先生、PTAなどの方々へネットリテラシー向上を目的に啓発活動を実施してきました。2015年度における活動の開催回数は577回、対象人数は65,679名でした。

これらの活動において、特に総務省や文科省で各種委員を担っている兵庫県立大学竹内和雄准教授(上の写真)とは、2013年より継続的に取り組みを実施しています。これまでの取り組みを振り返りつつ、竹内先生よりスマホ利用に関する問題意識について話を伺う機会をいただきました。聞き手はDeNAカスタマーサービス部部長の西雅彦(下の写真)。

産学、異なる立場からの思い

西雅彦・DeNAカスタマーサービス部部長(以下、西):竹内先生がネット利用の啓発活動に関心をもたれたきっかけはなんでしょうか。

竹内和雄・兵庫県立大学准教授(以下、竹内):私は中学校の教員を20年間務めた後、寝屋川市教育委員会指導主事になりました。その時にネット絡みの悲しい事件が起きてしまい、子どもとネットについて考えるようになりました。大学教員になってからも「ケータイが危険だから子どもには使わせない方が良い」という声も多かった。しかし、前向きに何かをしようという動きは周囲には見られなかったので、私自身がケータイの危険性とその対策を訴えるために年間100回以上講演をしていましたが、広く伝えるにはこれだけでは限界があると感じていました。

西:同じころ、DeNAでも啓発活動に力を入れていました。背景としては、「Mobage(モバゲー)」が立ち上がった当初、未成年者をトラブルに巻き込んでしまうことがあり、2008年以降体制の強化と啓発活動を積極的に実施してきました。サイトパトロールの強化でモバゲーがきっかけのトラブルは大幅に減少しましたが、さらに一歩進んだ活動をするためには社外の方の力を借りなければと思っていました。

2012年5月に関西の勉強会に呼ばれ、そこでお会いしたのが竹内先生。その後も学校での講座などで一緒になることが多くなり、竹内先生とネットの危険性について意見交換をしていく中で、「日本の子どもたちを守りたい」という強い気持ちの竹内先生とならば連携したいと考えていました。そこで勉強会後の2012年10月に、「関西での啓発講座を一緒にやらせてください!」とお願いしました。

竹内:実は西さんと出会う前、当時子どもたちが使っていたモバゲーに対して、「なんて危険なゲームなんだ」「子どもをダメにしている」と思っていました(笑)。ところがある時を境にDeNAが積極的にサイトの監視をやりだして考えが変わりました。いきなり監視体制を数百名に増やして、全ての画像投稿を目視確認までするなんて、「この会社は本気でやってる」「同じ方向を向いている」と感じるようになりました。

それから何度も西さんと会って話しているうちに、この人なら一緒に啓発活動ができると感じました。その時のことは鮮明に覚えています。西さんとは「なぜかいつも問題意識が同じ方向を向いている」。そんな感じで意気投合して、DeNAと一緒に共同講座を開いたのが最初の連携でした。

西:昔はそう思われていたのですね(笑)。

独自性のある共同講座

西:竹内先生との取り組みでは、他の企業とは違った当社ならではの特徴を出したいと考えていました。竹内先生から学校の先生向けにスマホの実機を使った講座をしてほしいとリクエストをいただき、そこでできる限り現場のニーズに応えるようにカスタマイズした講座にしていこうと決めました。

竹内:学校の先生はスマホの所持率が低く、子どもたちより大人の方がよくわかっていなかった。スマホに触ったことがない。フリック入力もできない。スタンプも知らない。先生が自分で体感しなければ、何が便利で何が問題かも分からないので、実際にスマホに触るのが一番だと思い、実機を使った講座をお願いしました。当時実機を使った講座はどこもやっていなくて、リクエストに応じてくれたDeNAは画期的でした。

西:講座を受けられた先生方からは大好評だったので、その後も保護者、生徒向けと範囲を広げていき、現在はスマホ約200台を活用して講座を行っています。当初は通信速度が遅かったり、ルータが足りなかったりと手探りで始めたのでうまくいかないこともありました(笑)。ニーズに応えることで、現場で起きている問題を解決することができてよかったなと思います。

竹内:それから大人ではなく大学生が講師をするほうが小中学生にも近く、響くし思いが届くと考えていました。そこでDeNAとの共同講座では僕の研究室の大学生が小中学生に教え、そこでもスマホの実機を借りて講座をやるようになりました。すると小中学生たちも盛り上がり、大事な話にも興味をもって聞いてくれる。西さんたちが周りで大学生をサポートしてくれるので、講座もスムーズに進みます。講座の教材作りも、西さんたちが作ったものを小中学生向けに分かりやすく学生たちが作り直すという共同作業を行いました。

教材作りといえば、先生向けの教材(※)も作ってくれました。2015年に大阪府の全小中高(小学校1023校、中学校530校、高校264校、特別支援学校61校)に配布され、学校で積極的に活用されていると聞いています。

※ 学校の先生が生徒向けに啓発授業を行う際に利用する教材と指導の手引きを盛り込んだDVD付報告書を作成したもの。この教材は大阪全ての小中高教師がダウンロードできるうえ、DVDを全ての学校に配布した。

教育機関や警察、事業者も協力するが、主人公は中高生のスマホサミット

西:先生向け教材の製作もOSAKAスマホサミットがきっかけでした。竹内先生が総務省近畿総合通信局の座長を務め、関西を中心に開催しているスマホサミットについて教えてください。

竹内:総務省近畿総合通信局がいろいろな形でバックアップし、警察や教育委員会、企業なども協力して関西を中心とした地域で開催しているものです。スマホの問題に関心を持った中高生が自分たちでアンケート調査を行って問題点をあぶりだし、「サミット」で徹底討議をして対応策を「宣言』としてまとめて発表する。大人はサポートに徹します。

OSAKAスマホサミットの場合は、三日間に分けて開催し、初日に中高生がスマホの良いところ、悪いところを出し合います。出てきた意見をもとに中高生自身がアンケート内容を考えます。そのアンケートを大阪府下で20000人規模で実施しました。アンケートは自分たちで考えたものなので、一般論ではないから子ども達も腹落ちする。アンケートは子どもをハッとさせるきっかけ。大人はあくまでサポートするだけで、DeNAはアンケート集計を実施してくれました。2万人を越えていたので大変だったと思いますが、とてもありがたかったです。

数ヶ月後にアンケート結果がでたら、私がアンケート結果を分析して、子どもたちが見てすぐわかるようにグラフ化しておきます。二日目には子どもたちにアンケート結果を伝えます。
(以下、各アンケート項目は大阪府の小中高生が考え、大阪府全域にて2015年に実施。アンケート人数は小学生10,459人、中学生7,691人、高校生3,495人。)

▼小1~高3までのスマホ所持率(%)。小学校低学年の所持率が急進。親などから譲り受けたケースが増加。

▼スマホとガラケーの違いその1。1日3時間以上使用する割合が大きく異なる。

▼スマホとガラケーの違いその2。様々な問題が発生している。

見ての通りアンケートが語る力が大きい。こういうデータをもとに皆で話し合うから、子どもたちは「これはダメだ。何か対策をしなければいけない」と思う。そう思わせるのが重要。

アンケート結果を受けて、3日目に各グループが自分たちで対策を考えます。独自に啓発ビデオを作ったり、LINEのスタンプ案を考えたりします。自分たちオリジナルの啓発教材を作成し、冊子を作ったりしたものを全員の前で発表します。啓発川柳などを作るグループもあります。過去岡山で開催したサミットでは「桃太郎アラーム」という啓発アプリを制作するまでに至りました。アプリなんか時間もかかるし絶対ムリだと思っていたけど、西さんたちに協力してもらい実現できたので子どもたちは大喜びでした。今年は「OSAKAサミット」で子どもたちが「おかんアプリ」(仮名)を作りたいと言い出しました。「あんたあかんでー」「もう4時間かかったで、やめー」とか音声で注意する(笑)。今回も西さんといいものが作れたらと思っています。

西:子どもたちのためになるものが作れるようがんばります。

子どもたちの未来のために

西:最後になりますが、最近課題と感じていることはありますか。

竹内:アンケート結果が示すように、スマホ所持率の低年齢化が進んでいます。これで問題が増えてくると感じていて、これをなんとかしたい。小学校低学年のスマホ所持率が急進しているし、フィルタリングもついてない。今後低年齢化している子らに対して何をしたらいいのか、まずは議論したい。

DeNAとの取り組みについては、大学やネットから仕入れる情報だけでなく、迷った時に西さんに相談したり、「この問題どうなの?」と共有しあっています。思いついたら肌感覚の情報交換が大切、そうやってその時その時を一緒に歩いてきました。あれこれやろうこれやろうと話すと、すぐに講座を時代のニーズに合わせてくれて助かっています。日本の子を守るために僕は何をしなければいけないのか。DeNAは何をしなければならないのか。それぞれが精一杯やらないといけないし、自分の孫世代まで守っていかないといけない。日本の子どもたちが正しくなっていく仕組みを一緒に作っていきたいと思っています。

西:竹内先生から最初に相談をいただけるのは非常にうれしいです。今後もよろしくお願いします!

竹内和雄 プロフィール
兵庫県立大学准教授。公立中学校で20年間,生徒指導主事等を担当。寝屋川市教育委員会指導主事を経て2012年より現職。 生徒指導を専門とし,ネット問題,いじめ,不登校等,課題を持つ子どもへの対応方法について研究している。 文科省学校ネットパトロール調査研究協力者,総務省青少年インターネットWG構成員,総務省(近畿総合通信局)「スマートフォン時代に対応した青少年のインターネット利用に関する連絡会」座長。

西雅彦 プロフィール
DeNAカスタマーサービス部部長。2009年に入社し、主にサイトパトロール部門、お客さまからの問い合わせ部門を担当する一方で、対外的にネットリテラシー向上のための啓発活動を推進する責任者。

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