田中洋一郎×増井雄一郎 対談 幅広い事業を展開しながら、新たな挑戦に貪欲なDeNAで 僕が目指し、求めていくこと

スペシャル対談 vol.1

1996年からJavaでのソフトウェア開発に関わり、Web系に活動の場を移してからも講演や執筆活動も精力的にこなす、ITアーキテクト・田中洋一郎。業界では知らない者のいない彼は、2017年6月、DeNAへの移籍を決めオープンプラットフォーム事業部システム開発部に配属された。 今日は田中の過去のキャリアを振り返りながら、今後DeNAでチームとして目指すこと、個人でやりたいことなどを、Toreta,IncのCTO・増井雄一郎氏との対談形式でお伝えする。

Chapter.1

JavaからスタートしたキャリアとWeb系との出会い

2人が出会った頃が、ちょうど僕の人生の転機だった

増井:僕と田中さんのこれまでの関係を振り返ると……オンラインではよくお会いしていますが、オフではそれほどですよね。

田中:イベントでちょこちょこ、何回か会ったぐらいですね。

増井:この業界、いろんなところに登壇していたり記事に出ていたりする人たちが、お互い仲が良いようでいて直接は知らないケースが多いですからね。僕と田中さんの場合は、田中さんがGoogle API Expert ProgramのOpenSocialエキスパートに認定されたあたりで、正式に知り合ったという感覚かな?

田中:2007年かその翌年くらい、10年ほど前です。

増井:僕はその頃、結構JavaScriptの話なんかをいろんなところに寄稿していたので、たぶんその流れで田中さんを知ったのだと思います。田中さんには、APIの人というイメージがずっとあります。

田中:最近はそうですね。でも、僕はもともと“Javaの人”というイメージが強いようです。未だにそう思っている人が、DeNA内にもいますね。

増井:キャリア的にも、Javaの方が長いんですか?

田中:OpenSocialをやる前はSlerにいたので、8〜9年くらいはそこでずっとJavaを書いていました。あとはDBを設計したりとか。Web系と言われる仕事は、ミクシィに入社してからなので、その時にJavaScriptやHTTPなどのWeb系標準技術にかなり必死に取り組みました。だから僕の職歴の中では、Web系は後半の部類に入ります。

増井:前半の仕事では、Web系というよりも業務系ばかりだったんですか?

田中:業務系です。Javaが出たての1.0.2とかのときに、当時テンアートニというJavaだけでやっていきますという先進的な会社があって。それで、面白そうだと思って入社したのが、僕の社会人生活の本格的なスタートです。実はテンアートニは2社目で、半年くらいは別の会社でCOBOLをやっていたんですけれど、大学時代から出たてのJavaに興味があったので、テンアートニに転職後はずっとJavaがメインでしたね。ただ、実際の業務処理を書いていたときもあるのですが、ほとんどはフレームワーク側の設計やコードを書いていました。Strutsが出る前のWebフレームワーク乱立時代に基盤側の立場にいたと思っていただければ、イメージがわきやすいかもしれません。

OpenSocialを手掛けてからは、

完全にWebの人になりました

増井:でもなぜその後、そこから一気に離れたのでしょう? 10年くらいやっていたんですよね?

田中:Facebookが出てSNSが流行り始めた頃、たまたま受託案件で受けたのが、「Facebookでアプリが作れるらしいから、プロトタイプをちょっと作ってみないか」という依頼で。この案件を通じて、SNSのプラットフォーム化とソーシャルアプリの可能性の大きさに強烈に惹かれていきました。これは世界が変わるぞ、と。それが業務系からWeb系に目が行くようになった転機となりました。

増井: それこそ、2007年ですね。

田中:はい、その受託案件と同時期に、『こみゅすけ』という自作アプリが、第3回Mashup Awardというコンテストで3賞を同時受賞したんです。それをきっかけに、グーグルがGoogle API Expertというプログラムを立ち上げるのでイニシャルメンバーにならないか、と誘われまして。当時はグーグルがOpenSocialを広めるちょうど手前でして、ソーシャルアプリに興味があるならOpenSocialのAPI Expertになってみないかと。天下のグーグルにそんなことを言われたら、本気になりますよね(笑)

増井:そしてその頃に、僕と田中さんが知り合ったと。田中さんはその後、初著書『OpenSocial入門』を出して、それがミクシィの人の目に留まって2009年に入社されたんですよね。

田中:僕はソーシャルアプリを作る側だと当時は思っていたけど、幸運にも声をかけてもらい、プラットフォームを作る側になりました。Mashup Awardというコンテストで受賞をして、その結果世界が一気に広がった感じです。OpenSocialを手掛けてからは、完全にWebの人になりました。

Chapter.2

プラットフォーム構築のキャリアを武器に、
幅広い事業に関わっていく

DeNAは新たなチャンジができる場所だと信じている

これから新しいことを

何かやるかもしれない

というところで

経験を活かしたい

増井:DeNAに入社されて、この対談時点で1カ月です。今の心境はいかがですか?

田中:立ち上がりを焦ってオーバーヒートしちゃうのもつらいので、ゆっくり周囲を把握しながら、できることを見つけようとしていた1カ月でした。いろんなミーティングに出たり、人と話したり、関係しているところにはできるだけ顔を出すようにしたり、という毎日です。

増井:DeNAには、何をするつもりで入社を決めたのですか?

田中:失敗を含めて僕がやってきたことをベースにすれば、チームのコミュニケーションを円滑にしたり、みんなに自信をつけさせたりということが、メンタル的にもシステム的にもできるのではないかと思っています。ただ、1つのサービスに対してコミットするということ、幅広くいろんなことを見ながら自分のノウハウを活かしていくということ、これらのどちらに僕は進むべきか、実はすごく迷っています。

増井:というと?

田中:自分の歩んできた道を振り返ると、1つのサービスに対してのコミット、特にビジネス面も含めてとなると、実はあまり経験がないんです。そこにチャレンジするのは、自分にとってはリスキーだなと思っていて。

増井:確かに40代前半という年齢でのリスクと、20代、30代のリスクは別の話。勇気が必要です。

田中:そこで、幅広くいろんな事業をやっていて、しかもこれから新しいことを何かやるかもしれないというところでなら、自分の今までの経験を活かすことができるのではないかと考えました。それなりの規模で体力のある会社ということを条件に考えた結果……。

増井:それがDeNAだったと。

田中:あとは昔からの知り合いがDeNAにいるのですが、「いいかげんにさっさと来い」とお声を掛けていただいていたのもありまして(笑)

ダイナミックな事業を見られるところも、

思い付くところそんなにないですよね

増井:データを大量に扱う別のプラットフォームとして、IoT系があります。あちらはそれこそ、センサーデータを使って業種を問わず、例えば車、家、気候からなど、あらゆるものから山ほどデータを集め、そのソースをプラットフォーム化して、人にフィードバックします。そちらのほうに、目を向けることはなかったんですか?

田中:結局、そういうものにも目を向けたらDeNAだった、という言い方が正しいかもしれないです。

増井:なるほど。そちらまで幅広く含めてやっていますものね。

田中:ちょっと前まではMobage(モバゲー)の会社というイメージが強かったのですが……。

増井:ごめんなさい。僕はいまだにそのイメージが強いです。

田中:もう1年くらい前から、僕はその印象が薄れてきています。

増井:車の事業(オートモーティブ事業)なども、やっているんでしたっけ。

田中:ヘルスケア事業もしていますね。実は外から見ていて、「この会社は一体何をしたいのか」がわからなかった時期もありました。迷走しているのかなと。

増井:余力があるから、あちこちに手を伸ばしてみただけじゃないか、みたいな?

田中:もしかしたらそういう時期もあったのかもしれないけれど、基本的には本気でやってるのがわかりました。立ち上がったサービスを見れば他の人もそう思うでしょうし、やっぱり体力のある会社しかできないことを、ちゃんとやっているんじゃないかな。上から目線で恐縮ですが、僕の中ではそこを1つ評価しています。入社してそういったところを横断的に見るチャンスを与えられれば、それは光栄なことですし。

増井:日本でそういったダイナミックな事業を見られるところも、思い付くところそんなにないですよね

先行だからこそ

失敗から学ぶ経験を積めたのも、

また事実です

先駆者だからこそ失敗から学べた経験が財産

田中:僕はサービスのプラットフォーム化が得意だと思われていて、それは自分でもそうかなと思いますが、サービスが違ってもプラットフォーム化のためにやることって基本的にそんなに変わらないんです。コンテンツをいかに安全に利用してもらうか、なんですね。そのためには、ユーザー認証だったり認可だったりがあるんですけど、そういったところの基本的な設計内容は、どこもあまり変わらないです。だからこそ、横に展開しやすいんですが。ただ、それは経験がないとなかなか難しいし、運用が必ず付きまとうので、経験がある分立ち上がりがぜんぜん違うというところで、いろんな価値を出せるのではないかと、自負しています。

増井:さらにデベロッパー側の気持ちとして、使いやすいAPIが提供されるかというのは、そもそも会社の生産性にも大きく影響すると思うんです。

田中:そうですね、僕は過去に結構失敗もしていて(笑) 勉強会に行くと、「何、あれ。使いにくいんだけど」と言われることもありました。僕が今までやってきたことは日本の中では先駆けというか、一歩先に行っているものを提供してきたということもあって、やはり後発の方がいいものになりますよね。

増井:後発が有利なのは、もちろんそうです。

田中:「最初から分かっていたら、僕だってそうしたよ」と言いたいですけど、先行だからこそ失敗から学ぶ経験を積めたのも、また事実です。

増井:先行だからこそ、できる失敗がある。

田中:僕は失敗をいくつか経験して何となくわかってきたことですが、安全というのは、いろんな要素を含んでいるんです。増井さんは僕を“APIを作ってきた人”という印象が強いとおっしゃいましたが、プログラムレベルのAPIを切っていく中で、僕が具体的に何をやってきたかというと、各種法律を遵守しているかどうかを確認することや、セキュリティ面で問題ないかどうか、といったことがほとんどでした。特に、個人情報をどう扱うべきかとか、インシデントが発生したときの対応などは、とても強く印象に残っています。

増井:保全やログを取ったりも含めて、ということですよね。

田中:今まで僕が企業の中でやってきたことは、そういう方面の調整が多いんです。安全、安心かつ受け入れられるプラットフォームを作るには、国によって違う文化や法律があるということも大事になってきます。僕はどちらかと言えば保守的な考えを持っていると自分では思うのですが、だからこそ安心、安全はがっちりフォローした上で、あらゆる経験が活かせると思っています。

増井:今まで事故になったことがあるからこそ、わかるというやつですね。

田中:そうですね。デベロッパーサイトには、何度もお詫びを(笑)。デベロッパーサイトに­­載っているお詫び文や障害情報などは、僕が書いて掲載していたことも多かったです。その手の文章だけは上達しました。上手なお詫び文も専門技術ですし、プラットフォームの運営上、とても大切です。
そういったトータルのところ……DeNAはモバゲーをやっているので、当然、社員の皆さんにはノウハウがあると思いますが、ゲームというものから離れて実用的になったらちょっと違うということもあるかもしれないので、そこも含め包括的に見ていければいいかなと思います。

Chapter.3

コミュニケーションのフレーム化と、
新たな個人キャリアの両立が目標

仕組みを変えて相互理解を進めるのが第一歩

増井:さあ、DeNAでそろそろ本格始動かと思うのですが、まず何から始めますか?

田中:大きく2つあります。まず、先ほどの入社の決め手でも少しお話しましたが……いろんな職種の人たちが、1つのものを作るというのがプラットフォームの醍醐味です。でも職種が違うからこそ会話が難しかったり、要求していることをお互いに理解できなかったりということが多々あります。DeNAでもあると思います。その状況を、ちょっとしたことで変えられるならやってあげたいし、それをやった結果開発がうまく回っているところから、「さあ何をしようか!」という風に改めて考えられるようにしたいですね。

増井:案外、人間に興味があるんですね。

田中:そんなにないですよ(笑)

増井:正直、僕もあんまりないんです。

田中:ないけど、コミュニケーションの改善には二択あると思っていて。1つは直接、「ここはこうなんじゃない?」「みんな、この問題はこう修正していこう」と人間に語り掛ける。もう1つは現在のやり方を変えて、摩擦の起きないルールを作る。

増井:後者は、仕組みを提供するということですね。

田中:はい。そして僕は後者を選びます。

増井:フレームワークの人だから。

田中:はい。ああ、いい話ですね。そうです(笑)

増井:フレームワークで問題点を排除するということですよね。

田中:皆にそのルールに乗ってもらって、やってもらうと。当然そこで不都合が出れば、繰り返し改善していく。プラットフォームを作るという感じかもしれないですね。それで回り始めれば、そこからまた新しい価値が生まれるかもしれないので、そういう点では発想は一貫しているのかもしれません。自分では気付きませんでした(笑)

増井:ということでは、プラットフォーム作りも、組織作りも同じと言えるかもしれません。

田中:同じかもしれないです。なので入社してから最近は、日本語ばかり書いていて。ルールをコードで書ければいいのでしょうが、残念ながらそうじゃないので。

増井:そうですね。日本語は実行可能ではないですから(笑)

田中:いろんなツールだったり、ツールの使い方だったり、そういったものをちゃんと言葉にして、図にして、分かりやすいように皆に説明して、不満があれば聞いて直して。さらに持ち込んだ仕組みの上で、またこれをやってみようというものを積み上げていって……。

増井:強化していって、アプリケーションのように人がそれぞれ動いていくという感じですか?

田中:そうですね、­それが1つです。あともう1つは、個々人に自信をつけることです。

社員の背中を押すと同時に、自分も飛躍したい

田中:個人的に思っていることなんですけど、会社とは別に技術顧問を何社か行っていた中で気付いたんですが、皆やっぱり自信がないんです。

増井:それはありますね。

田中:答えは持っているんだけど、本当にこれでいいのかと迷っているんです。そこに「答えはあるじゃん、それをやれば全然いいよ」と言ってくれる人が誰かいると、すごく強いと感じていて。僕はこのDeNAで、そういう存在にもなれればいいのかなと。もうちょっと顔を広くして、いろんなところに巻き込んでもらって、背中を押してあげる役割ができるようになっていきたいですね。

増井:メンターとしての役割を担うということですね。では逆に、皆のためということではなく、田中さんが個人的にやり遂げたい仕事はありますか?

田中:今までOpenSocialをやってきて、ソーシャルゲームの世界を技術的な面で支えてきたと確信しています。その後LINEに行ってBotの世界だったり実用的なアプリだったり、要はメッセンジャーをベースにしたビジネス、そこの技術的な支えというものをやってきました。もう1個、せっかくなので40代で何かやってみたいとは思っていて、やりたいと思えるものを1年、2年の中で見つけたいなと。

増井:自分がやったと言えるものをここでもちゃんと作りたいと。

田中:そうですね。スマホの時代はもうちょっと続くと思うんですけど、やっぱりインターネットの世界は、ユーザーの使うデバイスが変わったときというのが一番チャンスだし、世の中も変わっていくと思うんですよ。そこのチャンスを逃したくないという点では、そういったアンテナをどう広げていくかというのが、日々の悩みだったり楽しみだったりします。そこを逃さないように、いろんなアンテナと人脈を張っていこうと思っています。

いろんなアンテナと

人脈を張っていこうと思っています。

時代を読み、DeNAでアクセルを全開に!

増井:ありがとうございます。では最後の質問です。今、スマホの時代がもうちょっと続くとおっしゃったことに関連して……僕は今40歳で、田中さんは42歳。一般的な定年退職の年齢が60歳から65歳ですが、その頃の技術について、どう想像していますか? 僕は今、専門家というか好事家が触っていない技術が、存在している確率は低いと思っているのですが。

田中:それはどうしてですか?

増井:20年前で考えてみると特に技術的には、当時想像できなかったものって、現在のコンシューマ向けにないんですよね。iPhoneだってもう10年前には存在していて、その10年前にはPalmPilotがあり、Zaurusがあり、W-ZERO3がもうあったんですよ。

田中:懐かしいな。そうですね。

増井:1つの技術が、一般的になってコンシューマに行くまで、20年かかると考えると、今、エッジにいる人が触っている技術は5年後、10年後、20年後の普通になっているんじゃないかな。もちろん全部がそうなるわけじゃなくて、一部でしょうけど。

田中:そういう意味でやっぱり、アンテナを張ることは大切ですね。どうせなら5年くらいで何かやりたいですけど(笑) 。でも新しい技術は好事家の中でしか使われていないうえ、最近は多くの企業が技術の方向性を隠すので、読みが難しいのが現状です。

増井:そうですね、企業は隠しますね。

田中:そこをどう読んでいくかに、本当に尽きます。あとはいつか、「これだな!」と決断をするときが必ずある。

増井:アクセルを踏んでもいいと思える場所が、自分として見つけられるかどうか。

田中:それが大事だと思います。今までの転職も、結局はそういう環境に自分を置いたというのが大きいので、ここがそうだといいなと思います。

増井:半年後ぐらいに思えればいいですね。

田中:そうですね……アクセル、ぜひ踏みたいです(笑)

アクセル踏みたいエンジニア、待ってます!

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