DeNA編集部

2017.10.19

『プログラミングゼミ』配信開始へ。慶応大学 村井純教授のプログラミング教育に期待すること

2017年10月19日、DeNAは小学校低学年向けプログラミング教育アプリ『プログラミングゼミ』を配信開始しました。そこで今回は、DeNAのプログラミング教育にご尽力いただいた慶應義塾大学環境情報学部の村井純教授にコメントをいただくとともに、これからのプログラミング教育に期待することを伺いました。

※プレスリリース:小学校低学年向けプログラミング学習アプリ 『プログラミングゼミ』を無料で配信開始
※プレスリリース:DeNAのプログラミング学習アプリ 『プログラミングゼミ』を「渋谷区モデル」に採用

慶應義塾大学でのプログラミング教育について

慶應義塾大学環境情報学部 教授の村井純(むらいじゅん)です。私はコンピューター・プログラミングを学生時代から研究していまして、コンピューターサイエンスの研究者になって現在に至っています。その中ではインターネットを基盤にしたコンピューターネットワークや分散システムということをずっと取り組んでまいりまして、今は日本で一番古い大学である慶応大学の中でも新しい湘南藤沢キャンパス(SFC)の中で、環境情報学部の学部長も務めさせていただいています。

SFCは1990年にできた新しいキャンパスですけれども、これは最初からインターネットやコンピューターを前提としたキャンパスを作ろうという、90年の当時にしては非常に新しい世界初の試みでした。つまり、私たちの生活がコンピューターとネットワークを前提にして進んで行く社会、こういうことを予測してそれらを担える学生たちを育てたいというのがSFC設立の理念だったわけです。それから20数年経ちまして、今SFCだけでなく社会全体がインターネットとコンピューター、データというものを前提に生きていく時代になったといっていいと思います。

さて。一番大切なことは、ではそのための人間の力はどのようにしてつくのかということだと思います。私たちはそうやって大学での取り組みを始めていましたので、そのことがどうやって社会に展開することかということも大変重要な課題として取り組んでまいりました。私たち大学が日本の教育に対する責任を果たして行くということは、大学の教育でやるだけではなくて、大学に至るところのプロセス、小学校からずっとこの教育の中でどうやって情報を前提とした社会を担える教育ができるのか、これも大変大きな関心があったわけです。ところが私たちはそれをずっと作っていく努力をしてきているんですけれども、これもなかなか時間のかかるプロセスです。一人ひとりの人間が、あるいは一人ひとりの社会のステークホルダーができることはたくさんあるだろうと。

では大学は何ができるかと思い、大学入試に「情報」の科目をいれることを考えました。(慶應義塾大学では)既に3回目の入試を準備しているのですけれども、大学の入試に「情報」があるということは、今度は私たちの大学を目指す高校生は「情報」を勉強するということです。それでそのことが伝わっていく社会のメッセージとなれば、高校生もそれに取り組むでしょうし、これを慶應義塾大学で入試として情報を取り込んでいるということが伝わっていけば、だんだんそれが高校にもあるいは小学校にも伝わって行くんじゃないかなと。ある意味、気が長いようですけれども、私たちがすぐできるこれ(大学入試に「情報」を入れること)は解決方法のひとつではないかと思っています。やってみますと、この「情報」で入学してきた学生が新しい力を持っているということを感じることができます。情報入試を選択した経緯なども聞いているのですが、上手くいっているのだと思います。

こうやって私たちもその努力をしているわけですけれども、では社会全体はいまプログラミング教育あるいは情報教育に対する非常に新しい取り組みをしているところではないかと思います。一方で、各教科でインターネットを使うことを前提に、あるいはコンピューターを使うことを前提にした社会の中で何ができるのか、これを追求していくのはとても難しいことではないかと思います。つまり大変忙しい学校の現場の先生だけではなくて、この社会に関わる全てのステークホルダーが協力して進める、これが必要ではないかと思っています。

ラップトップやタブレット、スマートフォンなどいろいろなデバイスがありますので、小学校低学年でもこういったものをどうやって教材に利用するかという取り組みはたくさん行われているんですね。そしてこの中でとても大切な考え方は、いま教育学の世界では議論されています。アメリカのイーストコーストではクリエイティブラーニングという、たくさんの人たちの学生・生徒たちが自分達で何かものをつくっていく、力をあわせてつくっていくということをプロセスを経て学習していくというような考え方。あるいはウェストコーストではコネクティッドラーニングと呼ばれることもあります。繋がっていることの中でやはり自立的な生徒達の力が合わさって、それで知識伝達だけではなくてものをつくっていくということはどうやって進められるのか、こういうことだと思います。日本でもアクティブラーニングを学習指導要領の中でどうやってやるかということが議論になっています。このことをどうやって進められるかというのは、プログラミング教育が小学校、中学、高校こういったレベルからいかに浸透していけるかということが大変大きな課題になるかと思います。従いまして、私たちは大学としてそういう入り口を含めて、もちろん大学教育の中で社会のあらゆる分野にコンピューターやインターネットが貢献して行くかということに取り組むと同時に、社会の中では小学校、中学、高校の中でプログラミングやデータの利用を通じてどういう学習をしていけばいいのかということを、全ての教科の中でやるべきだと思います。コンピューターを使ってのプログラミングを通して子どもたちが成長していく。こういった世界をつくっていくことがとても大切だと思っています。

ソフトウェアのリテラシーを子供たちに伝えていくというのはやはり、学校だけではだめだと思います。これは社会、産業、それから親や家庭、それからもちろん友達同士。このあたりがとても大切です。だからクリエイティブラーニングが学校でのプログラミングの教育にどうどのようにインパクトを与えるかということが期待できます。生徒同士の対話での成長、それから親はもちろん、社会の中での役割を担った企業や街、コミュニティ、こういうことがどうやってプログラミング教育やコンピューターのリテラシー教育に関わるかということが大切だと思うんです。これがまさにプログラミング教育でのマルチステークホルダーのモデルだと思います。もちろん役所も文部科学省も、教育関係のいろいろなパブリックな役割もかかわる必要がございます。

私たちはタブレットを使って慶應義塾幼稚舎で一年生からタブレットを全員に配って各教科でやるという実験をしたことがあります。その担当した教諭は3年間それを務めて博士論文を取りました。その時に、いくつかの重要な点を指摘していました。ひとつは、小学校に入ってきた時からタブレットを与えるという当時としてはかなりチャレンジングなことをしたのですけれども、なんとですね今の子どもたちは小学校より前からタブレットを使いこなしている生徒が1/3くらいいるんですね。だから今の家庭の中の環境というのが、そういうデジタルネイティブな環境で、実際そうやっている家庭が沢山いるんですよ。3年ほど前の話です。

これからますます小学校あるいは小学校に入る前から実際にはそれ(タブレットなど)に触れている家庭が多くなってくると思います。したがってその時に、どういういい環境・ソフトウェアを使えるのかということはこれからとても大切な課題になると思います。その品質、質のいい洗練されたやっぱりソフトウェアに出会えるということを、やはり私たちが考えて行く必要があると思います。

プログラミング教育によって子どもたちに身につけて欲しいこと

プログラミング環境が浸透するというのはプログラムができるということ、あるいはコンピューターが使いこなせるということだけではないと思うんですね。思いついたことをどうやって実現できるか、夢をどうやって実現できるのか、それから何か問題だと思ったことをどうやって解決できるのか、このことをプログラムやコンピューターを利用することで学んでいって欲しい。そうするとここは自信につながるんです。したがって、一人ひとりの子どもたちが、自分が思ったことがきちんと実現できるんだ、かたちにして人を説得することができる、人を喜ばせることができるんだ、こういう力をつけてそれが自信になって生きていくこと。それで子どもたちがイキイキと生きていく。ここにプログラミングの教育というのが結びついて行くのが大切だと思います。

DeNAと渋谷区のプログラミング教育のこれから期待すること

DeNAの方たちが渋谷区でタブレットを利用したプログラミング教育に協力していただけるというのはとても大切なことだと思うんですね。これはDeNAという企業の方が、こうやって教育に関わってくるということ、それも学校教育にきちんと関わってくるということ、それから是非この家庭のメンバー、両親であったり兄弟であったり、こういった方たちとも協力することがとても大切だと思うんですね。それからやはり全ての教科、全ての科目、全ての学校で、クラスの中の全員の友達が参加するということが大きい。これが使える環境にあるということで、その今度は子どもたち相互の中での教え合いや学びあいというのが出てまいります。まさにいまたくさんの教育の専門家がいま願っていることそのものだと思うんです。是非その多用なステークホルダーによって中で支えられる未来を作る子どもたち、こういうことが進んで行くことに大変大きな期待をしております。

プログラミングゼミ公式サイトhttps://programmingzemi.com/

小学校低学年向けプログラミング学習アプリ 『プログラミングゼミ』を無料で配信開始:
http://dena.com/jp/press/2017/10/19/1/index.html
DeNAのプログラミング学習アプリ 『プログラミングゼミ』を「渋谷区モデル」に採用:
http://dena.com/jp/press/2017/10/19/2/index.html

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