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『逆転オセロニア』は2016年のリリース以来、プレイヤー同士が会うことで面白さが増すという確固たるポリシーを貫いてきました。そんな『逆転オセロニア』が、リアルの場での交流が困難となったコロナ禍に描いた、唯一無二のオンライン体験とは……。
前編では、ネット時代の鍵を握るオフラインイベントのあり方を、対戦価値の最大化を図る体験と親睦を深める体験の2軸で紹介しました。後編ではコロナ禍での試行錯誤と再認識した価値についてお話します。
対戦ゲームである『逆転オセロニア』にとって最も大切なイベントの1つが、全国大会「オセロニアンの戦」です。コロナ前は全国を6地区にわけた予選をおこない、決勝ではその勝者たちが東京に集結し熱い戦いを繰り広げていました。しかし、ウィズコロナ時代においては、対戦イベント開催を望む声が多く寄せられる一方で、リアルの場で得られる体験をオンライン上でどう埋めていくかが議論の焦点でした。
そこで、「オセロニアンの戦」とはコンセプトを変えて、オンライン版の全国大会を新しくゼロから練り直す挑戦に踏み出しました。理由は、「戦」の名前をつかって大会のブランドイメージを損ねたくなかったことと、「戦」はプレイヤー(以下、オセロニアン)の期待に100%沿える体験を届けられるタイミングでオフラインイベントとして復活させたいという運営チームの気持ちが強かったためです。
新しいコンセプトとして、「思わず声をあげてしまうような、ハイレベルな対戦が繰り広げられる大会にすること」と「今までの大会にはなかった、新しい面白さが体感できる大会にすること」の2つを策定。このコンセプトを基に、対戦体験や配信環境の設計へ落とし込みました。
対戦体験を設計する上で、コロナ禍でコミュニケーションの希薄化が社会全体で問題視されていたことにも着目。プレイ中に自然な会話が生まれる環境をオンライン上で再現できないかを突き詰めた答えが、「オセロニアンダブルス」でした。従来の1対1形式ではなく2対2のダブルス形式にすることで、ペアを組んだ相手と声をかけながらゲームを進めてもらうことを期待しました。
予選配信は、オンライン会議システムのZoomのブレイクアウトルーム(小部屋)機能を活用し、決戦のみトーナメント形式にしてYouTube実況をおこないました。Zoomであれば、プレイ画面を共有できるのはもちろん、小部屋に入ってクローズドな空間で綿密に作戦を練ることができます。
決勝大会は、予選を通過した挑戦者とスタッフのみを集めた無観客会場を用意し、入念な感染対策のもとオフラインで開催。最強オセロニアンペアのプライドを賭けた決勝バトルをYouTubeの生配信で全国のオセロニアンに観戦してもらうことで、白熱感や一体感の再現を目指しました。実際に開催してみると、Twitter上で対戦相手を探す流れやペア相手との仲が対戦を通して深まる体験など、従来では成し得ない唯一無二の舞台となりました。
過去最大の同時接続数を記録した「オセロニアンの祭典 6th Anniversary」の生配信や「鬼滅の刃」コラボのヒットによってアクティブプレイヤー数が3年ぶり最大を記録するなど、コロナ禍でも『逆転オセロニア』は順調。その一方で、オンライン環境では大人数が親睦を深めることが難しく、かつての体験の補填はできても圧倒的な価値創出とは言えない状況から、交流を目的とするイベント運営は低迷期を迎えていました。
そんな中、ようやくオフライン再開の兆しが……。世間全体にオフラインイベントや外出ムードが戻り始めた2022年4月頃、『逆転オセロニア』でも3年ぶりのファンミーティング「オセロニアンキャラバン」を企画し、オフラインイベント復活に向けていよいよ本格的な検討段階に入りました。コロナ対策を最優先に考慮しながら、親睦を深める体験をどうやって叶えるか。全国各地の会場へ視察を重ねながら、コアとなるイベント体験を入念に設計し、札幌・東京・京都での開催を発表することができました。
2022年7月10日には、第一弾となる札幌開催を実施。安全面の配慮から、従来のような皆が会場内を自由に歩き回って思い思いの相手と親睦を深められる体験が叶わない代わりに、席に居ても一人ひとりにスポットライトがあたるヒーローショーのような形式をとりました。
会場の約5割のオセロニアンがイベント初参加だったことは予想外でありつつも、オフラインでも新しいつながりを築けていたことを裏付ける嬉しい結果となりました。事後アンケートを通して、子どもと一緒に家族で参加してくださったオセロニアンや、イベントを期に復帰したオセロニアンがいることが分かったこと、オフラインイベントを心待ちにしていたという声が多数寄せられたことは、その後の東京や京都開催に踏み出していく上で大きな自信となりました。
ところが、コロナの感染拡大により事態が急変したのは、2022年7月後半。東京開催に向けて会場準備を進めていたまさに一週間前でした。過去最大の感染状況を鑑みて、東京と京都は開催中止を決断。見送りとなってしまったイベント当選者へは、完全招待制のオンライン版を実施するかたちでのフォローとなりました。3年ぶりのオフラインイベント実施に向けて、気合を入れて準備に臨んでいた運営チームにとっても、苦渋の意思決定でした。
こうして迎えた8月14日開催の「オセロニアンキャラバン オンライン」では、第一部に当選者限定の交流会、第二部には全員参加可能な夏祭りを企画。第一部の交流会は「ファン握手会」をイメージし、公式プレイヤーと一騎打ちできる対戦権を当選者全員にプレゼントしました。リアルな場での利点であったクローズドな空間がもたらす心理的安全性は、Zoomの小部屋活用によって担保できることを前述のオセロニアンダブルスにて実証済みだったので、第一部でも応用しました。第二部の夏祭りでは豪華景品を用意し、誰でも参加できる大人数参加型のゲーム会を生配信でも実施。
待っていてくださった方々をガッカリさせたくない一心で急遽誕生させたフォローイベントでしたが、いざオンライン版にシフトしてみると思わぬ反響をよびました。オンライン開催特有の場所を問わない対戦環境が、アットホームな機会創出に繋がったのです。
第一部では公式プレイヤー・当選者の自宅参加が多く、それぞれの家族や友人と一緒に盛り上がる様子があちこちのZoom画面上で見受けられました。対戦は当選者のみに与えられた権利でしたが、友人を自宅に招いたり慣れ親しんだ場所から参加できたため、オフラインとは一風変わった和やかな雰囲気でおこなわれました。
また、普段はお目にかかることのない公式プレイヤーの素顔が垣間見れたことに特別な価値を感じてくださった方も多くいらっしゃいました。当選者約200人分のプライベート戦を1日で実施できたことも、物理的な人の移動を伴わないオンラインだからこその利点です。
オンラインシフトに伴い、新たに企画した第二部へはシステム上のフルキャパシティーとなる860名が参加。オフライン版では安全面への配慮から参加枠に限りがあり、応募・抽選制を取らざるをえなかったため、当選できなかった方や会場の遠くに住んでいる方にも楽しんでもらえることを目指した結果、大勢の方と交流を図れる場となりました。
「リアルの場でオセロニアン同士が会うことで面白さが増す」という確固たるポリシーを貫いてきた『逆転オセロニア』は、コロナ禍でオンラインシフトが強いられたことを逆境と捉えていました。特に、3年ぶりの「オセロニアンキャラバン」復活が期待に沿えなかったときは、運営一同、失意の底に落ちたような心境でした。しかし、オンラインイベントを重ねていくなかで、その考え方は大きくアップデートされました。
オンラインへのシフトによって、オフラインの体験価値を補填しながら、唯一無二の価値の創出も叶うことが確信できたためです。新規プレイヤーと地方プレイヤーの参加ハードルを下げられたことや、スピード感あるフォローイベントの実施は、約3年間にわたるオンライン環境での知見が成せたことでした。
新しい体験創出に積極的に挑む一方で、対戦系イベント「オセロニアンの戦」をオフラインにて10月から再開することを発表。コロナ第7波の状況によっては直前でオンライン版へのシフトも起こりうるなか、コロナ前の完全再現はまだ叶わない状況のなか、「戦」ブランドの復活を決めました。あくまでも『逆転オセロニア』の柱を「リアルの場での交流」とするポリシーを守りつつ、開催形式への固定概念がなくなった今だからこそ踏み切れた覚悟です。
オセロニアンファーストを守り続けるためには、安全面に細心の注意をはらいながらも、挑戦することを躊躇してはならないと考えています。全国のオセロニアンのもとへ居場所を届けにいく使命を果たせるまで、さまざまな施策に挑みながら面白いゲームと信頼できるコミュニティづくりに今後も励んでいきます。
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