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2013年に『不格好経営 チームDeNAの挑戦』を出版したDeNAの南場智子と、『起業家』を出版した藤田普氏(株式会社サイバーエージェント 取締役社長)。 今回はその対談を、掲載当時(2013年)の原文のままお届けします。
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20万部超のベストセラー『渋谷ではたらく社長の告白』から8年を経て、第2の告白ともいえる『起業家』を今年4月に世に送り出した藤田 晋氏。 初めての著書となる『不格好経営 チームDeNAの挑戦』を6月にリリースした南場智子。
プライベートでも交流が深い2人が、出版を機に、互いの本のこと、会社を興す苦しみと喜び、そして会社の未来像などを"本音トーク"で語り合った!
創業のころに対面して以来、気の合う経営者として親しくしている間柄の2人。食事をしたり、時には南場が仲間と共に藤田氏の自宅に遊びに行ったりもする。
互いをよく知る2人だが、それぞれの著書を読んで、何を感じたのか。そして、藤田氏の鋭い突っ込みに南場はどう返すのか?......
(南場)まずお聞きしたいのですが、現役の社長でありながらよく本を書く時間がありましたね。
(藤田)4日間、屋根裏部屋に缶詰めになって書きました。
だいたい10万字書くと本になると言われているけど、僕は4時間で1万字くらい書ける。だからそれを10セットこなせばでき上がると計算して、1日2~3セットずつ書き続けたんです。
(南場)4時間で1万字は相当な集中力がないと書けませんよね。
(藤田)僕は集中することが得意なので。実は自分の殻に閉じこもることが多い内向的な性格です。
(南場)やはりそうでしたか(笑)。私も非常に内向的な性格で、初対面でもフランクに話せる他の経営者とはいつも隔たりを感じていたのですが、藤田さんの『起業家』を読んで、もしかしたら私と同じサイドの人間かなと思っていました。
(藤田)僕も『不格好経営』を読んで、南場さんがなぜこれほど面白い人なのか、その理由がわかった気がします。特に生い立ちの部分での厳格なお父さんとの確執。南場さんのモノの考え方がこの部分を読めばだいたいわかります。
(南場)生い立ちは、その話だけで本が2、3冊書けるくらいネタがあります(笑)。相当端折って書きましたね。とにかくひどい父親だったんですよ。大人になってからは理解でき、仲良くなりましたが。ちなみに、私は藤田さんとは逆で執筆に3カ月くらいかかりました。
(藤田)一つひとつのエピソードで脱線して面白いネタを入れ込んでいますからね。文章も上手くて言葉の使い方がプロの作家級。引きこまれるものがあります。ただ、ちょっと言わせてもらうと、「激やせラリー」(注1)のくだりは長く引っ張り過ぎでは?(笑) ※注1)南場が企画した社員参加型ゲームで6週間後の体重減少の割合を競う。
(南場)確かにそうかも(笑)。でも、あのエピソードがDeNAという会社の社風をものの見事に表していると思っています。みんな負けず嫌いで個性はバラバラ。その勝ち気と多様性がうちの良さです。あと、文章のことは買いかぶり過ぎ。でもそこまで言ってくれるなら明日から作家と名乗ろうかな(笑)。私の本は確かにエンターテインメント調ですね。それに対して、藤田さんの本は、ストレートにご自身の言葉で気持ちが吐露されていて、心を打つものがある。
出版元の幻冬舎の見城徹社長が「これは魂の叫びだ」とおっしゃっていましたが、私もまさしく「"魂"の本」だと思います。
(藤田)自分の頭の中にあるものを全部さらけ出したことは事実。頭の程度が見られているようで本当は凄く恥ずかしいです。
(南場)わかる。本を書くって頭の中を露出させたような恥ずかしさがありますね。それに長いものを書くのは本当に大変です。 藤田さんも私も文章を書くことは好きでしょう。でも私の場合、それはブログやせいぜいA4の紙3枚程度の長さまでで、これほど長い文章を書いたのは初めてです。本を書く人のことを心から尊敬できるようになりました(笑)。藤田さんは何冊も出版されていて、すごい。
(藤田)人間やれば何とかなると思いますよね。ただし、ここまで自分の感情や思ったことをストレートに執筆したものは『渋谷ではたらく社長の告白』と今回の『起業家』の2冊だけです。
(南場)なるほど。ところで、本の表紙の写真が、『渋谷ではたらく社長の告白』も『起業家』もポツンと一人でたたずむ、孤独を感じさせるものですね。ただ、同じ経営者としてその気持ちはとてもよくわかります。 社長ってトコトン孤独で、誰でも同じような気持ちを抱えている。
(藤田)でも2回も孤独感いっぱいの写真だと、さすがに「俺はどんだけ暗いんだ」と自分で突っ込みを入れたくなります(笑)。
※撮影協力: 渋谷hikarie THE THEATRE TABLE