私たちDeNAのスタッフにとって、元旦の風物詩となった「ニューイヤー駅伝(全日本実業団対抗駅伝競争大会)」。今年は第60回の記念大会として、全国の予選を勝ち抜いた43チームがしのぎを削ります。
昨年6位と躍進を果たし、「創設3年で優勝」という大きな目標を掲げたDeNA Running Club。東日本予選を最高順位の3位で終え、元旦への期待も高まる中、11月以降に選手の故障が相次ぎ、実際に出場できる選手が7区を走る7名ちょうどのみ、という苦しい状況に立っていました。
しかし、その7名、そして出場できない選手・コーチ・スタッフの全員がこの駅伝に照準を合わせ調整を続け、無事に上州路を駆け抜けるコースのスタートに立ちました。
今回はそのレースの裏側をお届けします。
12/31:開会式~最終ミーティング
ニューイヤー駅伝の開会式は大晦日の14時から行われます。
その直前の監督会議にて全チームの区間エントリーやスタート位置が発表され、緊張感が高まっていきます。
開会式終了後は宿舎に移動し、最後のミーティングを行います。
総監督・監督・コーチらからの訓示はもとより、ニューイヤー駅伝は走る区間によってスタート時間が大きく異なるため、このミーティングで起床時間、朝練習の時間、朝食の時間などを選手ごとに細かく確認し、レース当日への準備を進めていきます。
1/1:宿舎出発~スタート直前
元旦の6:30。日の出もまだの時間にスタッフは集合し、宿舎を出る準備をします。1区を走る髙橋優太選手を筆頭に、前半の区間を走る選手が続々と出発していきます。そしてこの出発の裏では瀬古総監督がラジオの生放送に電話出演。(話題は翌日の箱根駅伝の予想についてでした)
スタート地点となる群馬県庁のビルの中に設置された選手控室につくと、ライバルとなる他チームの選手たちも勢揃い。音楽を聞きながらストレッチをしたり、選手同士で談笑したりと緊張感が漂いつつもリラックスした雰囲気です。
この時間、瀬古総監督は毎年1区の選手の足とシューズに「しっかり最後まで走れますように」と念を込めます。
9時15分:レーススタート
今年は例年より気温も高く、空を高く感じるような晴天となりました。
上州名物の強風も、朝の段階ではそこまで強くなく、よいコンディションでレースを迎えることができました。
スタート地点に選手が整列すると、和やかな雰囲気が一変。徐々に選手たちの緊張感と集中が高まっていきます。
そしてついに号砲が!43人の選手たちが飛び出していきます!
1区~3区:3選手の快走でニューイヤー駅伝初の首位に立つ
駅伝で最も重要とされるのが1区。ここで出遅れてしまうとその後挽回するのが非常に難しくなります。特に2区のインターナショナル区間を走るビダン・カロキ選手は故障明けで調整が充分でなく、他の速い選手と集団で走ることが理想であると考えていたため、髙橋優太選手のミッションは「少なくともトップから10秒差でタスキを渡すこと」でした。
1区:集団の中で疾走する髙橋優太選手 各選手牽制し合ったためか、かなりのスローペースでレースが展開。
(1区の最初の1kmは3分で通過。一方で次の2区の最初の1kmは2分30秒台での通過だった)
髙橋優太選手はそのペースの中でレース中盤・終盤の2回ペースアップを仕掛け、トップから6秒差の7位でタスキを繋ぎ、見事なレース運びでミッションを果たします。
タスキを受けた2区のビダン・カロキ選手はすぐに2位集団に追いつき、理想としていた周囲の速い選手が作ったペースに合わせて走ることができました。
その一方で、すぐ横を走っていたコニカミノルタのポール・クイラ選手が沿道から飛び出してきた犬のリードに足をひっかけ転倒するというハプニングが起きました。
沿道での応援マナーについては再三注意喚起されていますが、今回こういった形で実害が出てしまったのはとても残念です。当のクイラ選手は転倒後もすぐに走り出し、見事な走りを魅せてくれました。
2区:駆け抜けるビダン・カロキ選手
そして、現地スタッフのスマホが社員からの連絡で震え続けた3区。
11月の予選は疲労骨折により欠場したチームのエース、上野裕一郎選手が超ハイペースで疾走し、ニューイヤー駅伝で初めて首位に立ちます。
10kmを27分18秒という、トラックの10,000mの日本記録よりも早いペースで独走。監督やコーチがレースを観戦する専用の部屋に、そのタイムが告げられた瞬間どよめきが起きるほどの快走でした。
3区:快走を見せた上野裕一郎選手
4区~7区:最高順位を目指しての粘りの走り
上野選手から首位でタスキを受けた4区の室塚健太選手。室塚選手は4度の駅伝経験のうち3度首位でタスキを受け取っており、プレッシャーのかかるポジションです。かつ4区は各チームのエースが並ぶ最長区間。追撃を受け順位を落とすものの、それに惑わされず粘りの走りを見せ強豪チームをスパートで交わし、4位でタスキをつなぎます。
4区:4位でタスキをつないだ室塚健太選手(写真左)
5区:安定感抜群の走りを見せる高橋憲昭キャプテン(写真右)
そして5区は安定感抜群、チームからの信頼も厚い高橋憲昭キャプテンが担当。元祖「山の神」ことトヨタ九州の今井選手の追い上げを受けながらも自らのペースでしっかりと走り続け、前を走る日清食品の選手を終盤で追い抜き6区の須河宏紀選手へとつなぎます。
終盤の6区・7区は若手選手でのリレーだったため、チームとしてもここにどうつなぐのか、に注目していましたが、高橋キャプテンが今井選手と僅差でゴールしたことにより、2人の若手選手はライバルチームの選手と並行して走ることができ、ペースがつくりやすい状況となりました。これが駅伝の難しさでもあり、面白さでもありますが「どの位置でどうやってタスキをもらうか」がレースの結果を大きく左右します。瀬古総監督も「この5区の粘りの走りでによって若手2人がいい位置で走れたことがポイントになった」と振り返ります。
6区:上位陣をしっかりと追走した須河宏紀選手(写真左)
7区:好走したルーキー、永井秀篤選手(写真右)
6区須河選手はトヨタ九州の選手と最後まで並走。向かい風が強い区間も相手の選手を風よけに使いながらしっかりと追走、ラストスパートを効かせて4位で7区担当の永井秀篤選手につなぎます。永井選手もライバル選手の後ろにつき、終盤勝負をかけるという戦略をとりましたが、中盤のペースアップについていくことができません。しかし6位のチームとのタイム差を広げる形で好走し、終盤2区間をルーキーがしっかりと締め、最高順位を更新し5位入賞を果たしました。
苦しいチーム事情の中、田幸監督が「ミスの無いレースができたことが結果につながった」と語るように、選手全員が想定以上のタイムで走り、チームにとって「ハッピー!」(瀬古総監督)な新年を迎えることができました。
これから選手たちは小休止ののち、来るべきマラソンへの出場に向けて合宿にはいります。選手たちはみなマラソンを視野に入れて1年間練習を行ってきました。その結果が、今回の駅伝での最高順位更新、ということだと思っています。
元旦から沿道で、そしてテレビの前でご声援をおくっていただいたみなさま、本当にありがとうございました!
これからも応援のほどよろしくお願いします!