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DeNAと住友商事の合弁会社であるDeSCヘルスケアが立ち上げた、健康情報を気軽にチェックできるアプリ「KenCoM(ケンコム)」。当サービスを導入した健康保険組合(以下、健保)の加入者情報をもとに、ユーザー個人にマッチした情報提供やアプリ内イベントを開催しています。サービス開始から2年がたった今、立ち上げに深く関わった大井潤(おおいじゅん)と椿昌一(つばきしょういち)に開始に至った背景、サービスの現状・今後の展望について訊きました。
▲DeSCヘルスケア株式会社 代表取締役社長 大井潤(右)、取締役副社長 椿昌一(左)
――さっそくですが、KenCoMのサービスについて教えてください
椿:KenCoMは「楽しみながら、健康に。」をコンセプトにした健康増進支援サービスです。健保の皆様にサービスを導入していただき、その加入者に向けて性別や健診結果、生活習慣に沿った情報を提供しています。個人の健康状態に合わせてレコメンデーションされた情報が届くので、無意識のうちに健康への危機感や改善に向けた行動を促すことができます。
――まさに自分の健康を知り尽くしたコンシェルジュのようですね。自分の生活に関連する情報が届くのが大きなメリットでしょうか?
大井:そうですね。また、健康診断の情報を手元でみられるサービスという点も大きなバリューのひとつです。毎年の健康診断で、結果をもらった直後は誰もが健康について思いをめぐらすと思いますが、紙の健診結果は紛失してしまうこともあるでしょうし、健診結果をもとに日々健康を意識し続けることは難しいですよね。KenCoMはアプリ上で健診結果を見ることができますし、結果をもとに自分に適した情報が毎日届くので、普段から健康を意識しやすくなります。
例えば運動不足の人には運動を意識させる記事が表示され、目についたら気になり、ひいては一駅分歩いてみるなどの行動につながる。つまり、意識変容から行動変容を引き出すサービスなんです。
椿:健診情報を契約している健保を通じて集めているのも特徴の一つですね。健保が活用しきれていない個人の健康情報を、加入者の手元に届けられるのも大きな魅力です。
大井:KenCoMの名前が"KenKo ReCommendation Media(健康レコメンデーションメディア)"からきているように、まず健康になるための情報をここから取り入れていただきたいです。また、KenCoMには他にも健康に関するゲームコンテンツもあるので楽しんでいただきたいですね。
――ゲーム要素はまさにDeNAのノウハウが活きてくるポイントですね。ゲームコンテンツを取り入れることで、ユーザー行動にどのような影響がありましたか?
大井:サービス開始から2年が経ちますが、約80%のユーザーに継続的にアプリを利用していただいています。アプリを立ち上げてまず目に入るのが歩数計ですが、自分がどのくらい歩いているか気になって、ついついアプリを開く方も多いようです。
――アプリサービスとしては驚異的な継続率ですね!
椿:歩数計に関連して、KenCoMで開催されているウォーキングイベント「みんなで歩活(あるかつ)」も注目のコンテンツです。イベント期間中(約1ヶ月)に職場でチームを組んで平均歩数を争うイベントなんですが、職場での会話のきっかけにもなっています。会社で加入する健保との取り組みだからこそできるイベントですし、職場というリアルな環境で与えられるピュアプレッシャーが健康への意識変容や行動変容に結びついています。個人の健診結果が提供されるサービスでありつつ、みんなで取り組むというのが行動変容につながるんだと実感しています。
大井:ほぼ毎日顔を合わせる職場だと歩いているかどうかがすぐバレてしまうから、サボるわけにはいかないですね(笑)。イベント結果をみると、普段歩く習慣のない層の平均歩数が約3,000歩増加していたり、またイベント終了後も平均歩数がイベント開始前より約1,000歩増加した事例もあります。こういったデータからもユーザーがKenCoMを使ってくれて、行動変容に結びついているのが見えるのが嬉しいですね。
イベント参加率も初回のイベントと比べて、今春に実施した2回目では約2倍に増えている点は、これまで培ってきたDeNAのノウハウが活きた結果ではないかと感じています。
▲豪華商品が当たる期間限定のキャンペーン。ユーザーからの評価も高い
椿:ユーザーからは、季節ごとに行うキャンペーンも人気ですね。決められた期間に「体重を5日間記録する」や「期間中10万歩歩く」など特定のミッションをこなすと、豪華商品がもらえる抽選の当選確率が上がるといったお祭りです。この期間のユーザーの健康への向き合い方が非常に積極的で、このモチベーションで取り組めば誰もが健康になるんじゃないかというほどです(笑)。
――ユーザーの反応はサービス運営のやりがいになりますね。現にユーザーでもあるお二人がオススメするコンテンツなどありますか?
▲歩数によってサッカー選手のキャラクターが成長していく「さんぽジスタ」
大井:「さんぽジスタ(サッカー型ウォーキングアプリ)」が好きですね。健保内のユーザー同士でランキングを競い合うのですが、このゲームっぽさはDeNAらしいコンテンツではないでしょうか。歩けば歩くほどキャラクターが成長するし、バッジやKenCoMポイントが付与されるのも好評です。
椿:KenCoM運営のコンテンツだけでなく、健保独自のポイントとしてKenCoMポイントを活用することもできます。ポイントが電子マネーやカタログギフトに交換できるのも、KenCoMを毎日使うインセンティブになりますよね。
――ユーザーが毎日使いたくなる工夫が詰まったKenCoMですが、どんな背景でサービスが始まったのでしょうか?
大井: 2014年頃、DeNAでは「MYCODE(遺伝子検査サービス)」などヘルスケア事業に取り組み始めた頃でした。その背景には、南場智子代表取締役会長がご家族の看病をされている中で、「病気になる前にもっと何かできなかったか。自分と同じ思いを他の人にはして欲しくない」という非常に強い思いがありました。我々としても社会保障が危機的な状況にある中、企業として一定の役割を果たしていく必要があると考えています。これらの思いをDeNAの強みであるITやサービスを使って実現できないかと考え、ビジネスパートナーを探していました。
椿:当時、私は住友商事で健保向けのサービスをやっていたのですが、なかなか思うようにグロースできない状況でした。そこで、DeNAならではのユーザー目線でのサービスの構築に興味があり話をすることにしました。
大井:当時はヘルスケア事業でMYCODEをリリースした時でしたが、より多くの人に提供できるサービスを作りたいと考えていました。ただBtoCでゼロから健康な人に対して、健康を維持しましょうというヘルスケアサービスを提供しても、大勢に届けるにはかなりの時間がかかるのではないかと考えていました。そこで、健康情報等を保有している健保を通したBtoBtoCのモデルによるサービス提供を考えたのですが、DeNAには健保についての知見もなくどうしようかと思っていました。
その一方、DeNAにはより多くの人が使ってくれるサービスを構築していくノウハウはあるので、住友商事の持っている健保への知見とビジネスを組み立てる力とで協力しあえないか、ということで椿さんと話をしました。
椿:お互い違う視点でサービスを検討できただけでなく、健保業界も厚労省が打ち出したデータヘルス計画(ヘルスケア情報をデータベース化し保健事業に活用する動き)を発端に、ICTを活用した取り組みをしていこうじゃないかというタイミングだったことも大きいです。
大井:「サービスを通じて健保組合員が健康になるようなきっかけ作り、きっかけができたらそれをサポートしてく」という理念はサービス開始から2年たった今もお互いの変わらない共通認識ですね。
――ユーザー目線の運営はユーザーに長く使っていただける秘訣だと思いますが、契約健保の存在も重要ですよね。よりよいサービス運営のために健保向けに行っていることはありますか
椿:現在70以上の健保にKenCoMをご利用いただいています。多くの健保に継続利用していただいているのですが、導入後に業界の情報交換や利用促進への取り組みをさせていただいていることは大きいのではないでしょうか。健保業界に切迫した財政問題がある現状、組合員が健康になり健保の負担が減るという全員が幸せになる仕組みを生み出したいなと。そういったことからも、健保と協力しながら健保業界を変えていこうという取り組みをしています。
大井:健保から教えていただくこともたくさんありますし、仲間として一緒に健保業界を変えていこうという両者の思いが結果になり始めていると感じます。また、その根底には企業、健保、KenCoMが、お金には変えられない組合員の健康を維持していきたいという強い共通認識があることも忘れてはいけませんね。
――最後に、今後の展望について教えてください
大井:まずは、これからもっと多くの健保の組合員に使ってもらうサービスにしていくということです。データもさらに溜まっていくので、それを健康に結び付けられるようにしてくことも重要だと思っています。今後、健保だけでなく健診機関向けにサービスをトライアルで始めたり、生命保険会社へのプラットフォームを提供するなど、さらにより多くの人の健康増進に貢献できるサービスにしていきたいと考えています。
椿:KenCoMがいい刺激になって、皆さんが自分の健康を知るきっかけにしていきたいです。DeNAが培ってきたユーザーデライトを体現しているサービスをより多くのユーザーに使っていただき、より多くの人を健康にしていきたいです。
――ありがとうございました
KenCoM公式サイト:https://kencom.jp/
DeSCヘルスケアについて:https://www.desc-hc.co.jp/