キリンホールディングス株式会社(所在地:東京都中野区、代表取締役社長 磯崎 功典、以下キリン)と株式会社ディー・エヌ・エー(所在地:東京都渋谷区、代表取締役社長兼CEO 守安 功、以下DeNA)の子会社である株式会社DeNAライフサイエンス(所在地:東京都渋谷区、代表取締役社長:米山 拡志、代表取締役医師:三宅 邦明、以下DeNAライフサイエンス)は、初めて日本人を対象とした免疫関連遺伝子と眼症状の関連を網羅的に検討する候補遺伝子アプローチと共に、同症状と関連する遺伝要因の網羅的探索(
GWAS:ゲノムワイド関連解析)を実施しました。
この研究成果については、2020年4月に開催された「Human Genome Meeting 2020」、同年9月25日より開催された「第20回日本抗加齢医学会総会」において発表しました。
<研究目的>
近年、加齢黄斑変性等の眼疾患への炎症関与が報告され、炎症を制御する免疫応答が眼の健康に影響する可能性が示唆されている。そこで、加齢に伴う眼症状と免疫の関連を探索するために実施した。目薬やルテイン摂取などの緩和・予防効果が見込まれる方法がある中、「健康に関して気にしていることについて」をテーマとした調査(※)によると、あらゆる健康課題の中で「眼・視力」は最も関心が高く、根本的な解決が望まれている。一方、最新の科学ではヒトの身体の様々な部位で健康維持に関わっている免疫が眼においても関与していることが示唆されつつある。今回の研究では日本人の眼症状と免疫因子の関りを遺伝子の観点から疫学的に調査し、その裏付けを探索したものである。
※10,000人を対象にしたWeb調査(キリン調べ)
<研究方法>
DeNAライフサイエンスが提供する一般向け遺伝子検査サービス「MYCODE」に登録している日本人1998名が本人同意の上で研究に参加。眼症状である眼精疲労、ドライアイ、老眼に関するアンケート調査を実施した。また参加者の遺伝情報である約75万SNP(※)における3つの遺伝子(IL1β、IL10、NLRP3)を対象に、免疫、特に炎症との関連性を解析した。
※ヒトが保有する約30億の塩基対の配列には人種や個人間で異なる部分があり、1つの塩基だけが別の塩基に置き換わっているものをSNPという
<研究結果>
本研究より、眼精疲労や老眼の症状と炎症に関わる免疫応答に関連がある可能性が示唆された。臨床研究等により、これら眼症状と眼疾患との関連も含め、免疫と眼の健康に関与する遺伝子やそのメカニズム解明に繋がることが期待される。
【「Human Genome Meeting 2020」発表概要】
演題 : 日本人の眼と免疫に関する調査研究
発表日 : 2020年4月5日(日)〜8日(水)
発表場所 : Web開催
発表者 : 吉村慶人・小林圭介
ホームページ :
http://hugo-hgm2020.org
【キリンの取り組み】
キリンは長期経営構想「キリングループ・ビジョン2027」を策定し、「食から医にわたる領域で価値を創造し、世界のCSV(※)先進企業になる」ことを目指しています。その実現に向けて既存事業の「食領域」(酒類・飲料事業)と「医領域」(医薬事業)に加え、キリングループが長年培ってきた高度な「発酵・バイオ」の技術をベースにして、人々の健康に貢献していく「ヘルスサイエンス領域」を事業として立ち上げ育成しています。特に未病や予防の研究に力を入れており、免疫研究を35年続けてきました。その中でキリングループの保有するKW乳酸菌(Lactobacillus paracasei KW3110)が免疫細胞のマクロファージを活性化させ眼の疲労感を軽減する機能があることを発見し、機能性表示食品「iMUSE eye KW乳酸菌(イミューズアイ KW乳酸菌)」を2019年11月に発売しました。
※ Creating Shared Valueの略。お客様や社会と共有できる価値の創造。
【DeNAのヘルスケア領域の取り組み】
DeNAでは、ヘルスビッグデータを用いた健康長寿社会の実現を目指し、様々なヘルスケアサービスや共同研究を展開しています。一般向け遺伝子検査サービス「MYCODE」を受けた会員が同意した上で研究に参加できるコミュニティーを構築し、科学の発展に寄与する「community-derived science」を推進する研究プロジェクト「MYCODE Research」に2015年より取り組んでいます。
参考 :
https://healthcare.dena.com/projects/researches