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株式会社ディー・エヌ・エー(本社:東京都渋谷区、代表取締役社長 CEO:岡村 信悟)のグループでヘルスケア事業を展開するDeSCヘルスケア株式会社(本社:東京都渋谷区、代表取締役社長:瀬川 翔、以下DeSCヘルスケア)とクリニカルリサーチ事業を展開する株式会社CLINICAL STUDY SUPPORT(本社:愛知県名古屋市、代表取締役社長:高梨 健、以下CSS)との共同研究として国際医薬経済・アウトカム研究学会ヨーロッパ部会における大会(ISPOR EU 2024)にて、死亡率およびアルツハイマー型認知症の実態についてDeSCヘルスケアが持つヘルスビッグデータの有用性を示す2本のポスター演題発表(「①DeSCデータから算出する死亡率と全国統計との比較」および「②アルツハイマー型認知症の実態」概要は以下)を行いましたのでお知らせします。
疫学研究における死亡情報は、がん領域等でも重要なアウトカムにも関わらず、日本の診療報酬明細(保険請求データ)から、死亡情報を正確に把握することは困難であり、死亡率を減少させるためのエビデンス構築にかかる大きなリミテーションとなっていた。本研究では、DeSCデータにおける保険離脱理由としての死亡情報と、全国統計(日本の厚生労働省が報告)の死亡率の同等性を示すことにより、死亡情報を活用したエビデンス構築に寄与できる可能性があるのではないかと考察した。その結果、DeSCデータと全国統計の死亡率が概ね一致する傾向がみられた。今後、DeSCデータを活用し、健康寿命の延伸や死亡率低下に資する健康行動や保健事業におけるサービスの効果が明らかとなることが期待される。
<目的>日本の診療報酬明細から、病院外での死亡情報を正確に把握することは困難である。DeSCデータは、保険離脱理由としての死亡情報を提供しているが、そのデータの代表性は評価されていなかった。全国統計の死亡率と比較を行うことで、その同等性を評価することとした。
<方法>健保組合 (健保:EHI)・国民健康保険 (国保:NHI)・後期高齢者医療制度 (後期高齢者:LSEHS) の診療報酬明細から構築されているDeSCデータを用いた。本研究では、2014年4月から2023年8月までの保険離脱理由情報のある国保と後期高齢者の情報を使用した。死亡率は、2022年から2023年にかけて、性別と年齢別の死亡者数を対象集団の総数で除し、同時期の全国統計のデータと比較した。
<結果>
・DeSCデータは、国保は8,592,267人、後期高齢者は5,425,110人を提供している。女性はそれぞれ52.2%と58.1%であった。
・2022年から2023年の間に、国保で0.6%、後期高齢者で5.8%の死亡が観察された。DeSCデータから算出した性別・年齢層別に層別にした死亡率は、男女ともに、すべての年齢層で全国統計と同様の傾向を示した(Figure3)。
本研究により、性別・年齢によって層別にした死亡率は、DeSCデータと全国統計で傾向が同等であることが示された。このことから、DeSCデータの死亡情報は比較的信頼性が高く、日本のリアルワールド研究に利用できる可能性が示唆された。
超高齢社会が進む中で、高齢者疾患の疫学研究は非常に重要であるが、利用可能なリアルワールドデータは少なく、研究も不十分である。本研究では、DeSCヘルスケアが保有する後期高齢者の情報を用いて、アルツハイマー型認知症(以下AD)の有病割合、ADの治療実態、直接費用を確認し、DeSCデータが高齢者疾患でも利用可能かを検討した。この結果、DeSCデータは、ADを含む高齢者疾患の疫学研究にも利用し得ることが示された。
<目的> 本邦において、従来、大規模なリアルワールドデータを用いた認知症領域の研究報告は多くない。DeSCデータは、健保組合 (健保:EHI)・国民健康保険 (国保:NHI)・後期高齢者医療制度 (後期高齢者:LSEHS) の診療報酬明細データを提供しており、特に75歳以上の高齢者人口のカバー率は20.5%である。今回は、日本の認知症患者の特徴について記述することを目的とした。
<方法> 後期高齢者のデータを用いて、2014年4月から2023年3月までの間にICD-10コード※2(G30/F00)を用いて、患者が初めてアルツハイマー型認知症と診断された月を特定し、アルツハイマー型認知症と診断された患者数、追跡期間、抗認知症治療薬の処方実態について記述的にまとめた。
<結果>
・2014年から2022年の間に後期高齢者医療制度に加入している540万人について、847,345人(15.7%)がアルツハイマー型認知症と診断され、追跡期間の平均(標準偏差:SD)は45.9(24.0)カ月であることがわかった。
・アルツハイマー型認知症と初めて診断された平均年齢(SD)は、84.4(6.0)歳。66.7%が女性であった。
・最も多かった併存疾患は、脳血管疾患(39.1%)、うっ血性心不全(33.3%)、慢性肺疾患(21.3%)であった。
・全体の42.6%が頭部MRIを受けていたが、認知行動療法とリハビリテーションの利用は、アルツハイマー型認知症発症後のどの時点でも1%未満であった。
・後期高齢者におけるアルツハイマー型認知症の有病割合は年間約10%で、調査期間を通じて85歳未満(10%未満)、85歳以上(20%以上)であった(Figure2)。
・抗認知症薬による治療を受けているアルツハイマー型認知症患者の割合は、2014年の76.0%から2022年には68.3%に減少した。
・最も多く処方された抗認知症薬は、2014年から2022年にかけて、ドネペジル(49.5%-38.1%)、メマンチン(25.7%-22.0%)、ガランタミン(12.7%-9.7%)の順であった。2014年から2022年にかけて、ドネペジルの割合は減少し、メマンチンの割合はわずかに増加した(Figure3)。
・2014~2022年の年間直接費用の中央値は127,295円(第一四分位数:52,420、第三四分位数:440,260)。入院費は年間1,177,750円(第一四分位数:547,520円、第三四分位数:2,421,180円)であった(Figure4)。
<結論> 本研究の結果、日本の認知症患者における有病率は、過去の研究で報告されたものとほぼ同等であった。DeSCデータは、日本で利用可能なデータベースの中で、高齢者を広くカバーしており、これらの年齢層を対象とした研究を行う上で貴重なデータソースであると言える。
※1:出典:全国統計(厚生労働省の報告する平成30年から令和4年までの簡易生命表の概況)
https://www.mhlw.go.jp/toukei/saikin/hw/life/life18/index.html
https://www.mhlw.go.jp/toukei/saikin/hw/life/life19/index.html
https://www.mhlw.go.jp/toukei/saikin/hw/life/life20/index.html
https://www.mhlw.go.jp/toukei/saikin/hw/life/life21/index.html
https://www.mhlw.go.jp/toukei/saikin/hw/life/life22/index.html
※2:ICD-10コード:死亡や疾病のデータの体系的な記録・分析・解釈及び比較のため、世界保健機関(WHO)が作成した分類コードのこと。
ISPOR EU 2024詳細
https://www.ispor.org/conferences-education/conferences/upcoming-conferences/ispor-europe-2024/
今後ともDeSCヘルスケアは、リアルワールドデータを活用した研究を支援し、エビデンス創出を促進することで、生活者の健康寿命の延伸と医療費適正化の課題解決に貢献していきます。