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当社グループでヘルスケア事業を展開するDeSCヘルスケア株式会社(以下、DeSCヘルスケア)のデータベースを活用した高額療養費制度の利用実態に関する分析結果(以下、本分析)が、各種メディア(日本経済新聞、読売新聞、毎日新聞、朝日新聞、NHK NEWS WEB等)に掲載されましたのでお知らせします。
本分析は、年齢階級別や疾患別のデータを含むDeSCヘルスケアのデータベースの特徴を活用し、東京大学大学院の五十嵐中特任准教授が医療費負担の実態を明らかにし、高額療養費制度の制度改定(自己負担上限額の引上げ)に関して提言を行いました。
1.データ分析の概要
高額療養費制度の利用者の特性を分析し、制度の利用率そのものは若年層では低いものの、適用者の中での多数回該当者の割合は高く、制度適用による一人あたりの自己負担軽減効果も大きいことをまず明らかにしました。さらに、2022年度のデータを使って「現行の高額療養費の適用基準」と「制度改定後の引き上げられた適用基準」の双方をあてはめて比較した場合、高額療養費制度が全く適用されなくなる患者が8万4千人にのぼることを明らかにしました。
2. 主な分析結果
<現行の高額療養費制度利用者に関する分析>
2022年度のレセプトデータを用いて、同年度の224万人 (健保54万人・国保170万人)のデータから、高額療養費制度の利用者として11.6万人 (健保1.2万人・国保10.4万人)を抽出。このデータを用いて、自己負担減少額や疾患・多数回該当の有無などを分析した。
・現役世代(70歳未満)の高額療養費制度利用者のうち、43%が「多数回該当」(1年間に4回以上制度を利用)
・高額療養費制度適用者の所得分布は、同じ年齢階級でも国保と健保で大きく異なる*
・50歳代の多数回該当率が最も高く、約5割に達する
・自己負担の軽減効果は大企業の健康保険組合で平均38万円、国民健康保険では約53万円
・がん患者の自己負担軽減額は平均68万円と大きく、特に若年層の負担軽減額が大きい
・5~9歳の男児では自己負担軽減額が平均300万円超に達するケースも確認
*例えば40歳台では、国保では所得下位の2区分(区分エ・区分オ)が85%を占めるが、健保では所得上位の3区分 (区分ア・区分イ・区分ウ)が75%を占める。
<負担上限額引き上げの影響に関する分析>
同じ2022年度のデータについて、「現行の高額療養費の適用基準」と「制度改定後の引き上げられた適用基準」の双方をあてはめ、制度改定の影響を分析。データベース内の分析に加え、70歳以下の組合健保・国保の被保険者全体に対する拡大推計 (組合健保2800万人・国保2100万人)も実施した。全国推計での現行制度下での高額療養費利用者は、約186万7千人となった。制度改訂によって自己負担上限が引き上げられた場合、負担額が変わらない患者は50.5万人 (27.0%)であった。影響がある患者の内訳は、「適用回数は変わらないが、自己負担金額が上昇する」患者が122.5万人 (65.6%)、適用回数が減少し、自己負担金額も上昇する患者が5.3万人 (2.8%)、完全に高額療養費制度の対象外になる患者が8.4万人 (4.5%)であった。
3.五十嵐中特任准教授のコメント
「高額療養費制度の恩恵が、高齢者では広く浅く・若い人では狭く深くなることは、公的統計からも推測ができました。しかし疾患・保険種別・年齢階級で分けられたデータは、これまでほとんど存在しませんでした。高額療養費で守られる患者は、いわばもっとも弱い立場の患者です。現在の適用状況の実態と、引き上げによる影響を迅速に解析できたことで、問題点を広く伝えることができました。DeSC社のデータを利用した研究では、高額療養費に加えて、通常の疾病負担分析やセルフメディケーションの利用動向に関する研究も行っています。データベースを多角的に活用しつつ、公的医療制度の機能を可能な限り維持するために、メリハリを付けたシステムを提案していきます。」
DeSCヘルスケアは、今後もリアルワールドデータを活用した研究を支援し、エビデンス創出を促進することで、生活者の健康寿命の延伸や効果的かつ効率的な保健事業の実施、医療費適正化の課題解決に貢献していきます。