loading
株式会社ディー・エヌ・エー(本社:東京都渋谷区、代表取締役社長兼CEO:岡村信悟、以下 DeNA)は、株式会社 E&H production(本社:東京都中野区、代表:朴性厚、以下 E&H)と連携し、アニメーション制作プロセスにおけるDXの技術検証を目的とした共同開発プロジェクトを開始したことをお知らせします。
本プロジェクトでは、アニメーション制作の主要工程に対応した、包括的なDXのアプローチを検証していきます。複数の開発領域での技術検証を進めている中で、2025年10月には、コンテ撮(Vコンテ制作)及び動画編集の効率化と品質向上を実現する「簡易撮影ツール」の試験導入を予定しています。
アニメ産業の課題解決やさらなる発展に寄与できるよう、両社で意見を出し合い、制作プロセスの改善やクリエイターの創造性を高める環境づくりに向けて取り組みます。
アニメーション制作は、豊かな想像力と創造力によって生み出される、日本が誇る成長産業の一つです。しかし、長時間労働の常態化、制作費の高騰、技術革新の遅れや技術格差など、アニメ制作現場ではいくつもの課題に直面していることが指摘されています。
DeNAとE&Hは、これらの課題を克服し、クリエイターがより創造的な活動に集中できる環境を整え、その創造性を最大限に引き出すためのDX環境の構築に挑戦します。本プロジェクトでは、DeNAのテクノロジーとE&Hのクリエイティブな才能を融合させ、アニメーション制作における生産性とクオリティの向上を同時に実現することを目指します。
日本のアニメ制作では作業工程が細かく分業化されているため、工程間の連携が複雑化しやすく、ITツールなどによる効率化が進みづらい状況があります。本プロジェクトでは、アニメ制作の主要段階に対応した包括的なDXのアプローチを検証し、ツールの開発を進めています。制作現場からの課題やニーズをもとに、DeNAがその解決に向けたツールを企画・開発し、E&Hがツールの実際の現場での使いやすさなどを検証しフィードバックします。これらのプロセスを繰り返しながら、クリエイターの価値観や権利を第一に考え、真に活用できるツール開発を目指します。
<開発領域のイメージ>
⚫︎簡易撮影領域
…コンテ撮(Vコンテ制作)等の効率化をサポートするwebツールの開発・検証
⚫︎ラフ・コンテ領域
…ラフスケッチからボーン構造(※1)を自動生成し、アニメーション制作の初期段階を効率化
⚫︎作画領域
…第二原画(※2)の作業負担軽減と品質向上を実現
⚫︎その他の領域
…汎用キャラクターの動作生成、背景制作におけるさまざまな技術の開発・検証
※1 ボーン構造:CGキャラクターの中に配置される目に見えない「骨格」のこと。これを動かすことでキャラクター全体の動きを制御します。
※2 第二原画:アニメ制作で「二原」とも呼ばれる工程のこと。第一原画(ラフスケッチ)を清書し、必要に応じて影や細部を加えたりして、動きを正確に表現します。
複数の開発領域での技術検証を進めている中で、技術検証・開発が一定進んでいる「簡易撮影ツール」について、2025年10月に試験導入を開始できる段階となりました。このツールは、絵コンテをもとに簡易的に映像化する「コンテ撮(Vコンテ制作)」やカットの順番や長さなどを調整する「編集」の工程に使用されるもので、「イラスト制作機能」「web撮影ビューワー機能」の2つの機能で価値を実現していきます。実際の作画や美術が完成する前に、仮映像をもとにスタッフ間の共通認識を形成することで、制作の効率化・高品質化・トラブル回避につながる重要な工程です。
しかし、多くのアニメ制作スタジオでは、「コンテ撮」作成のために外部の映像編集会社に発注することが多く、前後工程間のタイムラグやコミュニケーションロスが起こる可能性もあります。簡易撮影ツールの導入により、制作スケジュールの短期化ができるだけでなく、監督自身が演出をイメージしながら手元で編集することが可能となり、クリエイティブな仕事により集中できるようになります。
2025年10月の試験導入による効果検証を踏まえて、2025年度内には実際のアニメ作品への実用を目指しています。また、他の開発領域でのDXツールの技術検証・開発についても、並行して取り組みを進めていきます。
試験導入を予定している「簡易撮影ツール」の使用工程について説明します。
①絵コンテ作成工程
イラスト制作機能を用い、ペンシル機能やオニオンスキン機能などを活用してイラストを制作。イラスト作成後は絵コンテのフォーマットでデータ出力も可能。(現状はタブレットでの使用を想定)
②タイムシート作成工程
タイムシートを書くように、尺やボールド指示などを画面上部のタイムラインエディタに入力。
③線撮工程(絵コンテを元に最初期のラフなアニメーション動画を制作する工程)
タイムラインエディタで入力したボールド指示や、タイムコード、カメラワークなどを含めた映像を、従来のVコンテに相当する映像として随時確認可能。
④編集工程
web撮影ビューワー上でデータがリアルタイムで自動同期されるため、編集会社は直接ビューワー上で編集作業を実施可能。
⑤オフライン編集工程
web撮影ビューワー上で、従来のVコンテに相当する映像をそのまま再生できる。そして他の工程で利用できるよう、動画やタイムシート形式でのエクスポートが可能。
リアルタイムで非同期に他制作関係者へ共有し、編集会社とのデータ連携や、オフライン編集時に手作業で行うタイムシートへの差分更新作業を大幅に削減。
日本の産業/ものづくりにおいてアニメーション事業はグローバルで勝負できる数少ない資産であり、世界中で認知され多くのファンに愛されています。それにも関わらず作り手の作業環境におけるデジタル技術の導入や効率化は進んでいないのが現状です。
これを解決する鍵となるのがアニメ制作DXです。E&Hさんとの連携によってDX化を進め、制作フロー全体の効率化を目指していきます。クリエイターファーストの考えに基づき、いまよりも更にクリエイティブなことに時間を使えるよう、DeNAグループが持つ技術を総動員して、アニメ制作DXの推進に取り組んでまいります。
昨今の日本のアニメーション業界は、デジタル作画をはじめとするデジタル業務が増えていく一方で、制作工程が複雑化し、タスクが増大している傾向にあります。業界が培ってきた理念と技術を大切に守りながらも、DXによる効率化と無駄の削減を進めることで、この状況を変革の機会に変えることができると考えています。
適正な人数で、効率的な制作工程を実現し、クリエイターが1本でも多くの作品を生み出していける、それが弊社が理想とするアニメーション制作の形です。
新たな技術やシステムの導入により、クリエイター一人ひとりの可能性を最大限に引き出し、アニメーション制作がより良い方向へ進化できる技術推進に期待しています。
DeNAではプロトタイプのテストと評価を繰り返し、具体的な成果に基づいた継続的なツールの改良を進めていく予定です。本プロジェクトによりアニメーション制作業界全体に貢献し、より革新的なアニメーション作品が生まれることに寄与したいと考えます。
本プロジェクトの活動にご興味をお持ちのアニメーション制作会社、アニメーション業界関連会社の方は以下の窓口よりお問い合わせください。
【お問い合わせ先】(アニメーション制作会社様・アニメーション業界関連会社様向け)
株式会社ディー・エヌ・エー エンターテインメント開発事業本部
「アニメ制作DXプロジェクト事務局」
https://forms.gle/y4KVKqLfaQJqbae87
E&H productionはアニメーションを中心に、新たな価値を創造するスタジオです。社名の「E=Entertain(人を楽しませる)」と「H=Human(人間、人間的な)」には、人を楽しませるのはみずからも楽しむこと、それを作るのは人と人の絆である、という意味が込められています。「呪術廻戦(第1期)」「劇場版 呪術廻戦 0」などを手掛けてきたアニメーション監督の朴性厚によって2021年に設立されました。制作実績には「NINJA KAMUI」「ラーメン赤猫」「BULLET/BULLET」などがあります。https://e-h-pro.co.jp/
エンターテインメント
エンターテインメント
スポーツ・スマートシティ