ヘルスケア

健康長寿社会の実現を目的としたゲノム研究プロジェクト 「MYCODE Research」2021年共同研究・事業活動 総括レポート

研究事例17件のうち2件が初の日本人対象ゲノム研究

2021年12月15日

 株式会社ディー・エヌ・エー(本社:東京都渋谷区、代表取締役社長兼CEO:岡村 信悟、以下DeNA)の子会社である株式会社DeNAライフサイエンス(本社:東京都渋谷区、代表取締役社長:米山 拡志、以下DLS)は、一般向け遺伝子検査サービス「MYCODE」の会員約11万人のうち約9割の研究参加同意によって行う、健康長寿社会の実現を目的としたゲノム研究プロジェクト「MYCODE Research(https://mycode.jp/survey/research)」で2021年に実施した活動総括レポートをまとめました。

 2021年の実施研究事例※は、継続中の研究を含め17件で、累計6万名のMYCODE会員が研究に参加しました。また新型コロナウイルス感染拡大に伴い緊急事態宣言下に実施した、独自のユーザーアンケートを用いた研究成果の学会発表も実施しました。
 なお、これらの研究成果は対外発表だけでなく、研究協力をいただいたMYCODE会員に向けてメールや会員ページを通じて報告し還元しています。
 MYCODE Researchは今後も、健康長寿社会の実現の推進となる研究活動・事業発展を目指します。

※2021年に「研究計画」「データの取得」「データの解析」「研究成果の発表」のうちいずれかを実施したもの

【MYCODE Researchについて】
 2015年に開始したゲノム研究プロジェクトMYCODE Researchでは、MYCODE会員利用者約11万人のうち、約9割の方に研究参加同意をいただいており、インターネットを活用することでユーザーコミュニティの個人が自らの同意の下で研究に参加して科学の発展に寄与できる、“Community-derived science”が実現しています。
 研究参加者の募集において、一般的には数ヶ月かかるのに対し、MYCODE Researchでは数日間で最大2,000名規模での募集が実現できており、さらに試料提出やアンケート回答においても参加者の意欲が高いためタイムラグや回収漏れが少ないことも特長です。インターネットの活用による迅速かつ大規模な募集力とデータ回収率において高い評価をいただいており、開始以来これまで累計約20件のアカデミアや企業との共同研究を実施しています。

[インターネットを活用したユーザー参加型のゲノム研究「MYCODE Research」体制]

【主な活動報告】
1.キリンホールディングス株式会社との眼の症状と免疫の関係についての共同研究が科学誌「Scientific Reports」に掲載
 昨年より実施していた日本人を対象とした加齢を伴う眼の症状と免疫関連遺伝子含むゲノム全体に対する網羅的探索(GWAS:ゲノムワイド関連解析)に関して、2021年5月3日に科学誌『Scientific Reports』にオンライン掲載されました。
 本研究では、MYCODE会員のみなさまを対象としたウェブ調査結果とゲノムとの関係性を解析することにより、初めて日本人の12の遺伝子座位と眼の症状との間の関連を明らかにすることができました。また今回、既存の回帰分析を基とした手法に加え、多変量解析の一種である構造方程式モデリングを用いた解析を行うことで複雑な眼の症状の遺伝的な背景に関する理解を進めることができました。これらの結果は将来的に眼精疲労などの予防や治療などに役立つことが期待されます。

<論文詳細>
・タイトル:A web-based survey on various symptoms of computer vision syndrome and the genetic understanding based on a multi-trait genome-wide association study
・著者名:Yoshimura, K., Morita, Y., Konomi, K. et al.
・DOI:https://www.nature.com/articles/s41598-021-88827-y

2.協和キリン株式会社と遺伝子ネットワーク解析技術を用いた創薬研究開始
 DLS独自の遺伝子ネットワーク解析技術*を用いた創薬研究に関する契約を協和キリン株式会社と締結し、新たな創薬コンセプトの創出を開始しました。

<遺伝子ネットワーク解析技術とは>
個々の遺伝子に着目するのではなく遺伝子間の関係性を基にしたネットワークを利用し、種々の課題を解決する手法です。例として、遺伝子発現解析結果から導かれる結果を遺伝子ネットワークとして再構築することで、その生物学的意味や創薬標的遺伝子の探索を行います。
プレスリリース:https://dena.com/jp/press/4746

3.ウェブアンケートを活用して、日本人集団のストレス症状や食行動に関わるSNPを発見〜第71回米国人類遺伝学会にてポスター発表〜

MYCODE会員のウェブアンケートがゲノム研究に有用であることを確認
 MYCODE Researchでは、様々なウェブアンケートを実施し、遺伝情報と組み合わせて解析することで、まだわかっていない関連SNPの探索に挑戦しています。今回、最大53,000名の研究同意の得られた会員を対象に、網羅的な解析を試みた結果、全部で144もの関連SNPの同定に成功しました。従来は診療情報を用いて研究されてきた項目(LDLコレステロールなどの血液検査値、ノロウイルス感染など)の関連性が再現されたことから、MYCODE Researchのウェブアンケートが、ゲノム研究に活用できることが示されました。一般市民の研究協力が、今後の医学・生命科学の発展に重要となっています。

日本人集団のストレス症状や食行動に関わるSNPを発見
 今回の研究で8つの新規の関連SNPを発見しました。そのうち3つは、アルコール分解酵素であるALDH2上のSNPであり、果物の摂取頻度、菓子などの買い置き行動、睡眠愁訴の一つである中途覚醒との関連が認められました。また、ストレス反応のうち、イライラ感や食欲不振に関わるSNPや、日中の過度の眠気や入眠障害に関連するSNPを新規に同定し、第71回米国人類遺伝学会にてポスター発表を行いました。
参考:https://www.ashg.org/meetings/2021meeting/

4.新型コロナウイルス感染症による生活様式、行動、心理状態の変化に関する調査研究
 2020年度に「MYCODE」会員のみなさまを対象として実施した、新型コロナウイルス感染症(以下COVID-19)の生活への影響とストレスや行動についてのアンケート調査結果を解析し、研究成果を2021年12月に開催される第80回日本公衆衛生学会総会にて発表します。

<調査概要>
・調査期間:2020年9月4日~12月13日
・調査対象:MYCODE会員
・調査方法:メールマガジン会員向けインターネット調査
・有効回答数:2,157件

 COVID-19感染拡大下において高いストレスを感じている人、また、COVID-19に対して強い恐怖感を感じている方は男性よりも女性に多いこと、COVID-19の流行を受けて抑うつ感の増大を感じる方が増えたこと等が確認されました。また、COVID-19に対する恐怖感を強く感じている方は、身体面にも影響を受けており、その背景には、ストレス軽減効果も期待される身体を動かす行為よりも、健康の情報・知識を増やす行為に注力していることが認められました。さらに、感染予防行動とゲノムとの関連解析の結果からは、感染予防行動と関連のあるSNPが確認されました。COVID-19感染対策や感染拡大における強いストレスに対する解消策への応用が期待されます。

詳細結果:https://mycode.jp/my/research/results/stress-covid19

【総括】
 健康長寿社会の実現を目的としたゲノム研究プロジェクトMYCODE Researchは、サービス開始から7年を経て、多くの研究成果をMYCODE会員のみなさまや社会に還元することができるようになりました。2021年の研究活動として特筆すべきは、MYCODE Researchの最大の強みである約10万人分の日本人ゲノムプラットフォームを生かした研究に加え、DLS独自の遺伝子ネットワーク解析技術を創薬研究に活かす取り組みを開始したこと、インターネット活用による迅速かつ大規模な募集力とデータ回収率だからこそ実現した、時勢に即したCOVID-19研究に取り組んだことです。この成果として、国内外の学会で発表や学術論文への掲載に繋げることができました。

 研究以外では、健康意識が高く知的好奇心の強いMYCODE会員のみなさまとともに、研究成果に基づいた新規事業化を伴走させていただく事例が増え、取り組みが本格稼働したことも2021年の特徴の一つでした。
 日本人という単一民族のゲノムを保有するユニーク性、研究や事業化検討への参加に意欲的なMYCODE会員のみなさまとともに、R&Dをベースにしながらも、DeNAとしての強みを活かしながら広く社会に貢献し健康長寿社会の実現の推進となる研究活動・事業発展を目指していきます。