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川崎ブレイブサンダースでは、オンラインカードゲーム「PICKFIVE(ピックファイブ)」を2022年2月に正式リリースしました。iOSやAndroid搭載スマートフォンブラウザから、試合で活躍する選手を予想する遊びです。NFT(Non-Fungible Token:非代替性トークン)を用いることで、唯一無二のトレーディングカードやファングッズの要素も兼ね備えています。
新型コロナウィルス感染拡大の影響により変化する顧客ニーズへどう向き合うのか、新しい観戦体験の創出にNFTをどう活用するのか。PICKFIVEリリースの背景や展望をDeNA 川崎ブレイブサンダース事業戦略マーケティング部 藤掛直人に聞き、紐解いていきます。
以前、スタジアム観戦以外での「ファンづくり」について川崎ブレイブサンダースのSNS戦略を紹介しましたが、今回のPICKFIVEは、空白だった観戦中の体験価値の最大化を目指した試みです。
シーズンを通して、常にどちらが勝つか予想できないような接戦がおこなわれているわけではなく、逆転の見込みが薄い展開は往々にしてあるものです。アリーナ観戦であれば演出や熱気でカバーできますが、リモート観戦の場合は観戦への集中力や熱量が途切れてしまう要因となります。
他に娯楽が溢れるリモート環境で、観戦を楽しみ続けていただくにはどうするべきか。特に、コロナ禍でリアル観戦ができない層が増えてきている状況において、チームの勝敗や試合展開に左右されがちだった観戦体験に課題感を持ち始めていました。
そこで、リアルでの観戦やリモート観戦に関わらず、ファンには常に熱狂を届けたい、今まで以上に観戦体験を楽しんでいただきたいという思いから、ファンタジースポーツの導入に踏み切りました。
ファンタジースポーツは歴史のある遊び方で、実在するプロスポーツ選手を選んで活躍予想をするシュミレーションゲームです。自分が編成しておいた選手が実際の試合で活躍すると、ポイントへ連動される仕組みです。
リーグ全体から選手を選べるのが一般的ですが、敢えて川崎ブレイブサンダース内に限定して設計したのが、「PICKFIVE」です。リーグ全体だと選択肢が多い反面、選手の所属先ごとにそれぞれ試合が開催されるため、同時に複数の試合を追いかけることになります。複数試合の映像をリアルタイムに観戦するのは難しいので、結果としてデータで確認する流れになり、我々が求める「試合観戦に熱中して欲しい」という思いから離れてしまいます。
しかし、単一チームという制限であれば1つの試合だけを追うため、リアルタイムで応援しながらPICKFIVEで遊ぶことができます。これであれば、川崎ブレイブサンダースの試合観戦体験を倍増させるサービスに進化させられるのではと考えました。
ファンタジースポーツに期待をかけ、まずは社内検証をおこないました。スプレッドシート上に作成した管理表で選手を選んでもらい、試合中の活躍情報をその場で手入力して関数計算でスコア・ランキングへ反映させる簡易的なものです。10人程で実践したところ実際に大盛り上がりしたことも後押しとなり、社内検証を重ねた上で本格的な開発に乗り出しました。
こうして、その試合で活躍すると思った選手5人を予想した上で応援を楽しみながら遊べるPICKFIVEが完成しました。編成した選手が実際の試合で活躍したらスコアが加算され、ゲーム参加者同士でスコアを競います。初回ダウンロード時には、無料で全選手のカードが配布されるので、手持ちカードだけで気軽に遊ぶことができます。
バスケをよく知らない方でも、ゲーム初心者や子どもでも分かりやすい、シンプルなゲーム設計です。“運”要素を強めにしているので、経験や知識を問わず、初参戦プレイヤーが常連プレイヤーを押しのけて上位に上がる現象もよく発生しています。また、常連プレイヤーにとっても、常に新鮮で飽きがこないように工夫しています。
実際に体験してくださったお客さまからは、「デッキ編成を考えること」と「デッキに組んだ選手への応援」が特に楽しかったと評価していただきました。ファンタジースポーツの肝であるデッキ編成の醍醐味に加え、試合結果に左右されない観戦体験の最大化に向けた足がかりとなりました。
また、観戦環境別の再利用意向の調査では、アリーナ観戦者よりリモート観戦者のほうが、再利用を希望する傾向が高いことが判明しました。この結果から、コロナ禍でリアル観戦が難しくなった方々へ、新しい観戦価値をつくり出せているという手応えを得ることができました。
PICKFIVEはシミュレーションを楽しむだけでなく、トレーディングカードやファングッズの要素を加える点で、NFTを活用しています。NFTであればデジタルコンテンツが世界にひとつだけのオリジナルであることを証明することができます。つまり、リアル世界の物体と同様に、画像/動画/音声などのデータがコピーではない1点ものであることを証明し、売買することができるようになるのです。カード自体や取引履歴の改ざんができない強固なセキュリティー性や、カードの発行数や取引履歴を誰でも閲覧できる透明性から、トレーディングカードとの相性も良いです。
しかし、ここで気をつけなればならないのは「NFT化すれば、何にでも自動的に価値がつくわけではない」ということです。例えば、NFT市場を牽引する「NBA Top Shot」は、NBAの圧倒的なファン数と知名度があってこその成功です。つまり結局はコンテンツが重要で、何をNFT にするかで価値が決まるのです。そういう観点でいうと、日本のプロバスケットボールはまだ力が足りません。まだ力が足りない場合は付加価値をつけて、一緒にコンテンツ自体を育てていく必要があると考えています。そのため、PICKFIVEでは活躍予想カードゲームで使えるという付加価値をつけてNFT化しています。
PICKFIVEでは、活躍予測に成功した方に対し、NFTカード獲得を通じて価値を還元させています。リアルでの観戦という側面も持つ川崎ブレイブサンダースの強みを活かし、ゲーム内で得たポイントがアリーナ観戦時に利用できたり、あるいはリアルでの行動によってゲーム内で使えるカードが入手できたりするなど、リアルとの連携を強めていきたいです。また、今後は有料カードの用途の充実化や、お客さま同士でのカード取引が可能になる機能実装も予定しています。
このようなオンラインとリアルとの融合は、川崎ブレイブサンダース全体でも狙いたいことです。SNS上の人気コンテンツである著名人とのコラボ企画を、大規模有観客でのリアルイベントとして開催するのもその一例です。2022年8月30日には、川崎市とどろきアリーナで、B.LEAGUEのプロ試合と同等の環境を再現し、スポーツエンターテインメントイベント「はじめしゃちょー & 川崎ブレイブサンダース presents DREAM GAME 2022 」を開催予定です。
試合がオフシーズン中であっても、川崎ブレイブサンダースの観戦体験は盛り上げられると考えています。オンラインとリアルの融合、バスケと地域との融合など、これからもさまざまな施策を進めて参ります。
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