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デライト・ベンチャーズは、起業家が世界で活躍するのを全力で支援するベンチャーキャピタルです。DeNA内外の人材によるスピンアウトを前提とした事業創出の支援や、DeNA社員の独立起業を積極的に支援しています。
本記事では、デライト・ベンチャーズのプログラムを通し新規事業を立ち上げスピンアウトした株式会社スマート修繕の豊田 賢治郎氏に、起業に至るまでのきっかけや経緯などを語っていただきました。
――スマート修繕はどのようなサービスでしょうか?
豊田氏:「スマート修繕」はマンションやビルを始めとする大型建物の大規模修繕工事などの共用部工事において、一括見積、工事会社・見積の比較選定のサポートをおこなうサービスです。主なお客さまは分譲マンションの管理組合やビルなど建物オーナーの方々です。
大規模修繕は10数年に1度、1戸あたり百数十万円もの費用がかかるマンションの一大イベントですが、住民の方にとっては「そもそも大規模修繕とは?」含めて、分からないことばかりです。適切な工事会社を見つけること、適切に見積を取得、比較選定、契約することも非常に難しいのが現実です。
また、大規模修繕に関する不祥事が相次ぎ、国土交通省から「不正行為」に関する異例の通知が出たり、マスコミから数々の報道があったりするなど、管理会社や建築士事務所にまかせて進めていいものなのか……とオーナーの方々が信頼してオーダーできないという悩みもあります。
「スマート修繕」は、それらの大規模修繕に関するお悩みをワンストップで解決できるサービスとして立ち上げました。
サービスの特長は「初期検討段階から最後まで伴走する一貫サポート」、「高い透明性・効率性を有する仕組み」、「登録工事会社制や契約ガイドラインの運用、工事中の工事品質チェックサポートによる安心・信頼性」です。
――サービスを立ち上げた経緯を教えてください
豊田氏:私が居住している分譲マンションで、あみだくじの結果、理事長になったことがきっかけです。その際に、修繕工事の検討が議題にあがってきたのですが、管理会社が提出したレポートや見積書を見ても、そもそも工事が必要なのか、適切な工事範囲なのか、正しい金額なのかが分からなかったんです。見積書の妥当性を確認するために、他の会社の見積と比較などをする必要がありますが、どう進めればいいのか、誰に相談すればいいのかすら分からない。共用部の修繕工事は必ず起こる問題なのに、住民側として適切に発注管理できない状況に課題を感じ、サービス構想に至りました。
――サービスローンチまでのハードルはどういったところでしょう?
豊田氏:本当に沢山ありました。準備期間の2年の間に一つ一つ乗り越えていきましたが、特に高かったハードルは二つあります。
一つ目は、登録工事会社集めです。私自身、不動産・建築業界の経験・ネットワークが全くないところからだったので本当に大変でした。まずアポイントをとることがとても難しく、やっとお会いできても非常に厳しいお言葉を沢山いただき、当初はお断りされることがほとんどでした……。ただ、その中でもDeNAグループであったこともあり、比較的お話を聞いて貰いやすかったのではと思います。
二つ目は、大規模修繕の初期検討から最後までと幅広いサービス提供範囲について、それらの全てのプロセス、マニュアル、カスタマーサポートなど体制を一から構築しなければならなかったことです。この過程においては、DeNAで学んだ「要素分解して一つずつ解決していく」、「外部の専門家を巻き込んでいく」手法が非常に役に立ちました。
――ローンチ後の反響はいかがでしょう?
豊田氏:おかげさまで、非常に多くのお問合せをいただきました。問合せいただいたのはマンションの管理組合をはじめ、一棟オーナー、不動産管理会社や不動産運用会社まで幅広いです。反響があった要因は、実際に問題を抱えていられる方が多数いたこと、実際に当サービスが問題解決に貢献できることが大きいと考えています。
また、タイミングもよかったと思います。
大規模修繕を検討されるのは50代以上の方々が多いのですが、仮に10年前ですと、それらの方々は「スマート修繕」のような新しいサービスの利用にもっと抵抗があったと考えられます。
――起業前のDeNAでは、どのようなお仕事をされていたのでしょうか。
豊田氏:DeNAの強みの一つとしてパートナリングが挙げられますが、それを担う部署に在籍し、他企業との共同事業にむけた事業企画、事業開発をしていました。また、パートナリングの結果、立ち上げたゲームタイトル複数を事業視点でみるプロデューサーもしていました。
――もともと、起業願望があったのでしょうか?
豊田氏:特にありませんでした。
一方、新規事業に携わりたいという想いはずっとありました。DeNAへの転職理由も、そこに期待できたことが大きいですね。
スマート修繕を起業という形で立ち上げるに至った経緯ですが、きっかけは起業プログラムを運営する、デライト・ベンチャーズの不動産管理領域などに関する社内アンケートに回答したことです。軽い気持ちでアンケートに回答したところ、デライト・ベンチャーズから自身でリサーチすることを提案され、「新規事業に携わる機会だ」とリサーチを開始しました。
DeNAで本業を100%しながら、平日夜や週末などのオフの時間にリサーチ、各種検証を進めるという「週末起業」といったスタイルでした。
業界関係者、組合の方から各種ヒアリングを進めるにつれて「現状はあるまじき状態である」との想いが強くなっていき、2度実施したテストサービスのお客さまの声などを聞いた結果、「絶対にこの事業を立ち上げたい」と、本格的な起業へと決意が固まりました。
振り返ると、目標があると達成に向けてやり切ろうとする性分に従って、デライト・ベンチャーズのプログラムに倣いステップを一つ一つ進めていったら、自然と決意が固まったように感じます。
――DeNAで働いたことで起業に影響したことはありますか?
豊田氏:「理想の形」に向けて、事業を構想・構築するという考え方は、DeNAから受けた影響が大きいと思います。
一般的な企業では、できることから少しずつ積み上げていくことが多いのではないでしょうか。つまり、実績を少しずつ積み上げながら、理想の形を描き、構築していきますよね。
一方、DeNAは新しい領域にチャレンジをする際も、最初から「理想の形、大きい絵」を描き、その実現に向けてチャレンジしていきます。
仮に、「スマート修繕」において、少しずつ積み上げる手法を採用していたら、関東エリア向けに関東の小規模な工事会社をマッチングするサービスになっていたと思います。そうではなく、「理想の形 = 自分がユーザーだったら欲しいサービス」に向けてチャレンジしたことが、今の反響に繋がっているように感じます。
――デライト・ベンチャーズを通した起業についてはいかがですか?
豊田氏:一番良かった点は、事業の構想・各種検証・構築などのノウハウ、支援体制があることです。「スマート修繕」は、デライト・ベンチャーズがなかったら絶対に実現していません。
もともと、DeNAは領域問わず新規事業にチャレンジする、そういったチャレンジを推奨、称え合う風土があり、チャレンジ精神あふれる、自走力・巻き込み力のある人材がいるという、「新規事業を立ち上げる力」が強い組織です。
デライト・ベンチャーズは、この力を、検証プロセス・事業化などの仕組み、支援体制、環境面からより強化した組織だと思います。
起業についてリアルな話もしますと、「起業は大変だ」「経営者は孤独だ」と言われていますが、まさにその通りです。
起業してからほぼ休みをとれていなかったり、息子の誕生日に出張が入り息子に泣かれて心が傷んだり、心身の疲労や強いプレッシャーを感じることもあったり、同僚という利害関係なく楽しく世間話・愚痴を言い合える仲間もいなかったりと、なかなかのものです……。
ただ、デライト・ベンチャーズには、同じような境遇にある経営者の仲間や、それらを乗り越えた経験・知見がある先輩経営者がいるので、本当に救われています。
また、リリース後はお客さまや登録工事会社さまから日々感謝や励ましのお言葉をいただいており、本当に嬉しく、充実した日々を送ることが出来ています。
今後はお客さまと市場の声を聞きながらより良い「理想の形」を描き、その実現に向け、今まで以上に頑張っていきたいと考えています。
これから起業をしたいと考えている方、社会課題を解決したいと思っている方、そのチャレンジのための「仕組み」と「場」がデライト・ベンチャーズにはありますので、ぜひご活用を検討してみてください!
スマート修繕:https://smart-shuzen.jp/
デライト・ベンチャーズは、今後も起業を当たり前のキャリアパスとし、成功者も失敗者も次々とチャレンジを続けられる社会を目指します。 起業家や投資家、企業とのパートナーシップを通じて、日本のイノベーションエコシステムの、世界的競争力の向上に貢献していきます。DeNAはデライト・ベンチャーズへの出資や連携を通じて、起業家を支援に努めます。
デライト・ベンチャーズ:https://www.delight-ventures.com/
※本記事掲載の情報は、公開日時点のものです
写真撮影:石津 大助