loading
DeNA SPORTS GROUPでは、日本のスポーツ産業をさらに盛り上げていくことを目的に、スポーツビジネスをテーマにした『DeNA SPORTS BUSINESS CONFERENCE 2023』を2023年2月22日に開催しました。DeNAが保有する横浜DeNAベイスターズ、川崎ブレイブサンダース、SC相模原、DeNAアスレティックスエリートで構成する『DeNA SPORTS GROUP』のこれまでの歩みや、経営方針について各チームの代表よりお話をする場となりました。
この記事では、Keynote#1で、スポーツビジネスの魅力、可能性や課題、その未来に込める思いをさまざまな角度から語ったDeNA会長であり横浜DeNAベイスターズのオーナーでもある南場 智子の登壇の一部をご紹介します。
私たちがスポーツ事業に参入したのは2011年。縁起のよい「卯」の年でした。ベイスターズを取得した年からちょうど干支が一回りしました。
今では、NPBの横浜DeNAベイスターズ、Bリーグの川崎ブレイブサンダース、JリーグのSC相模原。3大プロスポーツそれぞれにチームを有し、運営をする体制となっております。また、私たちはDeNAアスレチックスエリートを通して新たな陸上・ランニングシーンの創出にも取り組んでおり、拠点は全て神奈川にございます。神奈川を「ホーム」として、地域へしっかり根ざして取り組んでいこうという考え方です。
経営を語る前に私の個人の話を少しすると、ベイスターズを取得したことによって贔屓のチームができるということの喜びを知りました。毎日がオリンピック。いつの間にか生きがいになっていました。
私の主人は長い期間闘病しておりましたが、2016年にベイスターズをDeNAが取得してから初めてクライマックスシリーズに進出しました。そして10月10日。ファイナルステージに進めるかどうかが決まる試合日に、主人の体調がギリギリ大丈夫そうだったので、「よし行こう」と、2人で一般席へ応援に行きました。
その延長戦で、嶺井 博希選手が勝ち越しツーベースヒット!そのときにお腹の底から大きな声を出しながら主人が立ち上がったんです。それを見て、スポーツが人に与える力の大きさに驚くと同時に、彼の人生の最後に一つ大きなプレゼントが贈られたように感じ、私の人生にも大きなものとして残っています。
筋書きのない感動、悔しさ、喜び、連帯感。スポーツには本当に格別なものがあります。多くの人が気づいておられることなのですが、私は自分たちでチームを取得したことで、遅ればせながらそれを体験いたしました。
また、1試合を運営するのに600人ぐらいのスタッフが一緒に働いています。当たり前のことではありますが、スタジアムへ足を運ぶようになって、たくさんの人に支えられていることを実感いたしました。このように、感謝と感動の気持ちを与えてくれるスポーツは本当に語りつくせないほどです。
単なるファンじゃないかと言われると、答えはイエスなのですが、今日は私たちDeNAが大事にしているスポーツビジネスの考え方をお伝えします。
一番大切なことは、今お話したようなファンとしての気持ちです。
ファンのDelightを最上位に置くことこそが、スポーツ事業の価値のほぼ全てだと思います。これを維持して発展させるために、他の全てがあることを決して忘れないでやっていこうということです。
そのために、このスポーツ事業をビジネスとして成り立たせるということが極めて重要だと捉えています。プロスポーツである以上、スポーツ事業単体でしっかりと収益を出し、その収益を拡大していくことが、スポーツ産業全体の発展のためにも極めて重要であるというスタンスです。
会社の繁栄に“絶対”はありません。親会社の浮沈にチームが左右されることがあってはいけないと思います。私たちは事業会社なので、事業を回すことのプロであるはず。ならば、そこでしっかりと力を発揮していくことが、スポーツ産業に対する最大の貢献となると考えています。
そしてこのビジネスとしてのスポーツには、まだまだ伸びしろがあります。
日米のスポーツ市場の規模は、GDPの差以上に大きく差が開いています。これらの差は一体何なんだろうかと考えたとき、重要なことはスポーツが私たちに与えてくれる感動は日米間で全く差がないということです。
素晴らしいコンテンツを手にしていながら、大きな事業にできていない日本の状況は、みんなで力を合わせて解決をしていかなければならない。改善、改革の余地がたくさんあるといえます。
ベイスターズを取得したばかりの頃、各オーナーさんへご挨拶に伺いました。そのときに当時のオリックス・バファローズのオーナーだった宮内 義彦さんから「プロ野球というのは一つの劇場なんだよ。みんなでその劇を盛り上げていくという気持ちを忘れないでね」と仰っていただきました。その言葉は本当にありがたい言葉だと今でも大切にしています。
DeNAは当時まだ新興企業で、何とか生き残り、何とか成長しようと自分たちのことで精いっぱいでした。これまでとは違う、新たなマインドセットが必要なんじゃないか。プロスポーツチームを持つことで、会社も一歩成長できるんじゃないか。そんなふうに思いながら、日々取り組んできています。
そしてもう一つ大切にしていることが、「長い時間軸」という考え方です。インターネットの世界で事業をやってる私たちにとって、「3ヶ月先は闇」というところがあります。瞬間でいろんなことが起きるインターネット事業では、どうしてもタイムスパンが短くなりがちです。
でも、スポーツはどうでしょうか。ベイスターズは1929年にマルハニチロ株式会社さんによって下関で生まれました。それから長い年月をかけて川崎を経て横浜の人々に受け継がれ、私たちも参加をさせていただいき新しいページを加えていく。とても長い時間軸のものです。
去年のベイスターズの状況は、1997年の優勝前夜とそっくりだと皆さんに仰っていただきました。こんな長いスパンで語られるコンテンツはなかなかないと思います。私たちがお預かりして、10年後、20年後、30年後にどうしていきたいのか。このような長いスパンで考えて、取り組んでいこうと思っています。
アリーナやスタジアムなど物理的環境は、思い切りプレーをしてもらう場所であり、観戦して感動していただく場所です。場所のあり方がコンテンツの価値に大きな影響があることが、私たちの学びです。
できるだけ私たちが運営主体になり、一体経営を目指す。そうでない場合も運営主体さんとしっかり組んで、一つの興行を盛り上げることも大事にしているポイントです。
そして最後に、スポーツがおこなわれている場所から喜びをまちに波及させていくこと。熱狂をまちへDelightしていく視点を野心的に持っていきたいと思っています。
例えば、『BALLPARK FANTASIA(ボールパークファンタジア)』。シーズンオフの寒い時期におこなうイルミネーションイベントです。いつもはスタジアムの中だけでしたが、昨年から日本大通りへ拡張してみました。
また、スタジアムの横の横浜市旧市庁舎街区活用事業に手を挙げ、25年の街びらきを目指して建設中です。ここでは、大きなライブビューイングアリーナやスポーツ体験型のスポーツエデュテイメント施設などを計画しています。
私たちにとってもやりがいのあるビジネスですし、地元への貢献としても重要な取り組みです。
コロナ禍の3年間に私たちはいろんなことを学んだはずです。
先般、今永 昇太選手がスポンサーさんたちへの挨拶で「この3年間、世の中が本当に暗く沈んでいたけど、その中で自分たちは何の心配もせずに野球をさせていただきました。この感謝の気持ちは忘れません」と述べました。
選手たちもこの3年間で学ぶものがあったのだと思います。私たちも、無観客試合ならばオンラインで盛り上がらないかなど、いろんなことをトライしました。今までの分を取り戻すだけでなく、この3年間の拾い物を足し算・掛け算して、これまでにない素晴らしい充実したシーズンの幕開けとしていきたいと思います。
『DeNA SPORTS BUSINESS CONFERENCE 2023』
URL : https://youtu.be/T2_tSsFdHBU
『DeNA SPORTS BUSINESS CONFERENCE 2023』ではこの他にも、各チーム代表による経営方針、まちづくりやファンづくり、アクティベーションなどスポーツビジネスの可能性が広がる多様なセッションをお届けいたしました。カンファレンスの内容は、アーカイブ動画にて公開されています。ぜひ、そちらもご覧ください。
※一部のセッションは非公開、およびライブ配信内容とは異なるセッションがございます。予めご了承ください
※本記事掲載の情報は、公開日時点のものです