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2022年にDeNAのグループへと仲間入りした株式会社アルム(以下、アルム)。
アルムでは、医療・介護領域のDX化を軸に「ICTの力で医療の格差・ミスマッチを無くし、全ての人に公平な医療福祉を実現」をDeNAと一緒に目指しています。
その取り組みの一つとして、2023年3月よりスマートフォン一体型無散瞳眼底カメラ「Eyer(アイヤー)」を医療機関や健診センター、介護施設などをターゲットに日本で販売開始しました。
本記事では、Eyerがどのように日本の医療業界へ貢献していくのか、また遠隔診療に活用できる医療関係者間コミュニケーションアプリ「Join(ジョイン)」とどう連携させていくのかご紹介していきます。
Eyerは、ブラジルのスタートアップ企業であるPhelcom Technologies(以下、フェルコム)が開発した、スマートフォン一体型のポータブル眼底カメラです。
2022年3月にアルムとフェルコムは、眼科領域の遠隔医療にまつわる協業に向けた資本業務提携契約を締結しました。眼科領域におけるヘルスケアICT事業の共同展開を進め同年11月にEyerの薬事認証を取得し、2023年3月より日本での販売を開始しました。
現在、多くの眼科などで使用されているのは、デスクトップタイプの眼底カメラですが、Eyerは軽量・小型なので、検査室まで直接足を運べない方や座って検査を受けられない高齢者や小児の検査で利用できるのが特長です。また、患者の瞳孔を広げる散瞳薬を使用せずに、簡単な操作で高画質の眼底・前眼部撮影ができることから、場所を選ばずさまざまなシーンで眼底を計ることができます。
撮影されたデータは、スマートフォンのBluetoothやメール機能などを活用し、病院のPCへ転送し保存することができます。また、国内の診療所レベルでもスタンダードな環境となりつつある、電子カルテシステムやファイリングシステムとの連携についても、現在協業メーカーとの開発を進めています。
日本では、人口の1.3%にあたる約164万人(※1)もの方が視覚障碍者数といわれており、高齢化や総人口の減少により、2030年には200万人に増加すると予測されています。
視覚障害は、年齢と共に発症率が高くなる緑内障や糖尿病網膜症、加齢⻩斑変性などが主な原因で、その6割以上が早期発見・治療で重症化を予防することができるといわれています。
その早期発見・治療には、定期的な眼底検査を受けることが最も重要ですが、人口10万人あたりの眼科医数は東京で13.2人、青森にいたっては5.4人で県内に計67人しか眼科医がおらず(※2)、他の診療科に比べても専門医が少ないことが課題として挙げられています。
また、視覚障碍者の72%以上が60歳以上(※2)であるといったことがわかっています。
60歳以上という年齢は退職している方も多く、会社での定期的な健診がなくなり、それぞれの健診への意識によって受診率が大きく変わるタイミングです。また、目に見える、もしくは自覚症状を感じる疾患には目が向きやすいですが、視覚障害のように治療の見込みがある早期の段階では症状がないものは気付かれにくいというのも現実です。これまでのデスクトップ型の眼底カメラでは、それがある施設に患者自らが足を運んで検査をするか、移動が難しい患者には検眼鏡を使用し眼の状態をその場で確認するといった選択肢しかありませんでした。ただでさえ、必要性を感じてもらいにくい眼底検査の受験率の低さに影響してると言えます。
しかし、Eyerの普及はそういった現状を打破し早期発見・治療をおこなうべき高齢者の検査や、眼科の少ない地域での検査受験率の上昇へ繋げられるでしょう。
持ち運びの手軽さに加え、Eyerの簡単な操作は専門医でない医師による撮影を可能にしました。これにより、専門医がおらずその場で検査はできなくとも、Eyerで撮影したデータを医療関係者間コミュニケーションアプリ「Join」を活用し、眼科医へ送り遠隔読影をしてもらうことで、眼科医がいない地域や移動が難しく訪問診療が必要な患者の方でも、眼底検査を受診することが可能となります。
離島地域のとある内科眼科クリニックでは、内科の医師が訪問診療にいった際にEyerで患者の眼底写真を撮影し、それを院内にいる眼科専門医に送って診断してもらうという実例も現れてきています。そういった話からも、眼科医不足地域での検査との親和性が高いことが見てとれるのではないでしょうか。
また、こういった連携により、視覚障害で最も大切な早期発見・治療への貢献が期待でき、さらに、年間総額2兆9,217億円(2007年)にも上る(※3)といわれている視覚障害による医療制度支出やその他の財部費用の経済コストの削減にも繋がります。
※1:2007年の数値
※2:出典(日本眼科学会HP)
※3:出典(日本眼科医会研究班報告2006~2008「日本における市長渉外の社会コスト」)
「ICTの力で医療の格差・ミスマッチを無くし、全ての人に公平な医療福祉を実現」をミッションに掲げているアルムでは、JoinをはじめとしたアルムのICTソリューションを医療現場に提供することで、医療過疎地や専門医がいない地域でも、医療従事者がスムーズに情報連携でき、患者がどこに住んでいても、都心と変わらない医療を受けることのできる体制構築をゴールとしています。
これまでJoinは、主に急性期領域で活用されてきましたが、Eyerと連携することで眼科領域もカバーすることができるようになりました。
今後アルムでは、さまざまなIoTデバイスとJoinを組み合わせることで、さまざまな診療領域におけるDX化を進め、医療格差がない未来づくりを目指していきます。
アルム 代表取締役社長 坂野哲平のインタビュー記事:「時間との勝負」に勝つために。アルムの考える医療業界のDX化が生む未来
※本記事掲載の情報は、公開日時点のものです