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DeNAでは、一人ひとりに想像を超えるDelightを届けるべく、さまざまなプロダクト、サービスを世に出しています。そのプロダクト・サービスを通じ、お客さまやユーザーが得る体験を表するUX、つまりユーザーエクスペリエンスを担うエクスペリエンス戦略室がどうUI/UXデザインに向き合っているか、どんな青写真を描いているのかまとめます。
UI/UXという考え方が社内に入ってきたのは2012年頃。当初はゲームやエンタメ型プラットフォームを中心としたUI(ユーザーインターフェース)領域がメインでした。そこから数年で、ガラケー/PCからスマートフォンへの展開やモノづくりの幅が課題解決型のサービスへも広がってきたことで、お客さまやユーザーのサービス利用時の体験によりフォーカスし、向き合う必要があるという考えのもと始まったのがUXの強化です。
当時はビジネスの視点や都合が優先された「機能」を届けることが多く、お客さまやユーザーの体験に十分に向き合えているとは言えない状況でした。そこでユーザーが求める体験とはどんなことなのかをデザイナーだけでなく、会社全体として意識づけていくことが必要だと考えました。
この解像度を高く持ってもらうため、UXデザインを設計するプロセスや実例をつくり、社内に浸透していくことを目指し立ち上がったのが、デザイン本部エクスペリエンス戦略室です。
現在は協業案件やR&D案件、ベンチャーキャピタル事業の中での新規事業を中心としたUXデザインの支援をおこなっており、特にサービスやプロダクトのゼロからの立ち上げ、また立ち上げ後に軌道に乗るまでのフェーズを主に担当しています。
モノづくりをする上で、ただ「かっこいい」「かわいい」という主観に基づくデザインに落とし込むのではなく、お客さまやユーザのやりたいこと、なりたい姿をどう実現するかが大切です。DeNAでは、領域に捉われないさまざまな事業があるため、それぞれのサービス・プロダクトで求められるゴールは違います。そこで、お客さまやユーザーの求める体験をしっかりと把握し、サービスやプロダクトへ反映させる必要があります。
エクスペリエンス戦略室の強みは、アイデア創出だけでなく、ユーザーのリサーチや社会に何を還元していくべきかを考えながら実際のモノづくりまで、事業部やプロダクトオーナーへ寄り添いながら一気通貫のモノづくりの体制をとれることです。
しっかりとリサーチをすることで、想定と違った課題や目的が見えてくるということは過去にも実証済みです。DeNAグループのベンチャーキャピタル、デライト・ベンチャーズ発のパーソナルトレーニングサービス、WITH Fitnessが一つの例となります。当初、自己流でダイエットをしていたがうまくいかない人に向けて、「自己管理がしやすいアプリ体験を得てもらうこと」が想定ゴールでした。
しかし、実際にリサーチ、プロトタイプをつくる中で「トレーナーの価値をいかにユーザーに届けるか」をゴールに設定することがユーザへの提供価値に直結するという観点を見つけたことで、180度視点が変わり、トレーナー目線での機能改善に注力することになりました。
最初に設定したゴールを盲目的に信じるのではなく、検証と改善のサイクルを繰り返したことによって、結果としてダイエットを成功させたい人へのDelightにも繋がったといいます。
「デザイン」という言葉は、時として狭い範囲で解釈されてしまうことがあります。私たちは、「デザイン」とは「ものごとを設計」することだと認識しており、ただ単にビジュアルや機能をつくるだけでなく、より事業の戦略的な部分から入り込み、「提供する体験と得られる価値を設計する」ことこそが「デザイン」であると考えています。
UX強化に向き合い約5年が経ち、サービスやプロダクトをつくる際の意識づけは少しずつ進んできましたが、まだ道半ば。また、UI/UXが注目され需要が高まっているのに反し、まだ歴史が浅く、それを理解し推進できる人材は全体的に足りていないとも感じています。これから先、もっと需要が増えることも容易に想像できる中、成り手が少ないことを課題に感じ取り組み始めたのが、大学でのワークショップや短期授業です。
取り組み始めたのは2015年頃から。最初は単発のワークショップのみの開催でしたが、実務をしているデザイナーが生徒に直接、UXデザインについて一連の流れをレクチャーすることの大事さにフォーカスし、また、大学からも要望があったため、最近は短期講義を定期的に開催しています。
2022年10月、九州大学 大学院芸術工学府 ストラテジックデザインコースにて、「UI/UXデザインクラス」を開講。
実務を経験しているデザイナーだからこそのプログラム内容では、ほぼ実際の業務と同じプロセスでUXデザインをおこないました。企画リサーチからデザイン制作、プレゼンまでをおこない、プレゼン時にはデザイナーだけでなく地元企業にも参加いただき、自分たちで考えたソリューションがどう社会に貢献できるか、という目線からもインプットをおこなうなど、実践的な取り組みとなりました。また、学生向けならではという部分では、今回の取り組みをどうポートフォリオに入れるべきかという、ポートフォリオ作成面でもサポート。UXデザイナーを増やすという社会的意義に向き合いました。
DeNAでは多種多様なサービス、プロダクトを運営しているので、UXデザインでユーザーのやりたい体験をかなえるといっても、答えはひとつではありません。例えば、エンタメ領域においては、楽しさなどユーザーが得られる体験をより増やす「ゲイン」に向き合い、また、社会課題においては主にユーザーにとっての「ぺイン」を削減する体験にフォーカスします。またサービスによっては両方の組み合わせもあるでしょう。
このように、一人ひとりのお客さま、ユーザーに「どんな体験が求められているか」にフォーカスし、それを反映したサービス・プロダクトを生み出す企業であり続けたいと思っています。
UXデザインは、一人でデザインを組む作業ではなく、プロダクトやサービスに関わる皆でおこなうものです。そういったプロジェクトを推進できる人材を増やしていきたいですし、その思想の浸透は今後も進めていきます。UXデザインという視点から事業にコミットし貢献すること、また、そのナレッジを社内外に共有し、UXデザインが当たり前のものとして浸透していくことを目指していきます。
関連情報
九州大学大学院でDeNAデザイン本部が「UI/UXデザインクラス」を開講!
https://note.com/denadesign/n/nb6353968a0df
九州大学大学院での「UI/UXデザインクラス」を振り返る
https://note.com/denadesign/n/n9748afa3415d
※本記事掲載の情報は、公開日時点のものです