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DeNAでゲーム事業に次ぐ第二の柱を担う、ライブストリーミング(ライブ配信)事業。事業を牽引するライブコミュニケーションアプリ「Pococha(ポコチャ)」は、2017年1月のローンチから6年目でも成長を続けており、その成長ぶりはユニコーン企業に匹敵すると言われています。
その、競合アプリが群雄割拠するライブ配信市場における、Pocochaの成長戦略とは? Pocochaの立ち上げ期からプロダクトオーナーを務める水田 大輔に、「ロングテールなサービスづくり」「“国造り”に見立てたプロダクトマネジメント」「感情のリミッターを超えるUX」について聞きました。
本記事は、DeNAの公式YouTubeチャンネル「事業家のDNA〜事業家を目指すあなたへ〜」で配信された番組の一部をテキストとして編集しています。
ーーさまざまな競合アプリがある中で、なぜPocochaが急成長を遂げられたのでしょうか?
水田:一番は、ローンチ当初から「ロングテールなサービス」を目指してきたからだと思います。そして、実現に向けて試行錯誤する中で、「国造りに見立ててプロダクトマネジメントする」という着眼点に気づけたことが、大きなブレイクスルーとなりました。
ロングテールなサービス作りを目指す理由は、インターネットサービスの歴史を紐解くと、最終的にはロングテールなサービスだけが残るという、普遍のトレンドがあるからです。
Pocochaを立ち上げた6年前といえば、日本でも既にライブ配信の先駆けとなるサービスが群雄割拠していました。しかし、ショートテールなサービスが中心だったため、ロングテールなサービスづくりをすることで他と差別化できると確信し、参入しました。
ーーショートテールのライブ配信サービスとはどういうサービスをさしますか?
水田:私たちはメディア型と呼んでいますが、限られた一握りのクリエイターだけが活躍できるサービスを指します。ユーザーの中には、ポテンシャルのあるクリエイターが恐らく何百倍、何千倍も存在するはずなのに、陽の目を浴びサービスの恩恵を預かるまでにはなかなか至りません。
SNSを通じて、情報の伝播速度がこの10年で飛躍的に上がったことで、人より早く良質な情報を持っていれば、誰でもインフルエンサーとして評価されるようになりました。しかし、その反面、発信しているアカウントや人といった側面が蔑ろになっているような印象も受けます。
Pocochaでは、限りなく人に寄り添いながら、みんなが「使い続けたい」と思えるサービスを目指して運営しています。使えば使うほどサービスが豊かになり、ライバーさんの収益やコミュニティの温かさへと還元される。この循環が自然と良くなっていく仕組みをつくることで、ロングテールなサービスになると考えています。
普段よく「トップYouTuberが何億円稼いだ」といったニュースを目にしますが、Pocochaのユーザーインタビューでは「月数万円のライバー収入のおかげで生活にゆとりができて、Pocochaが欠かせない存在になっている」といったお声をたくさんいただいています。であるならば、限られた少数の人がたくさん稼ぐより、月数万円を稼ぐライバーさんの数を増やしていくことにフォーカスすべきではないかと考えました。
ーーPocochaでおこなわれるコミュニケーションというのは?
水田:ユーザーさんは朝起きてから夜眠るまで、Pocochaのプラットフォーム上で生活しているかのように使い続けてくださっています。実際にサービス内で最も飛び交ったコメントをランキングに出してみると、まず「おはよう」があって、「ありがとう」があって、「お帰り」「ただいま」と続き、最後に「おやすみ」があるんです。こういった一連の挨拶のようなコミュニケーションが行き来するのは、SNSサービスでは珍しいですよね。
ーー「“国造り”に見立てたプロダクトマネジメント」というのはどういうことですか?
水田:ライバーさんが収益を上げられるサービスを運営していく中で、どんなライバーさんがどれくらい収益を上げられるべきかや、多様性をどう広げるべきか、保障はどこまで広げるべきかなどを考えるシチュエーションが増えていきました。IT企業でインターネットサービスづくりをしているのに、考えていることはまるで国造りですよね。
私たちが日本で生活するうえで、国から生き方の指導は入りません。国民一人ひとりがお互いのことを思いやって生活している限りは自由に営んでいける。その営みの延長で、国が成長し豊かになっていく。Pocochaで実現したいのはまさにこれです。
ーーその、「国造り」について、詳しく教えてください
水田:Pocochaの場合は、ソーシャルネットワーク・ガバナンス・エコノミックの循環をうまく回せば、自然と発展していくものになるだろうと考えています。
ソーシャルネットワークは、いわゆる国土交通省のような役割です。鉄道など公共交通機関が整備されるように、Pocochaでは情報を流通させる道をどこに引くのか設計しています。最近の例では、Pococha内にあるグループチャット機能に不便さがあったので、Discordという最先端のチャットサービスに近しいレベルの機能を内製で実装しました。
続いて、エデュケーション(≒文部科学省)・エシカル(≒文部科学省の外局である文化庁)・ウェルフェア(≒厚生労働省)・リーガル(≒法務省)といった要素で構成されるのがガバナンスです。ライバーさんがフェアな環境で裾野を広げて活躍できているかや、新しい機能を実装する際により多くの人に対して価値をもたらすことができるかなど、多角的にレビューする役割です。
最後のエコノミックは、金融庁の設置している外局である証券取引等監視委員会のような意味合いですね。株式や為替市場の極端な変動を抑えるみたいに、ライバーのランクシステムにおいて正しい競争環境が実現できているかを常にモニタリングしています。例えば、このランクだったらPococha内でどれくらい報酬を提供できるのかを議論しながらチューニングしていく感じですね。
ーーこうした概念は、ユーザーさんに「体験」としてきちんと還元されていますか?
水田:机上の空論めいてるような議論に感じられると思いますが、間違った方向には進んでないんだろうなと感じています。というのも、ライバーさんがこれまでの人生において誰にも打ち明けられなかった何かを、Pocochaのコミュニティに話すことで救われた気持ちになり涙を流すといったことが、リリースから6年目を迎える今でも日常的におこっています。
学術的なアプローチでプロダクトをつくってきましたが、Pocochaを通して感情のリミッターを超えるUX(ユーザー体験)を提供できているんだなと自信を持てました。
ーー最後に、ライブ配信市場のポテンシャルはどう捉えていますか?
水田:国内でのサービス規模でいうと、例えばTwitterとかYouTubeにはユーザーが約4〜5000万人いますし、驚きなのはPinterestやLinkedInでもマンスリーアクティブユーザーベースで約1000万人いるんですよね。対するPocochaは累計で500万人。となると、もっと大きく伸びる可能性を感じますし、組織としてもスケールしていかなくてはいけないですね。
また、グローバルのチャンスを掴める日本のインターネットサービスは珍しいので、数年間にわたってPocochaの面白いフェーズが続くだろうと思っています。急成長の過程なので、みんな力をかしてください!というところではありますね(笑)。
ーーありがとうございました!
本記事の内容は、DeNAの公式YouTubeチャンネル「事業家のDNA〜事業家を目指すあなたへ〜」(2023年6月16日公開「【DeNA】ユニコーン級で急成長しているPocochaのプロダクト開発が革命的すぎた。」より抜粋いたしました。
※本記事掲載の情報は、公開日時点のものです