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ChatGPTの出現により、より身近になった生成AI。その技術を「仕事にどう活かすのか?」は各企業によりさまざまです。DeNAでは、2021年よりGPT-2(※1)を利用しテキスト生成AIの運用を開始するなど、デジタルマーケティング領域への生成AI導入に着手。そして、それは「21世紀の産業革命」と言われるGPT-4の出現で大きな進化を遂げることとなりました。
今回は、インターネットやAIを自在に駆使しながらDelightを届けることをビジョンのひとつに据えるDeNAが、生成AIを導入し、どんな成果を上げているかをデジタルマーケティング領域を事例にまとめます。
※1…2019年2月にOpenAIによって開発されたオープンソースの人工知能ソフトウェア
お客さまに情報を届ける手段の一つとして広告がありますが、2020年の前半頃は、広告テキストの作成にかなりの時間を費やしていました。例えば、100本の広告テキストを5名が数時間かけて作成していたという具合です。効果的なテキストをつくり出すのは骨の折れる業務で、時間とコスト、そしてその結果のバランスが取れているとは言えない状態でした。
その効率化を図ろうとしていた同時期に、AI技術の専門部署ではテキスト生成AIの活用法を模索しており、両者のニーズがマッチしAIによる広告テキストの生成が始まりました。
当初、単語を入れ替えるシステムを使用したところ精度は低く、到底世に出せるモノではありませんでした。しかし、日本語としてきちんと生成できるAIで、当時最も強かったGPT-2に切り替えてから劇的に変化。人間が担当していたときには思いつかなかったようなテキストをAIが生み出してくれました。
できあがるテキストのバリエーションも多く、「体感で1/10くらいになった」という感想も出るほど作業時間が圧倒的に少なくなるという利点も。また、広告配信プラットフォームへの露出数も増加しました。配信量で測る広告テキストの成果で見ても、少人数で考えたテキストとくらべ、AIを活用して作成したテキストへのユーザーの反応が高くなるという結果にも繋がりました。
この背景には、生成AIを評価するAIもつくったこともあります。生成したテキストをベースにつくったテキストについて、本当にパフォーマンスがいいのか、より多くの人に評価されるのかは、AI自身も判断することができません。そこで、生成されたテキストをベースにつくったテキストに点数付け、最も良いパフォーマンスをトレンドに合わせてテキストを作成できるよう設計しました。
また、クリエイティブをつくるとき、サービス特有のトンマナがあるように、サービスごとにあるコンセプトや雰囲気を踏襲し、学習させた上でアウトプットできるような仕様にしています。
例えば、20代女性をターゲットにした場合、「キラキラしたクリエイティブや絵文字いっぱいでハートが出る」ことが好まれることが大多数であった場合、ナチュラル系のクリエイティブが好まれるサービスだったとしても、キラキラしたクリエイティブを掲載するようなミスマッチが起こります。そこで、サービスが今までつくってきた資産や社内で共有されるトンマナを学習させることで、AIがより人間らしいクリエイティブをつくれ、人間のサポートをする形に展開できました。
この独自のチューニングができることは、かなりの強みだと考えています。成果を求め、クリック率の高さだけに注目したテキストをつくることもできますが、ブランディングを大事にするDeNAでは、本当の意味で「サービスのファンになってもらうこと」を大切にしています。
さまざまな情報を学習することで、人間が求める精度のクリエイティブをつくり出す生成系AIですが、それだけを全面体に信用するのはリスクが高いとも考えています。具体的な例としては、意図しない表現が生まれたり、会社として大切にしている人を大切にする思いが反映されなかったり、過去につくられたクリエイティブと酷似したクリエイティブが出てくること。また、攻撃的、侮辱的な表現がつくり出されることもあります。
それらは「いい」「悪い」ではなく、あくまでテキストのバリエーションの一つなので、取捨選択することが必要になり、そここそは人間が担当すべきだと考えています。これが、戦略を考える部分から最適な運用までをAIが提案して、それを人間が適切にチェックするループシステム「ヒューマン・イン・ザ・ループ」です。このループを綺麗にストレスなく回せるようになることで、より高精度に繋がります。過去の経験や知識から、権利侵害になるような表現、攻撃的、侮辱的な表現をていねいに取り除くことでリスク管理にも向き合っています。
マーケティングでは「誰に、何を、どう届けるか」ということがよく言われますが、生成系AIの導入を通し、「何を」の精度を上げることができました。また、デジタルマーケティング領域でAI技術を活かすことで、DeNAがミッションとして掲げている「Delightを届ける」ための方法や届けられる人の幅を広げられることもわかりました。DeNAマーケティングでは、常に最先端の技術を駆使し、市場をリードすることを目指しています。次のステップとして「誰に」のターゲティング、「どうやって」のプランニングのところにおいても、AIのサポートの実現を進めていきたいと考えています。
それには、新しい技術の導入は必要不可欠。この先も目覚ましいスピードで進む技術の進化には、きちんとしたガイドラインを定めながらも、新技術の導入には積極的に向き合っていきます。それには、きちんと知り、正しく使う共通認識が必要になります。
そこで、DeNAでは社内での勉強会を初め、ガイドラインやポリシーの策定、法務部や有識者などその道のプロフェッショナルと連携することで、リスク管理を踏まえながらどう使うかを定めています。インターネットとAIを駆使してDelightを届けることを掲げるDeNAでは、今後も新しい技術を「強い仲間が一人増えたようなイメージ」として積極的に取り入れ、お客さまに想像を超えるDelightを届ける選択肢を増やしてまいります。
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