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働く上で多くの人がお世話になっている健康保険組合。国と加入会社の間に入り、加入会社で働く被保険者や家族の健康保持・増進と、病気やけがをした際の医療や手当金の給付などをおこなう役割を担ってくださっています。
DeSCヘルスケアが提供するヘルスケアエンターテインメントアプリ「kencom」は、そんな健康保険組合などに向けたサービスで、被保険者である利用者の日々のライフログ(体重・歩数など)の管理や、一人ひとりのニーズに合った健康情報の配信を主な機能としています。
とはいうものの、健康保険組合がkencomを導入する理由や、健康保険組合とkencomが被保険者に届けたい価値は何なのか分かりにくく感じられる方も多いのではないでしょうか。そんなお声にお答えするべく、kencomを導入いただいているジェイアールグループ健康保険組合より内山 永哲氏をお招きし、お話しを伺いました。
ーーではまず、ジェイアールグループ健康保険組合(以下、JR健保)の役割について教えてください。
内山 永哲氏(以下、内山):健康保険組合は、国(厚生労働省)の代行で健康保険事業を進める公法人という位置付けです。その中でJR健保は、旧国鉄の分割民営化によって発足した各社の社員が加入している単一健康保険組合(※)です。主な役割は、社員である被保険者とその扶養家族に対して、病気やけがなどでの出費を一部負担する保険給付と病気を未然に防ぎ健康づくりを支援する保健事業の2つです。
※:国の認可を受けて、企業(グループ)が単独で健康保険組合を設立する方法
ーー加入事業所の数や、被保険者数の規模はどれくらいですか?
内山:JR健保には、7つの鉄道会社(JR北海道、JR東日本、JR東海、JR西日本、JR四国、JR九州、JR貨物)、鉄道情報システム、鉄道総合技術研究所、5つのバス会社(JRバス東北、JRバス関東、JR東海バス、西日本JRバス、中国JRバス)の14社が加入しています。被保険者数は令和4年度末の時点で約14万人で、被扶養者を含む加入者数は約28万人になります。
交通ネットワークの健全な運営と発展に貢献することがJR健保の使命です。私たちJR健保は、交通ネットワークを支える社員・家族一人ひとりの健康増進に寄与することが重大な任務であると考えています。
ーー健康保険組合が抱える課題もあるとお伺いしましたが……。
内山:業界全体の課題として、少子高齢化による現役世代への医療費負担の増加があげられます。事業主と被保険者が納めている健康保険料は、被保険者とその家族の分だけでなく、全国の高齢者医療を支えるための支援金・納付金にも充てられています。
少子高齢化に伴いこの支援金・納付金の負担額が増加していて、2023年度に赤字が想定される健康保険組合は、全体の8割近くに達すると見込まれています(※)。医療費の適正化は、国をあげての急務であると言われています。
kencomは健康問題を抱える対象者だけでなく、年齢や健康状態を問わない幅広い層の健康保持・増進にアプローチする点で、JRグループ全体の健康づくりに有効だと感じました。それがひいては医療費の適正化などに向けた取り組みの強化に繋がると考え、kencomの導入に至った、という感じですね。
※2022年度に赤字になった健康保険組合は4割であるが、新型コロナウイルス禍で多くの国民が受診を控えたことが大きく影響していたため、2023年度以降は更なる財政悪化が懸念されている
ーー導入の経緯について、ぜひ詳しく教えてください
内山:kencomは2016年10月から導入しています。当時といえば、厚生労働省が健康保険法を改正し、被保険者の健康づくりに対してインセンティブを設けることが努力義務化された頃です。インセンティブとは、被保険者の健康に繋がる行動に対してポイントを付与し、貯まったポイントが被保険者へ還元される取り組みです。
こうした流れを受けて、インセンティブ運用のためのポイント管理ができる点も導入の決め手となりました。kencomでは健康保険組合によってポイントの付与数や付与できる取り組みをカスタマイズできます。JR健保では、日々のログインで1ポイント、体重や歩数の日々の記録で1ポイント、「みんなで歩活(以下、歩活)」など健康を促すイベントへの参加時に高ポイントを付与していて、2,000ポイント貯まればギフト交換できる運用をしています。
ーーいざ導入してもkencom を使うかどうかは本人次第ではあると思うのですが、被保険者の皆さまの反応はいかがでしょうか?
内山:実は、kencomアプリの登録者数は被保険者の76%にのぼり、登録者がまだまだ伸びているんです。
また、前述の歩活イベントへの参加者も右肩上がりで、2023年春の実施時はJR健保全体で81,997人。社員の60%が参加しました。また、イベントで目安としている1日の平均歩数8,000歩を達成した方は38,955人で、参加者の48%でした。回を重ねるごとに8,000歩以上歩く参加者が着実に増えているんですよね。
しかも、イベント期間が終わった後も、イベント開始前の参加エントリー期間中より歩数が増えた人が多く、ウォーキングの習慣化に繋がっているのがわかります。JR健保では、厚生労働省が推奨する身体活動の基準に従い、健康づくりのために1日8,000歩のウォーキングを呼びかけているので、こうした盛り上がりがとても嬉しいです。
DeSCヘルスケアが掲げられている「楽しみながら、健康に。」というエンタメ性がいい影響を及ぼしているのを感じました。楽しませるためのノウハウを持つ企業ならではの強みだと思います。
ーー76%はすごいですね。アプリ登録数などを上げるための秘策があるのですか?
内山:導入した初期は利用者も少なかったのですが、各社の厚生担当者や各職場の皆さまにご協力をいただき、今では多くの方に利用いただいています。また年に3回、14社の健康施策を推進する担当者を集めた会議で健康増進の意義を呼びかけながら事例共有をおこなうなかでノウハウなども横展開されてアプリ登録数に繋がっているのかもしれません。あとは、歩活を実施する度に、kencomアプリ登録者数がドンって増えますね(笑)。
私たち保健事業課の職員は被保険者と間接的に関わるため、正直できることが限られているんです。その中でも、14社それぞれにいる担当者が積極的に参加を促す取り組みを推進しています。歩活を例にすると、「健康にいいから歩きましょう!」だけではなかなか響かないところを、参加率や8,000歩達成率の高いチームを表彰したり、社内のイベントに結び付けるなどの工夫をしてくださっています。
加入している14社は、北海道から九州まで日本全国にわたるため気候や企業風土、勤務体系がそれぞれ異なるのですが、歩活を通じて職場のコミュニケーションを活性化するという視点は共通しているように感じています。歩活期間中の週末にチームメンバーが自発的にハイキングに行ったり、コミュニケーションを楽しんだりしているという話も毎回よく耳にします。このように、「楽しみながら、健康に」を地で行くような取り組みをしてくれていることも嬉しいですね。
ーー最後に、仕事にかける思いを聞かせてください。
内山:JRグループ社員の充実した生活を実現させること、それに尽きますね。そのためにも、加入会社が取り組む健康づくりを全力でサポートすることを目指しています。リアルタイムで成果を実感できる仕事ではありませんが、行動変容に繋がっているデータを見たり、加入会社が健康経営優良法人に認定されたりすると、日々の取り組みが報われたような気持ちになります。
一方、こうした取り組みや社員とその家族に着実な保険給付を実施するためには、JR健保が安定した運営を維持し続けることが重要です。業界が抱える課題のお話は先述しましたが、厚生労働省からもレセプトデータ(診療報酬明細書)の活用が提唱され、効果的な運用がより一層求められてきています。
歩数や健康診断の結果なども組み合わせながら、これからも14社と伴走して皆さんの健康増進に寄与していきたいです。
ーーkencom では、レセプトデータと歩数、健康診断の情報などを掛け合わせて分析し保健事業に活用できるサービスもあるので、ぜひそちらもご検討いただければと思います。本日は、ありがとうございました!
撮影:小堀 将生
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