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DeNAとSOMPOホールディングスの合弁会社が運営するカーシェアサービス「エニカ(Anyca)」。
2015年より個人間カーシェアサービスとしてスタートし、2022年末時点の累計登録台数は28,000台以上、車種数は1,100種以上にのぼります。
また、2020年には自動車メーカーやディーラーと連携を開始。自動車ディーラーが所有する試乗車をエニカに登録し、カーシェアを起点としたシームレスなクルマ体験を通して、新たなお客さまとの接点づくりやオンライン販売へ繋げる体験チャネルを構築しました。
そんなエニカのディーラーカーシェアを2020年より導入しているアウディジャパン販売株式会社。本記事では、同社のオペレーション本部ディレクターの遠藤氏、五百木氏に導入効果や今後の展望についてお話を伺いました。
――エニカ導入の背景を教えてください
遠藤氏:現在、自動車業界全体が大きく変わる中で、特に大きな変化はクルマが従来のガソリン車やディーゼル車から電気自動車にシフトしていくことだと考えています。
Audiでも2033年にはガソリン車やディーゼル車など内燃機関の車が生産中止になり、以降は電気自動車の生産が全てとなる予定です。
その為、販売会社は、電気自動車に対応する設備投資を含めて新たなコストも発生すると予想されますが、反対に電気自動車の整備費用は車両の部品数が少なくなることから従来の半分以下にまでなると言われています。このことから既存のやり方だけでは充分な収益を上げられなくなると考えています。
こうした危機感から、弊社はAudiというブランドの認知を拡大し、新しいお客さまとの接点を作ることを目的にさまざまな施策を検討していました。
その中で試乗車を活用したカーシェアを展開できるエニカの存在を知り、試乗車を更に有効活用しながら、多くの方にAudiのクルマの良さを体験していただけるチャンスが広がると考え導入を決めました。
――エニカを実際に導入いただいて、どんなメリットがありましたか?
五百木氏:普段弊社を初めて利用されたお客さまが店舗や車をどう思っているか、感じたかを直接お聞きする機会が少ない中で、エニカでは利用後にレビューを書くという仕組みがあり、そのさまざまな「お声」が店舗スタッフの活力につながる効果もあると感じています。
例えば「ディーラーならではの高品質なサービス」「クルマも素敵だった」などのリアルな声をいただけることで、スタッフの刺激やモチベーションになっています。
もちろんお褒めのお言葉だけではなくご指摘をいただくこともありますが、新車の商談などの店舗サービス向上にも繋がるような情報だと感じています。
遠藤氏:セールスに携わる人は「どれだけ売れたか」という実績が評価のポイントの1つとされますが、あらためて目の前のお客さまから感謝や喜びの言葉をいただけると、日々の仕事のやりがいに繋がっていきますよね。喜ばれると嬉しいというのは人間の本質ですからね。
――エニカが想像していなかった新しい使われ方をしているとお聞きしました
五百木氏:リピーターのお客さまが多く、シェアを伸ばしている店舗があるのですが、そこでは「ローンで新車が購入できるんじゃないか?」という金額を毎月エニカでご利用いただいている方がいらっしゃいます。
そのお客さまはローンを組んでクルマを購入しなくても、エニカのサービスを通じて気分やシーンに合わせて好きなクルマに乗ることができる、新しいモビリティの活用に価値を見出していただいているのだと考えています。
また、旅行シーズンには大阪のお客さまから「東京観光に来る際にAudiに乗りたい」とお問い合わせをいただくことがありました。
弊社は新車販売においてはエリア制を導入しているため、通常東京拠点のスタッフが大阪のお客さま対応をすることはないのですが、エニカを導入することで目先の店舗/エリアだけではなく、全国的な視野を持って業務に臨むきっかけになるとも捉えています。特に弊社の場合は東京、神奈川、大阪に店舗を持っているため、東京でご満足いただいた方が、大阪の店舗でAudiを購入いただけるケースが出てくることもあると期待しています。
購入者だけではない弊社の「ファン」をいかに大切にして支援するかという新しい視点が今後のビジネスには必要だと考えているのですが、エニカを活用し、上記のような事例が生まれることで自然とスタッフにも新しい視点や意識が芽生えていると感じます。
――エニカを導入する際に工夫されたポイントはございますか?
遠藤氏:当初はトライアル店舗からスタートして、その後徐々に店舗を増やしていくという流れでエニカを導入しました。最初で躓くわけにはいかないので、トライアル導入する店舗については慎重に検討を進めましたね。
弊社にはお客さまの対応を専門におこなう「Customer Engagement Sales(CES)」というスタッフがいるのですが、そのCESが配置されている店舗のうち、新しい取り組みであるエニカにチャレンジしたいと手を上げた店舗を選んで導入を進めました。
結果、エニカ導入についてモチベーション高く、さまざまな工夫もしながら取り組んでくれました。お客さまにも非常に喜んでいただき、リピーターの方もどんどん増えたことで、それを見ていたマネージャーやセールスのスタッフも「こんなにお客さまが喜んでくれるんだ!」ということに気付いて更に力を入れるといった好循環が生まれました。
シェアが多く入れば収益も上がっていきますので、店舗としても取り組む価値を見出していきました。
どうしても通常の業務にプラスαで工数がかかってくるので、前向きになれない店舗もありましたが、その成功事例を横展開していくことでネガティブな印象を払拭し、現在は新車拠点全店舗である12店舗まで広げることができました。
――エニカを継続的に活用するために意識されていることはありますか?
五百木氏:弊社ではエニカを広告宣伝としても捉えています。
Audiは五感に拘る点で、他メーカーさまと違うのだと考えています。例えば、開発担当に「五感担当」スタッフがいて、クルマのボタンやクリックの感覚一つにまで拘っています。
彼らは、クリックした感覚が高級腕時計に限りなく近くなるように拘り、クルマのさまざまな素材同士が合わさったときの香りや、その香りが室温が変わったときに、どのように人間が感じるかにまで拘る仕事をしています。
旅行に行って現地でしか分からない空気や香りを味わうように、五感を大切にしている方々に選ばれるためにこだわり抜いてクルマを製造しています。
だからこそ、実際に試乗車に乗ってクルマを体感してもらうことが非常に重要になってきます。エニカを活用することでお客さまに乗ってもらう機会を増やせているので、最大のマーケティング活動だと捉えています。
エニカからの収益や、シェアからどれだけ直接の商談に繋がったかに焦点を当ててしまいがちですが、マーケティングの一環とも考え、このような取り組みが、結果として弊社への評価、商談、その後の受注へとつながると確信しています。エニカの活用をどのようにとらえるかは、弊社が継続的にエニカを活用するポイントですね。
遠藤氏:弊社では、先に言いましたように独自に「Customer Engagement Sales(CES)」というポジションを設けています。
CESはお客さまのケアを目的としたスタッフなのですが、彼らの年間評価については20%をエニカが占めています。月間どれだけのシェアが入ったかなどが評価に反映されるんです。
また、毎月1回、CES全員と社長や私や本社企画部門も集まった会議を実施しているのですが、そこでエニカの成功事例/失敗事例をシェアしています。
各店舗の実績や取組を見える化しているので、お互いに切磋琢磨する意識も芽生えていますし、各店舗でのオリジナルな工夫が見られるような土壌も生まれていると感じますね。
こうした会議も、会社としていかにエニカを重視しているかが全社員に伝わりますよね。
五百木氏:CESが在籍していない店舗もあるのですが、こうした好事例やちょっとした工夫を共有することで、スタッフの意識がガラッと変わってエニカの実績を伸ばした事例も生まれています。
今後もこうした取り組みを続けながら、少しでも多くの店舗に気付きを持ってもらえると嬉しいですね。
――今後エニカに期待していることはありますか?
遠藤氏:さらにエニカとの連携を深めていきたいですね。
エニカの運営企業であるDeNA SOMPO Mobilityはイノベーターが集まっている組織だと感じます。社会を変えようとする組織と仕事をすることは刺激になりますし、何より一緒に新しい社会を作っている感覚を味わえます。
ディーラーとの取組み以外にも様々な事業を展開しているからこそ、その成功事例や失敗事例を共有いただければ私たちがアドバイスできることも、一緒に新しい取り組みができることもあると考えています。
お互いがより成長できるよう、シナジーを生み出していきたいですね。
エニカ ディーラーカーシェア:https://anyca.net/p/dealercarshare/https://anyca.net/p/dealercarshare/
カーシェアサービス「エニカ(Anyca)」:https://anyca.net/https://anyca.net/
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