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熱狂的人気を博した米国ロックバンドのMR.BIG。ドラマーのパット・トーピー氏がパーキンソン病のためこの世を去り大きな悲しみに包まれてから5年。世界のどこよりも日本で愛されたバンドとして日本のファンに恩返しをしたい、パットと同じ病気で苦しんでいる方へ少しでも助けになりたいという想いから、最後の日本ツアーに伴いチャリティーオークションが開催されました。
DeNAの子会社である株式会社モバオクが提供するインターネットフリマ・オークションサービス「モバオク」にて開催された本チャリティー。必要経費を差し引いた全額が一般社団法人全国パーキンソン病友の会へ寄付され、パーキンソン病患者への支援に充てられます。
この記事では、本チャリティーオークションの立役者であり、MR.BIGのレーベル担当を務めるEVOLUTION LIMITED 山﨑 賢太郎氏をお招きし、開催に至った経緯やMR.BIGとパット氏の家族の想いを伺いました。
ーーパット氏のドラム・セットが出展されたことでも話題になりましたが、最後の日本ツアーとMR.BIGスペシャルチャリティーオークション開催の経緯を教えてください。
山﨑氏:日本ツアーの開幕を翌月に控えていたある日、MR.BIGのマネージャーさんから突然電話が入りました。用件は、「パットの遺品であるドラム・セットをオークションに出すことでパーキンソン病で苦しんでる方に寄付をできないか」という、パット氏の奥さまであるカレン氏からの提案でした。
ーーパット氏の奥さま自らチャリティーオークションの打診があったのですね。
山﨑氏:そうなんです。ファンへのサプライズとしても喜ばしい提案でしたし、やるからにはツアー期間中の開催が注目が集まり望ましいことは明らかだったのですが、ツアー直前の1ヶ月は僕らの手が回らない状況で……。おまけにチャリティーオークションの準備に何が必要かも想像がつかなかったので、正直、ツアーと同時進行は難しいだろうと考えていました。
この時点では出品がドラム・セットのみだったので、咄嗟に思い浮かんだのは所謂オークションハウスに資産家を招く光景でした。しかし、今回はできるだけ多くのファンに参加してもらいたかったため、他の手段を調べていくなかでモバオクを含めた数社のインターネットオークションのサービスに出会いました。
ーー数社のオークションサービスの中から、モバオクを選んでくださった決め手というのは。
山﨑氏:各社の情報をまとめMR.BIGのマネージャーを通し判断を仰いだところ、モバオクに決定しました。理由は、おそらく出品手数料がかからなかった点だと思います。ご家族としては、1円でも多くパーキンソン病の方々へ届けたいという意向でしたから(※)。
主催側として何よりも助かったのは、モバオクさんがツアーと同時進行できるようサポートしてくださっただけでなく、多くの方に参加いただけるような出品提案やプロモーション提案などをしてくださったことです。
例えば、1枚300円の限定ステッカー。高額商品だけが並ぶのでは参加できる方が限られてしまうのではと、気軽に参加できてかつ数量に制限のないアイテムを用意しました。こういった提案もあって、想定していたより多くのファンの皆さまにチャリティーオークションに参加していただくことができました。
※後日、落札総額の約520万円から諸経費を除いた全額が寄付された。
ーー実際にチャリティーオークションを開催してみて、反響はいかがでしたか?
山﨑氏:MR.BIGが最後のツアーということで注目度がもともと高かったのですが、チャリティーオークションがプラスされたことで、音楽系のWEBメディアを中心にポジティブな反応をいただき、多くのメディアから取り上げていただきました。その効果もあって、多くのファンに知っていただける大きな手助けになったのではないでしょうか。
ただ、メディアの力で期待値が高まっていたことは、大きなプレッシャーでもありました。ここまで大々的に注目を集めておいて、いざ開催してみたら全然参加者が集まらなかったらメンバーと家族をガッカリさせてしまう、どうしよう……。と、チャリティーオークションが始まってからも一番の目玉商品として出品したドラムセットが入札されるまでは、ツアーに帯同しながら常にモバオクで動向を見守っていました。ドラムセットが高額商品だったこともあり、どうしても不安があったんです。
でも、そんな心配は杞憂に過ぎませんでした。150万円からスタートしたドラム・セットは、初日から入札希望が入りましたし、その他の出品アイテムも順調に入札が決まっていきました。
メンバーのサイン入りアイテムやビデオメッセージといったレアアイテムだけでなく、みんなで参加できるアイテムも用意したことですそ野も広がりましたし、「パーキンソン病の方々への支援」という活動に共感した方からも多く参加していただけました。
――ファンだけでなく、想いに共感した方々の参加もあったんですね。
山﨑氏:ファンへの恩返しとパーキンソン病に苦しむ方々への支援をしたい。その想いが、ちゃんと波及されていたことを実感しました。MR.BIGやカレン氏の想いに共感してくださった方、ご家族がパーキンソン病で苦しんでいる方、代表曲「To Be With You」を知っている程度だったけどチャリティーオークションを通してファンになった方など、もともとのファン以外の方々も参加してくださったんですよね。
寄付先のパーキンソン病友の会さまにとっては、パーキンソン病を知ってもらうっていうことも重要だったと思いますし、大きな励みになったのではないでしょうか。
ーーチャリティー・オークションの盛り上がりは、MR.BIGとご家族にどう届いてますか?
山﨑氏:今回のツアー期間は特にファンの気持ちがダイレクトに伝わってきた点で、チャリティーオークションの存在が大きかったはずです。モバオクさんに届いたファンからのメッセージを共有するのを、メンバーも楽しみにしています。
日本ツアー最終日には、メンバーの家族と一緒にカレン氏と、パット氏の息子のパトリック君もステージ上に登場するという、MR.BIGからファンに向けたサプライズが用意されていました。その後、パトリック君にステージでの感想を聞いたら、「お父さんがいたよ。」と言っていて、パット氏が見た光景を見ることでお父さんの存在を感じたようです。今思い返しても目頭が熱くなります。
実は、カレン氏はとても謙虚で、オークションページに自身のコメントを載せることも遠慮していましたし、メディアの取材も全て断ってきていたので、まさか最後にステージ上で会えるとは思いませんでした。日本での熱量に心が動いたのかもしれません。
席に限りがある通常のツアーだけでは、ここまでの熱気は起こせていなかったと思っています。チャリティーオークションが、みんなが参加できる受け口を担っていたことで盛り上がりの波及に繋がったのではと考えています。
ーー山﨑さんご自身は、今回のチャリティー・オークションをどう振り返りますか?
山﨑氏:最後の日本ツアーと聞いた瞬間から、花道をどう作るかを考えてやってきました。チャリティーオークションが有終の美を奏で、日本とMR.BIGの絆を繋ぐ重要なアクセントになったことを確信しています。
音楽業界に長くいますけど、ここまで強固に人の心と心が結ばれるような機会は、めったにありません。バンドとファンの絆の強さに改めて気づかされましたし、ファン同士の交流やパッド氏のご家族とファンとの交流も生まれていたことも嬉しかったです。
今回はパーキンソン病の方々への支援という大きな目的がありましたが、今後はアーティストとファンを繋ぐコミュニケーション場としてモバオクを取り入れながら、社会貢献に活かしていくのもいいですね。
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