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元Jリーガーである望月重良(現:スポーツクラブ相模原 代表取締役会長)によって創設され、地域リーグを経てわずか6年でJ3リーグへ昇格したプロサッカークラブ、SC相模原。
DeNAは、これまで野球やバスケで培ってきたプロスポーツマネジメントのノウハウを活かし、チームやビジネス力の強化や地域への貢献拡大などさらなるチームの成長を目指し、2021年2月末よりスポーツクラブ相模原が運営するJ3クラブSC相模原に経営参加しました。
参画してから約1年が経った現在。生まれた変化や、今後どのような展望を描いているのかを、会長を務める望月 重良さんにお話を聞きました。
――まずは、プロのサッカー選手からクラブチーム「SC相模原」を立ち上げるに至った経緯を教えてください。
望月氏:サッカー選手の現役のときから、セカンドキャリアとして監督かコーチを目指していました。
選手を引退してからは、解説をしたりサッカー教室で子どもたちにサッカーを教えていたりしてたのですが、そんなとき、たまたま足を運んだ相模原で食事をしていたお店の店主から「子どもたちがサッカーに触れ合う場がないからサッカーチームを立ち上げて欲しい」とお願いされたんです。きっかけはそんな会話からです。
望月氏:そこから数日真剣に悩みましたが、この街を象徴する何かをつくりたいという気持ちが強くなったので決心し、すぐに動き始めました。
会社を立ち上げ、選手も集め、まずは社会人の県3部リーグに登録しました。
――クラブチームの立ち上げから大切にしていることはありますか?
望月氏:なによりもまず、相模原にプロのサッカークラブを作りたいという想いですね。また、自分が11年間プロサッカー選手として活動してきた中で、ファンやサポーターの存在はとても大きかったですし、スタジアムが街のシンボルになり、コミュニティの場になることは実感していました。なので、SC相模原も街のシンボルになり、地元の皆さんがチームを応援してくださるようなチームにしていきたいということも大切にしています。
望月氏:プロチームをつくるという部分では、J1リーグというと日本代表も多数いてみなさんにも馴染みがあるかもしれませんが、まずスタートしたのは社会人の県3部リーグ、Jリーグの一番下部であるJ8です。そこから勝利を積み上げてきました。プロリーグを目指すからには勝たないといけませんから、勝利にこだわった結果、最短の6年でJ3に昇格しプロチームとなりました。
――すごい!先日試合を観にいった時にたくさんの家族連れのお客さまがいた気がしました。地域にも根付いていると感じましたがいかがですか?
望月氏:ありがとうございます。まずお客さまにスタジアムへ足を運んでもらうきっかけをつくりたかったので、さまざまな施策を実施してきました。
例えば、元日本代表の高原直泰さん、川口能活さん、稲本潤一さんをチームに招いたり、元日本代表の選手を集め地元の中学生や高校生との試合を開催するなど、相模原だけでなく全国に認知してもらえるような施策です。
最初は公式戦でも、20人程のサポーター・お客さましかいなかったとこからスタートしていますが、ここ最近を振り返ると1万人を超えるような試合がありました。
少しずつチームの勝利や施策を積み重ねてきた結果、チームを通じたコミュニティづくりや、街の誇りになるようなチームにできつつあると思います。
――チームを確立してきた中で、DeNAとタッグを組むことになった経緯を教えてください。
望月氏:Jリーグが掲げているスローガンに「Jリーグ百年構想」とありますが、SC相模原の10年先や20年先を考えたとき、またJ2からJ1に昇格し、将来はアジアに誇れるようなチームを目指す中で限界を感じていました。
資本力やスポーツビジネスのノウハウなどがないと、これ以上クラブ規模を大きくするのが難しいのではないかという壁にぶち当たったところに、DeNAとの出会いがあり、意見も合致し経営に参画していただきました。
――タッグを組むことで期待することや、望月さんの考えるそれぞれの強みを教えてください。
望月氏:当時、僕が抱くDeNAのイメージは、IT企業というよりは「横浜DeNAベイスターズ」のイメージが強かったんですね。
スポーツビジネスに長けていて野球やバスケを通じた知見があり、IT企業ですからマーケティングやデジタルといった強みももちろんある。これからの時代のスポーツクラブに必要不可欠な要素が揃っていると思います。
SC相模原の強みは、ゼロから立ち上げ積み重ねてきた結果、今の位置にまで辿りついたこと。そして地域に根付いている強みがあります。なので、双方がうまく合致すればいいシナジーが生まれると確信しています。
――DeNAが参画し1年ほど経ちましたが、変化などはありますか?
望月氏:一番大きく感じているのは、ブランディング力です。
シンプルなことですが、意外とできていなかったチームカラーの統一やそれに伴ったデザインのブラッシュアップなど、細かいところの積み重ねでチームのブランディング力が上がったことを実感しています。
望月氏:また、スポーツのエンターテインメント力を引き出した雰囲気づくりや施策です。
お客さまに喜んでもらえるようなスタジアムグルメや、イベント・音楽・スムーズな導線づくりなど、一つ一つ細かいですが、とても大事だと改めて気づかされました。また、お客さま目線に立って企画され推進されていることも大きな学びです。これらは実感としてだけではなく、集客数など結果にも反映されているんですよ。
こういった結果を出す過程で、会社の雰囲気も変わったと感じる部分があります。
企画や施策を推進するにあたって綿密に議論を重ねるので、部署ごとの密度が高くなりました。僕もそうですが、これまでいた既存の社員もスポーツマーケティングやビジネスに対して刺激や学びが大きくあったと思います。
――今後さらに伸ばしていきたいところを教えてください。
望月氏:相模原は、関東近辺でリニア中央新幹線も通り、非常にポテンシャルのある場所です。またSC相模原は、ホームタウンを海老名市・座間市・綾瀬市・愛川町にも広げました。ホームタウン全体の人口が100万人以上になりますので、集客増加にも繋がりますし、ビッグクラブになるポテンシャルは充分にあると思っています。
このポテンシャルを活かして、日本に誇れるようなトップクラブに割っていけるよう、しっかり中長期を見据えてクラブの成長を促していきたいです。
相模原という街、そしてSC相模原にはその可能性があると感じています。
――その中でDeNAにより期待したい部分があればお伺いしたいです。
望月氏:相模原のシンボルになるようなクラブチーム、地域に根付いたスポーツにするためには多くの方にスタジアムに足を運んでいただく必要がありますし、クラブをより大きくしていかないといけません。
その為には、スポーツビジネスとして捉える必要はありますし、数字などもしっかり注視する必要があります。
まだスポーツビジネスとしてクラブが自立し、成功しているところはあまりないので、サッカーもスポーツビジネスとして成り立つんだという姿を、SC相模原が先頭に立ち、見せていけたらと考えています。
それには、やはりDeNAと組んだからこそ見えてくる可能性や実現性があると思います。双方がしっかり力を入れて頑張っていきたいところです。
望月氏:神奈川県内だけでもサッカークラブが6チームもあるので、よく神奈川でチームとして生き残れるのかという質問をいただくのですが、充分プロのクラブチームとしてやっていけるポテンシャルがSC相模原にはあると考えています。
相模原の人と接していて、彼らから「プライド」を感じました。だから、SC相模原が街の象徴になればもっと熱狂的なファンサポーターが増えると思うし、一緒に成長させてもらえるのではないかとも考えています。そこを始まりとして、スポーツの枠に留まらず、地域の課題や社会問題の解決に寄与できたら嬉しいです。僕はやっぱりサッカーやスポーツにはそのポテンシャルがあると思っています!
●望月重良
1996年に入団した名古屋グランパスエイトをはじめとして、プロサッカー選手としてJリーグの舞台で活躍。日本代表として国際Aマッチに14試合出場し、2000年のAFCアジアカップ決勝戦では決勝ゴールを決め、優勝に貢献。
選手を引退し2008年にサッカークラブSC相模原を立ち上げ、代表取締役会長に就任。
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