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横浜DeNAベイスターズは23年シーズン、主催試合において約230万人を動員し、1試合平均では球団史上最多となる32,126人を達成しました。今シーズンでは6月7日の福岡ソフトバンクホークスとの日本生命セ・パ交流戦にて球団最速で100万人を動員。横浜スタジアムに熱気が戻ってきました。
しかし、運営においてコロナ禍からの脱却は厳しい道のりでした。コロナが収束し来場制限が撤廃されるも、22年シーズンの観客動員数はコロナ禍以前の8割程度。コロナ禍が人々の生活にもたらした変化は、球場観戦の機会を減少させる大きな痛手となりました。
では、私たちがどうやって巻き返しをしていったのか。本記事では観客動員数をV字回復させるまでの軌跡と野球外での挑戦を、お客さまを魅了する賑わいづくりを軸にご紹介いたします。
コロナ禍が収束し、ようやく来場制限が撤廃された22年シーズン。ベイスターズが3年ぶりにクライマックスシリーズへ進出するなど、喜ばしいニュースがたくさんありました。一方で、観客動員数はコロナ禍前の19年シーズンから約2割少ない、178万人程度でした。
背景の一つに、コロナ禍がもたらした社会変化があります。テレワークの普及や外出機会の減少など、この3年間で人々の生活は大きく変わりました。仕事終わりに同僚と連れ立ってスポーツ観戦や飲食を楽しむといった行動パターンが崩れたことは、「アクティブサラリーマン※戦略」を強みとしてきた私たちとって大きな障壁となりました。
加えて、横浜スタジアムでは東京五輪のための増築・改修工事により、最大収容人数が6,000人分増席されています。球場を満員の観客で沸かせるには、今までの方法だけでは何かが足りない、そんな状況でした。
観客動員数のV字回復させるためには、どんな層に対してどうアプローチしていけばいいのか。私たちは戦略を見直し、新たな舵取りをして23年シーズンを迎えました。
※アクティブサラリーマンとは、「仕事が終わってから飲みに出かけたり、土日もアウトドアやスポーツを楽しんだりする層」として球団が独自に定めているもの。従来はこの層にむけてマーケティングやイベントなどを積極的に展開していた
まずは昔ながらのベイスターズファンに、球場で応援することの醍醐味を再認識してもらうための施策を考えました。ベイスターズが日本一に輝いた98年シーズンのスローガン「GET THE FLAG!」を冠したイベントや、選手によるプロデュース企画など、チームと選手の魅力を引き出すことを意識したイベントを実施しました。
並行して、潜在的なファンへのアプローチも強化。野球観戦とは縁がなかった方が思わず来場したくなるようなきっかけを作ろう、さまざまなターゲット層を想定してそれぞれの琴線に触れる体験を提供しよう、と心がけ、券売需要などのデータ分析などを丁寧におこないました。そして、そのデータを軸にさまざまな層に向けたイベントを設計し、試行錯誤しながら実現させていきました。
試合のイニング間におこなわれる、オフィシャルパフォーマンスチームdianaとのリレー対決が楽しめるイベント「Hisense ハマスタバトル」は、野球ルールやチームに精通していない初心者層でも楽しんでいただけるイベントの代表例です。リレーというルールの分かりやすさが多くの方に受け入れられ、今シーズンも続く定番イベントとなっています。
他にも、子ども向けの「キッズSTAR☆NIGHT」や女性を対象にスペシャルユニフォームがもらえる「YOKOHAMA GIRLS☆FESTIVAL」、有名キャラクターとのコラボイベントなど、ほぼ毎試合で何かしらのイベントをおこないました。
主催試合において約230万人を動員できたのは、こういったイベント実施の積み重ねと、選手のプレーで人々を魅了したこと、飲食や入場時の体験価値向上に努めたこと、SNS運用で話題性あるコンテンツ発信をおこなったことなどが実を結んだと考えられます。
DeNAと横浜スタジアムでは、球団運営やエンタメ事業の経験を活かし、スポーツを軸とした賑わいのあるまちづくりにも積極的に取り組んでいます。
その一環として、プロ野球のオフシーズンにも関内・関外エリアに活気を生み出すことを目指し、冬のイルミネーションイベント「BALLPARK FANTASIA」を2020年からスタート。4回目となる2023年度は、幅広い年齢層の方々に楽しんでもらえるよう昼の部のアトラクションを拡充。総勢11万人ものお客さまに来場いただきました。
同イベントと連動しておこなった街歩きイベント「歩いて探検!見つけて体験!まちあそび人生ゲームin関内※」では、参加者が巡るマスを関内・関外エリアの飲食店や観光スポットに設定することで街での回遊を促進しました。
今年からは、音楽ライブなどのイベント興行時に、アーティストとファンのタッチポイントの創出や、ファンの方々にアリーナ周辺の飲食店や横浜市内の観光スポットを巡っていただくような取り組みにも励んでいます。
※横浜市旧市庁舎街区活用事業を手掛ける企業コンソーシアム(通称「KANNAI 8」)からDeNAが企画・運営を受託し、開催に至った
こうした賑わいづくりの先にあるのは、関内駅前地区の再開発です。横浜市旧市庁舎街区活用事業※により、市庁舎があった60年間は行政活動の中心であった関内が、エンターテインメントとイノベーションの拠点へと生まれ変わります。
本街区と横浜スタジアムがデッキで直結され、駅前の商業ビルや日本大通りから中華街方面へと人々を繋ぐ導線となります。これにより、球場に訪れるお客さまの体験価値の向上や、街全体の経済活性化が期待されます。
DeNAでは2011年からプロ野球に参入し、ファンの方々に横浜スタジアムへ実際に足を運んでもらえるように試行錯誤しながら、23年シーズンは主催試合において約230万人の観客動員数を記録しました。この賑わいを街に波及させ、ゆくゆくは年間を通じて活気を生み出していく。横浜市旧市庁舎街区活用事業はその1歩であり、行政や多くの企業と協力しながら精力的に取り組んでいます。
まちづくりに参画する一企業として、その街が積み上げてきた文化や歴史を尊重しながら、それを長年支えてきた地域の人たちと手を取り合い、自らも地域の一員になって本気でのめり込んでいく姿勢が大切だと思っています。
横浜スタジアムと横浜DeNAベイスターズは地域の大切な公共財です。その大切な財産を「お預かりする」という意識を持ちながら、そこにさらなる価値を創造し、地域へ還元して参ります。
※三井不動産株式会社を代表企業として、鹿島建設株式会社、京浜急行電鉄株式会社、第一生命保険株式会社、株式会社竹中工務店、株式会社ディー・エヌ・エー、東急株式会社、星野リゾートの8社が関わるプロジェクト
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