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2024年4月1日、DeNAに新卒88人が入社しました。うち、エンジニア63名が約3ヶ月の新卒エンジニア研修を経て、8月より各事業部へ配属しています。
DeNAの新卒エンジニア研修が目指しているのは、「様々な不確実性に対応しつつ社内外の変革をもたらすこと」を期待する新卒たちに、そのための基礎を獲得してもらうことです。
研修のメインコンテンツの「社内プロダクト開発」では、多数のステークホルダーを巻き込みながら社内の課題を探すところから開発実装までの一連の工程を研修期間内で実施。3年目となる今年は、8個のプロダクトが社内で実運用されています(2024年09月10時点)。
新卒エンジニアが、課題の本質をどう捉え、どんなサービスで解決していったのか。開発後、実際に社内で使われているプロダクトの一部紹介とともに、DeNAが考えるエンジニア人材の育成についてご紹介します。
2024年の新卒エンジニア研修のテーマは、『ようこそ未来の変革者たち〜不確実な世界のおもしろがり方〜』。変革をもたらすには何が課題か、どう解決するか、誰とならできるかを絶えず考えることになります。
そのための行動指針として「問題発見と解決」「継続的学習」「ネットワーク活用」「フィードバック探索」を掲げました。新卒が主導し実装までのプロセスを踏む過程で、他部署や既存社員との連携(ネットワーク活用)や、フィードバックにより成果を高めることを課題とし、社内プロダクト開発を実施しています。
社内プロダクト開発は「社内の課題を解決するプロダクト」をテーマに、社内の課題を抽出し、それに対応するツールやサービスの開発をおこなってもらいました。実装がゴールではなく、社員によって継続利用されるなどの有用性が求められます。
また、一般にプロダクトをリリースするためには、法務やセキュリティー観点の考慮、総務やITインフラ部門との調整、納期に間に合わせるためのスケジューリングなど、関門がいくつも存在します。本研修においても実際の現場で必要な開発以外の要素も体験してもらうため、関係部署との連携や巻き込みを開発と並行しながら3ヶ月間という限られた期間内で開発に臨んでもらいました。
サポート体制としては、各チームにメンターが付いたほか、総勢60人の先輩社員が研修全体のメンターを担いました。小さな疑問や不安を気兼ねなく相談できるように、24新卒に最も近しい立場である23新卒がメンターとして参加しています。
今年は全職種が参加する新卒全体研修において、新卒とチームメンターが考えた企画18個の中から厳選された8個の企画を、新卒エンジニア研修で新卒メンバーが主導し開発・実装しました。その中から、多くの社員に活用されているプロダクトの一部をご紹介します。
最初に紹介するのは、会議室予約に関する課題を解決するプロダクト「QuickMTG」です。DeNA社内では会議室を予約するためにカレンダーツールが使用されていますが、会議室予約のためのUIとしては最適化されておらず、手順が煩雑で時間がかかるという課題がありました。
QuickMTGはそういった課題を解決すべく開発されたSlackアプリで、従来のカレンダーツールで約15秒かかっていた会議室予約を最速で3秒に短縮しました。また、利用人数に応じて最適な会議室を自動的に選択する機能が多くの社員から高く評価されています。
さらには、予約の取り消し忘れによる空予約にも注目。予約・キャンセル漏れのリマインド機能により、会議室の稼働率の向上に貢献したことが調査によって立証されました。
開発開始から2週間で基本機能を備えたα版をリリースし、その後もユーザーのフィードバックを基に毎週アップデートを繰り返してきました。その結果、特にニーズの高かったフォンブース(一人用のオンライン会議用ブース)の予約機能を充実させるなど、ユーザーの要望に応じた機能強化を実現しています。
フルリモート体制の中でも出社社員による会議室需要は高く、こうした社員の間でQuickMTGは重宝されています。
続いて、作業依頼を一元管理するプロダクト「dandan」です。伝票精算や勤怠管理、法務確認……などといった申請をおこなう際、社内ツールが複数あることや承認期限がばらばらであることなどから、承認者・作業者・依頼者のどの立場にとっても進行管理が煩雑になっていました。
承認依頼の通知がメールやチャットツールからバラバラに届くため承認者の負担も重く、リマインドを送る側も対象者のリストアップや連絡を送る作業にも多くの時間が割かれていました。
この課題を解決するために、作業依頼を画面上で一元管理し、締切のタイミングに合わせてグルーピングできるプロダクトを開発。リマインド作業の自動化をしたことで、依頼者・承認者・作業者の大幅な効率化を叶えました。
DeNAが他業種や他領域が集まるコングロマリットな企業であることが、個別対応を要するなど煩雑さを助長し、開発面でもハードルとなりました。例えば、社内の主な連絡手段であるslack内に全社員へ通知を送れるワークスペースを新設するなど、ITインフラを支える部門へ働きかけて環境整備からおこないました。
本格導入後は、利用者から「使い方がわかりやすく便利」「依頼・リマインドにかけていた50時間/月のうち、15時間/月は減らせる」といった声をいただいています。
最後に紹介するのは、生成AIプラットフォーム「SAI」です。DeNAでも生成AIの社内活用を推進してきましたが、「個人利用では法務チェックが煩雑」「自分の業務に適応できるユースケースがわからない」「指示文章の知見がなく生成AIを最大限活かせない」などといった障壁から、一部のユーザによる活用に留まっていました。
そこで、法務上の注意事項を明瞭化させ、使用用途に合わせたアプリの実装や分かりやすいUIUXに拘ることで、専門知識なしで誰もが使いこなせる生成AIプラットフォームの提供を目指しました。将来的に、社員一人ひとりが生成AIを独自に応用できるスキルなどをSAIを通じて習得してもらうことを理想としています。
このプロダクトに関しては、既に生成AIプラットフォーム化の構想が社内で走っていたなか、新卒全体研修でも「生成AIの社内活用率の底上げ」が課題としてあがったため、共同チームを組んで進められました。
プロダクトオーナーを新卒が担い、ステークホルダーとのコミュニケーションやマーケティングなどをメンターが担当。チームメンバー以外にも、デザイナーや法務、セキュリティ部門、ITインフラやデータ基盤を支える部門......と、非常に多くのステークホルダーが参画しています。
ステークホルダーの多さから、タスクが浮いたり作業漏れによる遅延が発生しないよう、進行管理が要となった本プロジェクト。それぞれの責任や役割を記載したインセプションデッキを作成し、全体で共通認識を持てるように常に明瞭かつ最新情報に保つことでリリース予定日に間に合わせたスピーディーな開発を実現しました。
Go言語やUnityなどの技術的な質疑応答やコード実装時のサポートをする「◯◯マスターアプリ」や、議事録や研修資料を登録することで自分の業務に特化した生成AIコンテンツを作成できる「ナレッジアプリ」など、アプリコンテンツも多くの社員から支持されています。
DeNAでは、予測不可能な状況に直面しても状況を前向きに捉え、真の課題を見つけて解決に向けて積極的に動ける人材が求められてくると考えています。また、多数のステークホルダーを擁する大きな組織の中で社内外へ価値を提供するためには、技術力を高めていく姿勢だけでなく、ステークホルダーや仲間を巻き込んでいく力が必要です。
そのため、「技術力以外に複合的なスキルが求められる企業ならではのハードルを一通り経験すること」「研修期間中に関係部署のネットワークを構築すること」「人を巻き込みながら大きな問題を解決していく達成感を得ること」を目指しました。
新卒エンジニア研修はその力を育むための実践の場であり、かつ、研修で培った人間関係も大切にしてほしいという願いが込められています。一人ひとりが主体性をもってこういった経験を重ねながら、DeNAにおける「モノづくり」力をリードし、世の中にデライトを届けて参ります。
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