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DeNAがJリーグに参入し、2シーズン目を迎えたJ3サッカークラブSC相模原。今期、シーズンを通し、プレーオフ圏内を視野に入れた位置にいるなど安定した力を見せています。そんな中、7月に開催された「SAGAMISTA ENERGY FES 2024 Supported by ギオン(以下、エナフェス2024)」では、参入後、最多入場者数を更新したといいます。
夏場のチーム編成の変化、自分たちの立ち位置を把握し変化させたマーケティング方法とともに、地域との関わり方について、代表取締役社長 西谷 義久に聞きました。
ーー2024シーズン好調な滑り出しから監督交代と動きが多かったですよね。まずは半期を振り返っていただけますか?
西谷:昨シーズンは結果だけでなく、プロセスにおいてもさまざまな課題に取り組んできた状況があった中、一連の反省を踏まえて抜本的に見直す必要があると判断し、チームをマネジメントする組織体制を整備すべく、スポーツダイレクターに平野 孝さんを迎えました。
序盤からのリーグ戦の成績では、勝ち点を積み上げられていたものの、そのときの試合の勝ち負けだけではなく、先を見据えての重要指標に目を向けると、このままではこの先の状況が厳しくなる見通しでした。
昨年は課題となっていたことが、今季はスタートから組織的にしっかりと取り組むことができていたこと。そして何よりも今季は昇格すると決めて臨んだシーズンですので、残りの試合も踏まえてそのタイミングでのテコ入れが必要だと判断し、監督交代を決断しました。
ーー監督交代は大きなニュースになっていましたね。西谷さんから見て今のチームはどのように感じますか?
西谷:シュタルフ 悠紀リヒャルト監督は、クラブとして掲げている「ENERGY FOOTBALL」というコンセプトを体現している監督だと思います。戦術的な観点は言わずもがなですが、過去にトレーニングマッチで相手チームの監督をされていたときも、大雨の中でもピッチサイドにずっと立って選手を鼓舞し続けている情熱的な姿が印象的でした。SC相模原の監督に就任してからも、素晴らしいリーダーシップを発揮し、チームのスタッフ・選手を率いてくれていると感じます。
ーーそんな中、7月には毎年恒例のエナフェスが今年も開催されました。エナフェス2024について教えてください。
西谷:エナフェスは、SC相模原きっての盛り上がりをみせる夏の一大イベントです。入場者への限定ユニフォームのギブアウェイや各種イベント、パートナー企業の皆さまを巻き込んださまざまな催し物がおこなわれます。今年は、大変嬉しいことに事前にチケットが完売。来場者目標を大きく上回る7248名のお客さまにご来場いただき、DeNAが参入してから最多の入場者数になりました。
ーー今回入場者数が想定を超えた理由についてどのようにお考えでしょうか。
西谷:チーム成績が良いことで、皆さまからの注目度が以前よりも得やすいことはあると思いますが、今回の来場者アンケートでは「昨年は一度も観戦したことがない」と回答された方が29%いたことなど、新規来場者にリーチできたという手応えを感じました。今回からプロモーション期間を長めにとるなど、マーケティング方法を変えたことも功を奏したのかもしれません。
7月末開催のエナフェスを5月のゴールデンウィーク明けから告知し始めるなど、プロモーションの仕掛けの期間が以前よりも長く取れたことで多くの方の目に触れる機会が増えたと思います。お伝えする情報を少しずつ解禁し、段階的に盛り上げていく計画をきちんと立てて実行することで、ワクワク感を保ったままイベントに繋げられた気がします。
ーー地域企業のブースも増えたと聞きました。
西谷:昨年から協賛してくださっている企業さまが自らブースを出店してくださり、スタジアム外周エリアで縁日のような雰囲気をつくり出すのに協力してくださいました。興行を主催するクラブではなく、パートナー企業の皆さまと「一緒につくる」イベントになってきたことで、地域を巻き込み盛り上がりがどんどん伝播していく様子を目の当たりにしました。
また、企業の方からも、来場されたご家族連れの中でもお子さまが喜んでくださると、企業のプレゼンスや自社組織にとっても良い影響があるなどの感想をいただき、一定の手応えを得られてきたことが嬉しいです。
エナフェス2024の成功の裏には、スタッフの地道な取り組みが成功に繋がったとも考えています。早朝や夕方の小学校をクラブマスコットのガミティと一緒に訪問し、登下校する子どもたちへの挨拶やふれ合い活動、限定ユニフォームのデザインもとても好評でした。組織としての成果を着実に挙げていくためにも、一人ひとりのスタッフが自身の領域の仕事に全力で向き合い、時間を掛けて生きた経験を積んでいくことも大事にしていきたいですね。
ーーマーケティング方法についても見直しを図ったと聞いていますが、詳しく教えてください。
西谷:今の私たちは、大々的なプロモーションやマーケティングをやるよりも、SC相模原に直接触れていただくことを大切にし、機会を増やしていったほうが成果に繋がりやすい段階にあると考えています。
そこで、コロナ禍以前に実施していた、商店街や小学校などへ選手と訪問するなど、リアルでのマーケティングやプロモーション活動を“復活”させました。また、エナフェスの協賛企業さまには、ギブアウェイのユニフォームを営業担当と選手が共に直接お渡しに伺う取り組みもおこなっています。
西谷:また、今年からホームゲームでは試合終了後、勝敗の結果に関わらず選手が ハイタッチで観客の方をお見送りするなど、来場者の方と直接触れ合う機会を増やす取り組みをしています。SC相模原への興味や愛着を以前よりもさらに持っていただける方が増えたように思います。
ーー選手の協力も頼もしいですね。そのあたりの意識の共有はどうされているのですか?
西谷:まずは選手に話をしてその必要性を理解してもらっています。相模原市出身のキャプテン瀬沼 優司選手が中心となり、こういった部分もプロサッカー選手として自分たちの仕事だとという意識を持って取り組んでくれていると感じます。
選手も、サガミスタや地域の皆さんと直接触れ合うことで、自分たちが何かパワーを届けようとしていたけれど、結果として自分たちが元気をいただいて戻ってくることも多く、行ってよかったといった感想が多く聞かれます。直接触れあってのコミュニケーションはコロナ禍前からSC相模原が大切にしてきた取り組みであり、歴史です。今後チームがどれだけ成長していこうとも、こういった取り組みは今後も必ず続けていきたいです。
ーー地域密着についていろいろと考えていらっしゃるのがわかりました。他に、どんなことを見据えているのか教えてください。
西谷:私たちはホームゲームにおいて「ENERGY FOOTBALL」というコンセプトを掲げていますが、日々の活動においては「 地元に必要な未来をつくる」というコンセプトのもと、「ジモトアイプロジェクト」を立ち上げ地元の社会課題解決への貢献に取り組んでいます。
例えば環境保全ですね。相模原市には豊かな自然環境があります。森林破壊を防ぐための取り組みというと、木を切らず苗を植えようなどとイメージするかもしれませんが、森のメンテナンスを行き届かせるという視点での環境保全もあります。森の循環が適切におこなわれず、滞ってしまうことで、台風や大雨をきっかけに土砂災害を引き起こしてしまうリスクがあるんです。
そこで、まず今年に入り相模原市と連携協定を結び、森の循環促進に関わる具体的な取り組みも少しずつ開始しているところです。先日も、サガミスタや選手、企業の方々と一緒に「つくいの森」へ行きました。
また、ホームゲーム開催時には未開封の余剰食品を回収したり、啓発活動をおこなうなど、フードドライブの取り組みも継続して実施しています。このように、「地元のソフトインフラ」の役割を担うべく、社会課題解決の貢献に向けても力を入れていきたいです。
ーーでは、最後に今シーズン終盤に向けてメッセージをお願いします。
西谷:最後のホームゲーム5試合は昇格に向けたブーストをかけられるよう、SC相模原をより一層応援いただくムーブメントをつくりたいと考えています。大きなことを成し遂げられるような情熱の渦をつくりたいです。
たくさんのサガミスタの皆さんがスタジアムへ訪れ、応援のパワーをチームに注いでいただき、チームはそれに応え、最後に皆で一緒に喜べる最高の瞬間をつくり出したいと思います!
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