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DeNAは今年7月、人工知能(AI)を使った事業を本格的に強化することを発表しました。 AI事業の強化で、DeNAは今後どう変化し、どんな未来を目指すのか?代表取締役社長兼CEOの守安功と取締役の川崎修平が社員に語った内容をお届けします。 (この対談はDeNA新卒採用サイトとの同時掲載です)
ーーAI事業強化で、DeNAとして5年後、10年後何をめざしていきますか?
守安:DeNAで15年やってきて、あのタイミングでインターネット業界に入ったからこそ、いまがあると思っているのね。1999年はネットバブルではあったけど、まだ「インターネットって何やねん」とも言われていた。いまのAIとかディープラーニングは15年前当時のインターネットみたいな状況。そこに張っておくことで、15年後に振り返ったときに「あのタイミングでAIに参入したから、いまのDeNAがある」となっていたい。
ーー第2の創業に近いですね。
守安:現時点で「AIで何ができるんですか?」と暢気なことを言っているのって、1999年に「インターネットって何ができるんですか?」って言ってるのと同じようなもの(笑)。当時はもうAmazonとかYahoo!とかもあったので、1999年は後発だった。それでも市場はどんどん大きくなったので、遅すぎはしなかった。
川崎:実際にAIを使って価値を出すことを今からやって、5年後にはエンジニアだけじゃなくて皆が分かってる状態になってないといけない。
守安:まずAIについて理解しないとそもそもアイディアも生まれようがない。いまのAIが得意なこと、苦手なこと、AIがどう発展していくか、まずはちゃんと理解することが必要。
ーー今回「AI事業を強化」と外部に発表しましたが、以前からDeNAは各事業でAI技術を使っていましたよね?
川崎:はい、大量のユーザアクションを収容する日本最大規模の分析基盤を生かして、以前から、サービス分析やレコメンデーションを中心に社内で実績を積み重ねてきました。今回は、体制を改めて強化して、AI導入を会社全体としてきちんと育てていきましょうという決定です。
守安:他社と一緒にやる領域もあれば、社内で独自にAIのスキルを持ったエンジニアを採用・教育して、DeNAの中だけでやっていくこともある。
川崎:まずデータサイエンスのチームに十数人AIを担当するメンバーを置いて、宣教師的な役割で実際に各事業部に入りこませていく形で進めると思います。いまアナリストが各事業部に入っているような感じで、各事業部のメンバーと「こういう風に役に立つんだ」とか「こういう風に使えるんだ」と一緒に考えていくなかで浸透させたいと思っています。 コアな技術としてやろうとしているのが画像認識、Mobageチャットの対話AIプロジェクトでやっている自然言語解析、あとちょっと粒度が違うんだけど、強化学習全般。3つのジャンルに分けて、それぞれについて重点領域として強化させようと考えています。
ーーDeNA社内でもAI人材を採用・育成するわけですね。AIの活用は、DeNAの事業に向けてなのか、外部へのソリューションとして提供するのかどちらでしょう?
川崎:その質問はよく受けます。「社内でも使うけど、インターネットが強いからDeNAが様々なパートナーと組めたように、それぞれが持っていた強みだけでは出なかった新しい産業を作っていく」と僕は説明しています。ソリューション提供も売り切りでやるわけじゃなくて、一緒にビジネスを作っていく。それで収益を立てていきましょうという考え方ですね。
今後は、今までには絶対に提案できなかったようなパートナーに対してもアプローチできるようになる。それによって新しいデータもたまるし、「データを使ってうちで何ができるか」という知見もたまるし、AIを使ったビジネスの加速は全然違ってくると考えています。
守安:いままでのDeNAは「インターネット」が強みで、「その中でも特に、モバイル向けの開発と、サービスの分析・運営と、サーバサイドのインフラをスケールさせるのが得意ですよ」と言っていた。それに、今度は新しい強みとして「AI」が加わり、「その中でも特にディープラーニングに強い」と言っていくイメージかな。
川崎:5年後に「インターネット」だけで自信を持てるかというと、いまのままでは勢いだけで獲得するような状況になるんじゃないかという予想があって。5年後10年後も自信を持って「うちと組んだ方がお得ですよ!」と言うために、この部分の強みが必要じゃないかと思っています。
ーー今のうちからAIのエキスパートになっておこうということですね。DeNAの内製事業でAIの活用を強化するにあたって、具体的にどういった領域がまず対象になりそうですか?
守安:たとえばゲームのQA(品質保証)の費用のかなりの部分はAIで代替できるんじゃないかと考えている。
川崎:こういう話をすると「カスタマーサポート(CS)とかQAの仕事がなくなるんじゃないか」と言われることがあるのですが、それぞれ次のレイヤーに進めると考えています。CSならば、できるだけお客さんを怒らせない状態にする部分に人間が注力する。それに加えてAIを使うことで、総合的な顧客満足度を上げることができるようになります。
ーーゲーム以外の事業はどうでしょう?
守安:ヘルスケアなんて分かりやすくて、慎重な議論は必要だけれども、DeNAはヘルスケア事業でかなりのデータを蓄積している。それを実際の事業にどう活かせるかが重要になってくる。
川崎:うちが得意なのは「こういう使い方に割りきってしまえば、識別率80%くらいでも役に立つよね」という感じに、ユーザの使い方を考えてバランスのとれたサービス設計ができること。でも、それは「何をやるにはどれくらい難しいか」という肌感を持ってないとできないことだし、そういうところをちゃんと社内に根付かせるのが中長期的に見たときに必要なことですね。
守安:医療用の画像診断もAIが適用できる領域。ただ、CTスキャンの画像だけ大量にあっても意味がなくて、ガンの正しい診断結果とのセットがないとAIの精度は上がらないし、価値もない。
川崎:そうなってくると、いかに質のいい、ビジネスに結びつくようなデータを大量に手に入れられるかがポイントになってくるんですよね。
ーーDeNAで強化するのはAI技術全般の活用であって、ディープラーニングに限定はされないですよね?
川崎:ディープラーニング以外のAIはやるなという話ではありません。ただ、うちで今後コアとなる競争力として育てたいと思っているのがディープラーニングで、そこに関連する技術は会社全体として育てていきたいという位置づけです。各現場でぽつぽつやるんじゃなくて、会社全体の柱としてきちんとやりたいと考えています。
守安:たとえば、日々のKPIを10%・20%上げましょうってなったときに、いままではデータアナリストが分析して、企画の人がそれを見ながら次の施策を考えてたんだけど、AIを用いたツールを活用することで、分析を生業にしている人以外も全員それができるようにしたい。
ーー最後に、DeNAでのAI技術活用でどんなことがやりたいか、一言お願いします。
川崎:自社の既存サービスのファインチューニングではなく、データとAI技術を用いることで新しい世界、新しい付加価値を作っていきたい。
守安:本質的にやりたいのは、お客さんから見て、いままでできなかったことができるようになること。AIを使ったサービスを「すごいな、これ便利だな!」と思ってもらいたい。
守安功
代表取締役社長兼CEO
1998年、東京大学大学院終了後、日本オラクル株式会社に入社。1999年11月、システムエンジニアとしてDeNAに入社。2004年に携帯オークションサイト「モバオク」、アフィリエイトネットワーク「ポケットアフィリエイト」、 2006年2月には、「モバゲータウン(現:Mobage)」を立ち上げ、同年6月、取締役に就任。2011年6月に代表取締役社長に就任。2013年4月より代表取締役社長兼CEO(現任)。
川崎修平
取締役
東京大学大学院博士課程在学中の2002年からDeNAにエンジニアとしてアルバイトで参画。 携帯オークションサイト「モバオク(2004年)」、「モバゲータウン(2006年・現Mobage)」等、DeNAを発展させてきた大きなサービスを、ひとりだけで設計・開発したトップエンジニア。取締役就任後の現在も、 DeNAの次代を担う新サービスの開発に奮闘している。
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