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DeNAで配信中のオリジナルタイトル『メギド72』。主人公ソロモンが72柱のメギド(悪魔)を従え、ハルマゲドン(世界破壊)の危機に立ち向かっていくスマートフォン向けRPGです。2017年12月にサービスを開始し、2022年12月に5周年を迎えました。
リリース時のキービジュアルだった号泣イラストがTwitterのアイコンをジャックするなど、今でこそゲーム内外で賑わいをみせる本作ですが、実はサービス終了の危機に幾度となく直面してきました。
では、崖っぷちな状況をどう打破してきたのか?復活劇の裏側には、背水の陣を敷いた2度の大型改修とプレイヤーが手繰り寄せた転機がありました。今回は、プレイヤーと歩んできた5年間について振り返ります。
「絶望を希望に変えるRPG」を謳う『メギド72』は、スマートフォン向けゲームではあまり体験できない、まるで据え置き型のような世界観と戦略性の高いゲーム性が特長のタイトルとして2017年にリリースしました。しかし、ストーリーや世界観などが評価された反面、UX面での体感の悪さなどから、1年目にしてプレイヤーが離れていく危機に直面しました。
いっときはサービス終了を囁かるほどだった状況を打破すべくおこなったことが、バトルの手ごたえと世界観はそのままにゲームの煩雑さを解消させた大型改修です。リリース時から応援してくれていたコアなプレイヤーが、潜在的プレイヤーに面白さを伝えてくれるといった応援もあり、その後は順調にプレイヤー数を伸ばすことができました。
その結果、2019年の日本ゲーム大賞を受賞するに至りました。スマートフォン向けゲームでは異例となる賞だったことから、新たな層への認知拡大へと繋がりました。
ところが、日の目を浴びるも間もなくして「運営3年目の壁」に直面します。スマートフォン向けゲームの寿命は諸説あるなかで、3年続くことが1つの指標と言われることがあります。本作も例外とはいかず、プレイヤーに飽きることなく遊んでもらいたいという運営側の気持ちが空回ってしまうような場面が出てきてしまいました。
この空気を変えるためにおこなったことが、作品のコンセプトに立ち帰った大型改修です。世界観やストーリー、キャラクターの個性を評価してくださっているプレイヤーの声に向き合い直し、『メギド72』を“心に残る物語作品”として完成させることに注力しました。
その1つがキャラクターの平等性を保つための仕様変更です。強いキャラクターを登場させることで、新鮮さや話題性をもたらすことは一般的な方法です。一方、全部のキャラクターを平等に扱うことは開発期から大切にしてきたコンセプトであり、ストーリーを展開していく上でも重要な要素です。そのため、強いキャラクターや新しいキャラクターの誕生を制限する判断をしました。裏を返すと新しいキャラクターに頼れないため、長期運営を目指す上で飽きられてしまわないか、一か八かの賭けでした。
その分、手持ちのキャラクターの強みがバトル場面との相性によって活かされる工夫や、多くのキャラクターにスポットライトがあたるようなストーリー作りなど、既存のキャラクターへスポットライトをあてることに徹底的に拘りました。
そして、ここでもコアプレイヤーの支えによって人気回復を果たします。キャラクターの個性やストーリー性など、『メギド72』の魅力をSNSで発信してくださるプレイヤーが増え、新しいプレイヤーをたくさん呼んできてくださりました。
『メギド72』のキャンペーンや施策は、しばしば「トンチキ」と評されることがあります。
運営によれば「決してトンチキを狙っているわけではない」「面白いね、やってみたいねというアイデアを大切にしている」だけとのことで、運営スタッフがファンの1人であるゆえ、細部まで拘るとどうしても「トンチキ」とよばれてしまうのだそうです。
「トンチキ」をプレイヤーがさまざまな解釈で楽しんでくださる事も多く、運営が想定した斜め上をいく面白がり方でイベントを満喫してくださっています。運営がまいた種から、いろんな花を咲かせてくれているというイメージでしょうか。
前述のTwitterのアイコンジャックも、想定以上の盛り上がりとなりました。これは、特設サイト内のキャンペーンに参加すると、5周年当日にキャンペーン参加者のTwitterアイコンが一斉に変わるという内容です。どんなアイコンになるかは秘密にしていたため、キャンペーン当日に突如として大量発生した号泣する主人公のアイコンにプレイヤーも驚いたそうです。
用意したアイコンにはタイトル名をあえて入れず「号泣5周年」とだけ入れたため、事情を知らずにTwitterを覗いた人からしてみると、何のことか分からないシュールな光景だったことでしょう。
しかし、プレイヤーのみなさんは、運営の悪ふざけとも見える企画に、何が起きているかわからない友人やフォロワーに向け「このゲームのおもしろさ」「今回、なぜアイコンが大量発生したか」などをプレゼンしてくださいました。トンチキを受け入れ、それを一緒に楽しむ活動により「感謝の大号泣キャンペーン」はさらなる盛り上がりをみせ、“号泣アイコン”がTwitterに大量発生!とメディアでも取り上げられるまでに至りました。
こうしたプレイヤーと運営の関係性は、プレイヤーが描いた作品を紹介し合う「ファンアート展」やゲームの楽しみ方をTwitterで投稿し合う「#メギドハジメドキ」などでも垣間見ることができます。プレイヤーの発信を通して、運営がゲームやキャラクターの新しい魅力に気づかされることもあります。ゲーム外においても、プレイヤー同士が魅力を共有しあう文化は、大きな特徴と言えます。
最後に、プロデューサーを務める菅野 太郎に、『メギド72』の今後についてを聞きました。
ゲーム運営を担う私たちが心がけているのは、正直でいることと成功事例に縛られないことです。改修が必要な背景や趣旨を伝えたり、開発現場が感じられるような連載をしたり、プレイデータの一部を公開するなど、オープンな運営を意識しています。
特に、長く楽しんでもらえるゲームを目指すためには、過去に成功した方法に拘らないことが重要だと考えています。1プレイヤーである自分たちが面白いと感じる新体験創出に、挑んでいくことで末長く楽しんでいただけることを目指しています。
最近では、プレイヤーから「72周年目指しているんですよね?」と聞かれるようになりました。タイトルの数字に拘る運営に対して、冗談交じりに言ってくださっているのだと思いますが、あながち冗談ではないと思っています。
『メギド72』がオリジナルIPとして幅広い世代に渡って親しんでもらったり、ゲームやイベントを通してできた思い出がプレイヤーの心に残ったりすることで、この先何十年も生き続けるのではないでしょうか。物語としての完成を迎える日まで、誠心誠意でゲーム運営に務め、また、72周年に向け、ゲーム内外での盛り上げを作りながら新しい体験を届け続けていきたいと思います。
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