loading
株式会社DeNA AI Link(本社:東京都渋谷区、代表取締役:住吉 政一郎、以下「DeNA AI Link」)は、キユーピー株式会社(本社:東京都渋谷区、代表取締役 社長執行役員:髙宮 満、以下「キユーピー」)に対し、Cognition AIが開発する自律型AIエージェント「Devin」を活用した、工場シミュレーションモデル開発の伴走支援を実施しました。

本取り組みでは、キユーピーのソフトウェアエンジニアが担ってきた株式会社シーメンス(Siemens)製の工場シミュレーションソフトウェア「Tecnomatix Plant Simulation」(以下 「Plant Simulation」) のモデル開発を「Devin」に委ね、属人化しやすい作業からの解放を目指しました。クラウドとローカルの双方で同じ「Devin」を一貫して活用できる強みを生かし、Plant Simulationにおける開発の専用言語「SimTalk」をAIが自律的に記述・検証できる土台を構築しました。
その結果、「Devin」が自律的に作成したシミュレーションモデルが想定どおりに動作することを確認できました。
製造業では、生産ラインや設備の設計・改善にあたり、稼働前に検証する「シミュレーション」が重要な役割を果たします。しかし、モデル構築には専用ソフトウェアと専門言語の高度な知識が求められ、対応できる人材が限られるため、業務が特定の担当者に集中し、属人化しやすいという課題がありました。
キユーピーでは、工場の生産ラインをシミュレーションで分析する専門チームが、Plant Simulationを高度に使いこなしています。当該チームは、これをAIによってさらに高度化・効率化し、スピード感のあるシミュレーションを実現することを目標としていました。その中で、この領域にはAI活用を阻む「3つの要素」がありました。ひとつは、Plant Simulation専用の言語「SimTalk」が広く普及した言語ではなく、生成AIの基盤である大規模言語モデル(LLM:Large Language Model)の学習が乏しいため、AIが正しく記述しにくいこと。ふたつ目は、マウスやキーボードによる人間の操作(Graphical User Interface:GUI)を前提としたローカル環境上のPlant Simulationでしか動作しないため、AIが生成したコードを実行して結果を検証しにくいこと。そして三つ目が、シミュレーションをチームで進めるため、生成AIを用いた解決手法をメンバー全員で活用し、さらに広く組織へ展開していく道筋が見えにくいことです。
DeNA AI Linkは、DeNAグループでの全社AI活用や複数社への『Devin』導入支援で培った知見を持つパートナーとして、伴走支援という形でこの検証に参画しました。
Plant Simulationのモデルは専用言語「SimTalk」で記述する必要があり、作成には高度な専門知識と多くの工数を要します。今回は「自然言語による指示からモデルを構築できる状態」を目標に、その実現可能性を検証しました。最大の課題は、GUI操作を前提としたローカル環境上のPlant Simulationでしか動作しないため、AIが生成したコードを自ら実行・検証し、修正するサイクルを自律的に回せないことでした。
DeNA AI Linkは、Plant Simulationを高度に使いこなすキユーピーのソフトウェアエンジニアの専門チームに伴走し、まずブラウザから使えるクラウドの「Devin」を起点に取り組みを立ち上げました。クラウドの「Devin」は、誰が使ってもノウハウが一か所に蓄積され、チーム全体で知見を共有しやすいという特徴があります。将来、現場のドメイン知識を持つ各工場の担当者が自然言語でモデルを構築する最終ゴールを見据えると、この扱いやすさを備えたクラウドの「Devin」が最適だと考えたためです。あわせて、AIが参照するルールや専門用語の辞書、作業手順などのドキュメントを継続的に整備し、「Devin」がつまずいた点を学習資産として蓄積することで、生成精度を高めていきました。
一方、Plant SimulationはGUI操作を前提としたローカル環境上でしか動作しないため、生成したコードの実行・修正にはローカル環境での作業が欠かせません。そこで、この実行・修正の部分だけをローカルで動作する「Devin CLI(Command Line Interface)」に切り出しました。CLIの活用にはキユーピーのエンジニアの関与が必要でしたが、それでも十分な効果が得られ、「Devin」がローカル環境で自らプログラムを実行し、エラーの発見から修正までを一気通貫で自走する仕組みを構築できました。これにより「AIが自ら結果を検証できない」という最大の壁を越えています。「Devin」がクラウドとCLIの双方に対応しているため、クラウドで立ち上げた取り組みを、ローカルでの自律開発に引き継ぐことができたことが、開発の効率を引き上げた要因となりました。 さらに、コードの誤りを自動検出する仕組みや作業ごとの手順(Playbook)を整備し、繰り返し再利用できる開発基盤として体系化しました。
これらの取り組みにより、「Devin」が自律的に作成した小規模なモデルが、動作確認を経て想定どおりに動作することを確認できました。開発初期は多数の不具合の修正を要していたモデル作成も、基盤の整備が進んだ最新の取り組みでは、わずか1回の作り直しで完了するまでに精度が向上しています。定量的にも、従来は手作業で8.5人日を要すると想定される1モデルあたりの開発工数を1.8人日で完了し、小規模モデルの開発工数を78.8%削減しました。整備したドキュメントや手順、自動検証の仕組みは、今後も繰り返し活用できる資産として蓄積されています。今回の成果は、AIの価値を最大化する鍵が、コードを書く技術そのもの以上に対象業務を深く理解する「ドメイン知識」にあり、その知見を持つ担当者ほど成果に直結できることを示しています。
備考:上記は現時点における小規模な1モデルでの実績です。
今後は、対応できるシミュレーションのバリエーションと規模を拡大していきます。将来的には、現場のドメイン知識を持つ各工場の担当者が、自然言語でモデルを構築できる「工場シミュレーションの民主化」を目指し、属人化の解消と、担当者がより付加価値の高い業務に注力できる体制づくりに貢献します。
DeNA AI Linkは引き続き伴走支援者としてキユーピーのAI駆動開発の定着を支援するとともに、本取り組みの知見を生かし、同様の課題を抱える製造業のお客様へ、クラウドとローカルの双方で活用できる「Devin」を軸としたAI活用ソリューションを導入設計から現場への定着まで一貫して提供していきます。
生産ラインのシミュレーションにおける私たちの本来の役割は、モデル作成やコードの記述そのものではなく、そこから得られる知見をもとに生産現場を改善し、新たな価値を最大化することにあります。しかし、これまではシミュレーションソフトの独自言語や高度な専門性が壁となり、モデル作成に多くの工数が割かれ、本来の業務に注力できないことが長年の課題でした。今回、DeNA AI Link様の伴走支援のもと、自律型AIエージェント『Devin』の可能性検証(PoC)を実施しました。その結果、小規模モデルながら78.8%という大幅な工数削減と自動生成の可能性を確認でき、非常に大きな手応えを感じています。AIに実装作業を委ねることで、人がより『価値創造業務』へとシフトできるという確信を得ることができました。今後は、この成果を原動力として実業務への適用に向けた本格的な検証と環境構築を加速させ、現場の価値最大化に向けた挑戦をDeNA AI Link様と共に進めてまいります。
キユーピー株式会社 生産本部 生産技術部
【本件に関するお問い合わせ】
株式会社DeNA AI Link お問い合わせフォーム:https://dena-ailink.com/contact
株式会社DeNA AI Link(本社:東京都渋谷区、代表取締役:住吉 政一郎)は、株式会社ディー・エヌ・エーの子会社として、AIを用いた日本社会の生産性向上をサポートするため設立されました。AIコンサルティングやソリューション、プロダクトの提供を中心に、企業のAI活用を包括的に支援します。
Devinに関する主なサービス:
導入支援:企業のAIツール・エージェント導入をエンドツーエンドで支援
ガバナンス構築支援:セキュリティ・運用ルールの整備から社内展開まで
ソリューション提供:コードマイグレーション、データ分析など特定課題に対するAIソリューション
ハンズオンセミナー:実務に即したAI活用トレーニングの実施
キユーピー株式会社は、1919年(大正8年)に創業した食品メーカーです。「マヨネーズ」「ドレッシング」をはじめとするソース・調味料類を中心に、加工食品、食品添加物、ファインケミカル(医薬・化学)製品などの製造・販売を幅広く手がけ、健康で豊かな食生活に貢献しています。 本社:東京都渋谷区渋谷1-4-13 URL:https://www.kewpie.com/
Cognition AIは、ピーター・ティール氏のファウンダーズ・ファンド(Founders Fund)等から支援を受ける、世界初の自律型AIソフトウェアエンジニア「Devin」の開発元です。競技プログラミングの世界王者らを含む一流のAIエンジニアによって設立され、非常に短期間で巨額の評価額に達するなど、驚異的な成長を遂げています。同社は「Devin」自体の開発プロセスにも自社製品を投入することで、極めて高い生産性とプロダクトの進化スピードを実現。AIによってソフトウェア開発の全工程を自律的に完結させる次世代のエージェント・プラットフォームを提供しています。 https://cognition.ai/